【夏休み】子どもの栄養不足が深刻!「太る子」「痩せる子」の二極化現象や、学力低下が起こる理由。解決のカギは1日3回のたんぱく質と、発酵食品&乾物の活用《専門家監修》

夏になると、食欲が落ちたり、そうめんやパンなど手軽な食事が増えたりと、子どもの栄養バランスが崩れやすくなります。「なんとなくだるい」「集中力が続かない」といった不調や、体型の変化が気になることもあるのではないでしょうか。

じつはこうした不調の背景には、「見えない栄養不足」が隠れている可能性があります。そこで今回は、予防医療コンサルタントの細川モモさんに、夏の子どもの体に起きている変化や、保護者が知っておきたい栄養のポイントをくわしく伺いました。

夏休み明けに体型が変わる子どもたち――「肥満」と「やせ」の二極化

——夏になると食欲が落ちたり、給食がなくなったりと、子どもたちの食生活が変化しやすくなります。体にはどのような影響があると考えられているのでしょうか。

細川モモさん(以下、細川さん)近年、夏休み明けの子どもたちを見ると、体重が増える子もいれば、逆にやせてしまう子もいて、体型の変化が大きくなっていると感じます。

もともと子どもの成長には季節的な特徴があり、体重は秋冬に増えやすく、身長は夏に伸びやすい傾向があります。そのため、本来、夏は体重が大きく変化する時期ではありません。しかし近年は、夏休みを境に体重の増減が大きくなる子どもが増えているのです。

——なぜ、そのような変化が起きているのでしょうか。

細川さん:大きな理由は、子どもたちを取り巻く環境の変化です。近年は6月後半から秋ごろまで危険な暑さが続き、以前のように外で思いきり遊ぶことがむずかしくなりました。プールの中止や外遊びの制限も増え、全体的に運動量が減ったことで、体重が増えやすくなる子どももいます。

一方で、夏休み中は給食がなくなるため、家庭によっては食事内容や栄養バランスが偏りやすくなります。さらに暑さによって食欲が落ち、成長に必要な栄養を十分にとれない子どもも少なくありません。

こうした運動不足や栄養不足によって、体型の二極化が起こりやすくなっているのです。

夏休み中は給食がなくなることで、エネルギーをはじめ、
カルシウム、鉄などの摂取量が低下する傾向に。(提供:一般社団法人ラブテリ)

お腹いっぱいでも栄養不足? 「エンプティカロリー」に注意

——夏休みに給食がなくなる影響も大きいのですね。

細川さん:そうですね。夏休みは給食がなくなるため、1日3食すべてを家庭で用意しなければなりません。食費の負担が増えるうえ、近年は物価高の影響もあり、毎日の献立に頭を悩ませているご家庭も多いのではないでしょうか。

そのため、比較的手頃で調理もしやすい、うどんやそうめん、パスタなどの麺類が食卓にならぶ機会は増えがちです。しかし、主な原材料は小麦と塩なので、それだけでは子どもの成長に必要な栄養素を十分に補うことはできません。本来は、肉や魚などのたんぱく質、そして野菜を組み合わせて、栄養バランスを整えることが大切です。

——夏は、どうしてもお菓子やアイス、ジュースを口にする機会も増えてしまいますよね。

細川さん:そうですね。ただ、お菓子やアイス、ジュースなどは「エンプティカロリー」と呼ばれる食品で、砂糖や油脂によってカロリーはとれますが、体の成長に必要なたんぱく質やビタミン、ミネラルなどはほとんど含まれていません。

そのため、お腹は満たされていても、体に必要な栄養素は不足している状態になりやすいのです。夏休みは、こうした食品や飲み物を口にする機会が増えるため、とりすぎには気をつけたいですね。

子どもは大人の「約2倍のエネルギー」「約2~3倍の鉄やカルシウム」が必要

——子どもは実際にどのくらいの栄養を必要としているのでしょうか?

細川さん:体重1kgあたりで比較すると、子どもは大人の約2倍のエネルギーが必要です。さらに、たんぱく質は大人の約1.5倍、鉄やカルシウムは2〜3倍も必要になります。

体が小さいと、「食べる量も少ないから、それほど栄養はいらない」と思われがちですが、実際は逆です。子どもは体を維持するだけでなく、身長や筋肉、骨、脳などを成長させるために、多くの栄養素を必要としています。そのため、栄養不足になると、成長や体調にさまざまな影響があらわれやすくなるのです。

夏休み明けの不調は“鉄不足”が原因? 学力や集中力にも影響

——栄養不足が子どもの体に与える影響で、特に気をつけたいことはありますか?

細川さん:体重の増減のような目に見える変化だけでなく、「体の中で起きている栄養不足」にもぜひ注意してほしいですね。その代表的なもののひとつが鉄不足です。鉄は、全身に酸素を運ぶヘモグロビンの材料となる栄養素です。そのため不足すると、脳に十分な酸素が届きにくくなり、集中力に影響が出ることがあります。

また、鉄はやる気や意欲にかかわる「ドーパミン」や、心の安定にかかわる「セロトニン」といった脳内物質の材料でもあります。実際の研究でも、鉄不足のある子どもは学力や認知機能に影響が出やすいことが報告されています。

——見た目では分かりにくいだけに、栄養不足を見逃してしまいそうですね。保護者が気づけるサインはあるのでしょうか。

細川さん:たとえば、「だるい」「疲れやすい」「イライラする」「朝なかなか起きられない」といったサインがあらわれることがあります。貧血というと立ちくらみをイメージする方が多いのですが、実際にはそのずっと前から不調は始まっています。

男女ともに鉄分不足が課題。成長期だからこそ意識してとりたい栄養素です。
(提供:一般社団法人ラブテリ)

——こうした鉄不足は、夏に起こりやすいのでしょうか?

細川さん:はい。夏は汗とともに鉄が失われやすいうえに、暑さで食欲が落ちることで、鉄を多く含む赤身の肉や魚を食べる量も減ってしまいます。

失われる量は増えるのに、補給する量は減る…。そのため夏は鉄不足が進みやすい季節なんです。夏休み中に鉄不足が進むと、夏休み明けに「朝起きられない」「なんとなく元気がない」などの症状があらわれることも少なくありません。

夏の栄養不足を防ぐコツ「頑張りすぎない食材選び」

——食費を大きく増やさなくても、栄養を補う方法はあるのでしょうか?

細川さん発酵食品乾物は、栄養価が高く、日持ちもするので、いそがしい夏休みの心強い味方になります。
たとえば、サラダを生の大根から、切り干し大根に変えるだけで、鉄は約1.5倍カルシウムは約8〜9倍にも増えます。

また、料理が苦手な人や、できるだけ手間を省きたい人は、サバ缶や鮭フレーク、冷凍むき身あさりなどもおすすめです。特にあさりは鉄分が豊富で、うどんやチャーハン、みそ汁に加えるだけで手軽に栄養価を高められます。

いつもの食材を少し置き換えるだけで、毎日の鉄分摂取量をアップ。(提供:一般社団法人ラブテリ)

たんぱく質は1日3回 「手のひら一盛り」を目安に

——成長期の子どもに欠かせないたんぱく質は、どのくらいを目安にとるとよいのでしょうか?

細川さん:たんぱく質は、まず1日3食、それぞれに片手の手のひら一盛り分を取り入れることを意識してみてください。魚や肉、豆腐などの大豆製品をローテーションしていけば、必要な栄養素を無理なくとることができます。
また、汗をかきやすい夏は鉄の貯蔵量も減りやすいため、肉や魚をできるだけ減らさないことも大切です。

——特別なものを用意しなくても、身近な食材の選び方次第で栄養価は大きく変わるのですね!

細川さん:そうなんです。栄養不足を防ぐために、高価な食材や特別なメニューを毎日用意する必要はありません。手軽に使える食材を上手に取り入れたりするだけで大丈夫。まずは、できることから無理なく続けていただければと思います。

水分補給のつもりが脱水に? 知っておきたい「ペットボトル症候群」

——夏は栄養だけでなく、水分補給も欠かせません。スポーツドリンクを飲む機会も増えますが、気をつけたいことはありますか?

細川さん:スポーツドリンクを一時的に飲むだけで問題になるわけではありません。ただ、糖分を多く含む飲料を何本も飲み続けると、血糖値が高い状態が続くことがあります。

——血糖値が高くなると、どのような影響があるのでしょうか?

細川さん:余分な糖を尿と一緒に排出しようとして、尿量が増えます。このとき、水分も一緒に失われるため、のどが渇いて、さらに甘いものを飲む、という悪循環に陥ることがあります。

これが重症化すると、「ペットボトル症候群(ソフトドリンクケトーシス)」と呼ばれる状態になり、脱水や意識障害などを起こすこともあります。そのため、スポーツドリンクは熱中症対策や長時間の運動など、本当に必要な場面で上手に活用し、それ以外の水分補給は、水や麦茶を基本にすることが大切です。

尿の回数と色をチェック! 家庭でできる脱水サインの見つけ方

——水分をとっているはずが、脱水につながってしまうこともあるのですね…。

細川さん:そうなんです。夏は「どれくらい飲んだか」だけでなく、「体からどう出ているか」も大切なチェックポイントです。

ご家庭では、ぜひお子さんの尿の回数や色を観察してみてください。いつもより尿の回数が極端に増えたり、のどの渇きが強く、何度も水分を欲しがったりする場合は、水分や糖分のとり方を見直すサインかもしれません。とくに、甘い飲み物を何本も飲む習慣がある場合は注意が必要です。

また、尿の色が濃い黄色なら水分不足のサインなので、夏場ならば脱水の可能性があり、水分補給が必要です。

子どもが自分で気づくことができるよう、ご家庭のトイレに尿の色の目安表を貼って、親子で体からのサインに目を向けてみるのもおすすめですね。

子どもの元気の土台は毎日の食事から

——最後に、夏の食事や体調が気になる保護者の方へメッセージをお願いします。

細川さん:朝起きられない、だるそう、集中できない――そんなお子さんの様子を見ると、「もっと頑張ってほしい」「怠けているのかな」と感じてしまうこともあるかもしれません。

でも、そんなときこそ栄養の状態にも目を向けてみてほしいんです。子どもたちは今、人生で一度しかない成長期の真っ最中。体が大きくなるだけでなく、脳も心も日々成長しています。そして、その土台となるのが毎日の食事です。

夏休みは生活リズムや食生活が変わりやすい時期ですが、そのぶんお子さんの体と向き合うよい機会でもあります。この夏が、お子さんの「元気の土台」を見つめ直すきっかけになればうれしいですね。

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お話を伺ったのは

細川モモさん 一般社団法人ラブテリ代表理事

一般社団法人ラブテリ代表理事。予防医療・栄養コンサルタント。10代で経験した両親のがん闘病をきっかけに予防医学に関心を持ち渡米。栄養学を学び、日米の専門家による母子健康推進プロジェクト「ラブテリ トーキョー&ニューヨーク」を立ち上げる。女子栄養大学や聖路加国際大学などとの共同研究や学会発表を多数実施し、女性と子どもの健康づくりに取り組む。著書に『成功する子は食べ物が9割』(主婦の友社)など。二児の母。

この記事を書いたのは

牧野未衣菜 ライター

子育てや教育分野を中心に取材・執筆。また、認定NPO法人で、不登校やさまざまな困難を抱える子どもたちと関わっています。2児の母としての子育ての実感も重ねながら、日々の悩みや、子育てのリアルな声を丁寧にすくい上げ、やさしく伝える記事づくりを心がけています。

取材・文/牧野 未衣菜

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