ワールドカップのクロアチア代表選手の名前が似ている?
サッカーのワールドカップで見事な粘り強さを見せ、世界中のファンを魅了したクロアチア代表。彼らの試合を見ていると、ある面白い共通点に気づくはずです。
モドリッチ選手、コバチッチ選手、ペリシッチ選手など、とにかく登録名の最後に「ッチ」や「ッジ」が付く選手が非常に多いのです。実況アナウンサーが選手の名前を呼ぶたびに、同じような響きが何度も繰り返されるため、まるでチーム全員が親戚であるかのような不思議な感覚を覚えることもあります。
これにはクロアチア、ひいてはバルカン半島周辺の歴史や言葉の仕組みに隠された、とても興味深い理由があります。

「ッチ」は「~の子」という意味
この「ッチ」という言葉の正体は、クロアチアの言葉で「〜の子」や「〜の息子」、あるいは「小さな〜」という意味を持つ言葉です。つまり、英語圏でいうところの「ジョンソン」の「ソン(息子)」や、「マクドナルド」の「マク(息子)」と全く同じ役割を果たしています。
昔の人々が、お互いを区別するために「〇〇さんの家の息子」と呼び合った名残が、そのまま現代の名字として定着したのです。
たとえば、クロアチアでとても多いペトロヴィッチという名字を見てみましょう。これは「ペタル」という男性の名前に、息子を意味する「ッチ」が組み合わさってできています。
つまり、言葉をそのまま直訳すると「ペタルの息子」という意味になります。サッカー界のレジェンドであるモドリッチ選手の場合も、昔の先祖に「モドル」という名前の人がいたり、あるいはそれに類する言葉に関連した家系だったりしたことから、「モドルの子」という意味の名字が生まれたと考えられています。

このように、父親や先祖の名前をベースにして「〜の息子」と呼ぶ文化は世界中に存在しますが、クロアチアをはじめとするスラブ系の地域では、それが「ッチ」という特徴的な響きになって現代まで色濃く残っています。
そのため、クロアチア代表のメンバー表を見ると、まるでスタジアムの中に「〜の息子たち」が大集合しているかのように見えるのです。
「ッチ」には、親しみやかわいらしさを込めた意味も
さらに面白いのは、この「ッチ」という響きが、ただの「息子」という意味だけでなく、親しみやかわいらしさを込めた表現でもあるという点です。
日本語でいうところの「〇〇ちゃん」や「〇〇くん」に近い、愛着を込めて小さく呼ぶ感覚が含まれているため、現地の言葉のニュアンスとしては、とても温かみのある響きを持っています。
ピッチの上で激しくタフに戦うクロアチア代表の選手たちの名字に、実はそんなかわいらしくてアットホームな意味が隠されていると思うと、なんだか少し親近感が湧いてくるのではないでしょうか。
国際舞台で躍進を続けたクロアチア代表。今大会では決勝トーナメント1回戦で惜しくも敗退となってしまいましたが、今後彼らの試合を観戦するときは、ぜひ実況アナウンサーが叫ぶ選手たちの名前に耳を傾けてみてください。
ピッチを縦横無尽に駆け巡る「ッチ」の付く選手たちの背景には、何世代にもわたって親から子へと受け継がれてきた家族の歴史と、彼らのルーツへの誇りがしっかりと刻まれているのです。
この記事を書いたのは
国際政治学者として米中対立やグローバルサウスの研究に取り組む。大学で教壇に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。
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