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フランスでは小学校・幼稚園で「子どものデバイス利用」にルールが追加
ある冬の日、家に帰ってきた子どもたちから「ママ、これにサインして」と渡された手紙を見て、私は驚きました。
そこには「大至急、お子さんがスマートフォンやゲームの画面を見る時間をコントロールしてください」と書かれていたのです。
どうやら、クラスの様子を見ていると、低学年の子どもの間でも、あまりに過剰で危険なスクリーンの利用が目立つとのこと。これは子どもの健やかな成長に関わる、命と同じくらい大切な「健康上の問題」なのだ、と強い語気で訴えられています。

また、以下のような、年齢別に家庭が守るべきルールも設けられていました。
・3歳未満:禁止
デバイスの利用は子どもの発達を害する恐れがあります。この時期の子どもには、対話や周囲からの関わり合いが必要です。親自身のデバイス利用も、子どもとの関係に悪影響を及ぼさないよう注意してください。
・3歳〜6歳:非推奨であり、例外的な利用に留める
利用時は必ず大人が付き添い、教育的なコンテンツのみを見せてください。子どもだけでスマートフォンやタブレットを見せるのは厳禁です。
・6歳〜9歳:制限し、管理下に置く
明確なルールを設けた上で、利用時は常に大人が同席してください。自分専用のデバイスを持たせることや、ひとりでインターネットにアクセスすることは禁止です。
・9歳〜12歳:適度に、かつ管理下に置く
大人の積極的な監視のもとでやらせてください。ただし、SNSや生成AIの利用は完全に「禁止」です。子どもに専用の端末を買い与えることは避けてください。
背景にあるのは、2026年1月に可決された、15歳未満のSNS利用を原則として「完全禁止」にする法案です。
この動きは、フランスだけではありません。 2024年に世界に先駆けて「16歳未満禁止」を決めたオーストラリアを筆頭に、2026年に入ってからはスペイン、ブラジル、インドネシア、マレーシア、さらにはトルコやUAEでも可決・施行されています。
では、日本ではどうでしょうか。
日本では「GIGAスクール構想」で小学校でもタブレット
日本では、子どもに対するSNSやデバイスの利用を禁止する法律はありません(2026年6月現在)。むしろ国「GIGAスクール構想」のもと、小学校の段階からひとりずつタブレット端末が支給され、宿題も授業もデジタルで行うのがスタンダードになりつつあります。
もちろん、日本にも子どものネット利用に関する「青少年インターネット環境整備法」は存在します。ただ、携帯電話会社に対してフィルタリング機能の提供を義務付けたり、保護者が利用時間を適切に管理する「ペアレンタルコントロール」を推奨したりと、「安全に使いこなせる環境を整えましょう」というレベルです。

国や学校が家庭の領域まで踏みこんで、スクリーンタイムを制限するフランス。幼い頃からデジタルに慣れ親しみ、教育に活かしていこうとする日本。
この差はどこから生まれてくるのでしょうか。
「公園にSwitchを持って行けない」治安の差
これはあくまで私の考えですが、ひとつは日本とフランスの「治安の差」だと思います。
日本にいた頃、当時小学2年生だった長男は、友だちの家や公園にSwitchやタブレットを持って行き、友だちとゲームをしていました。「公民館にWi-Fiがあるから」と、集合している子たちもいました。
でも、フランスで同じことをやろうとすると、そうはいかないのです。
そもそも、11歳以下の子どもだけで公園に行くことは、治安の面であまり推奨されていません。高学年になって、子どもだけで公園に行ったとしても、ゲームを持っていたらすぐに盗まれてしまいます。

ちなみに、大人の付き添いなしで入れる公民館は、私の住んでるエリアでは聞いたことがありません。もしあったとしても、危ない人がいそうだから、行かせないと思います。
ゲームやタブレットを持って行き来ができない、治安の悪さ。これはデバイスがこの国で広がらない、ひとつの理由なんじゃないでしょうか。
「子どもにはスポーツ、自然、家族の時間が必要」教育観の差
二つ目は、フランスならではの「子どもはこうあるべき」という、保守的な価値観です。
先日、とても教育熱心なフランス人のママ友と話していたとき、彼女がこんな不満を漏らしていました。
「うちの子の日本人の友だちが、すごくゲームをやっているの。その影響を受けて、うちの子までゲームをやりたいって言い出して、本当に嫌だわ」
彼女だけではなく、フランス人と話していると「子どもはスポーツをしたり、自然に触れたり、家族や親戚と会ったりするべきだ」という、「子育ての正解」があるように思います。実際に、それらのどれかを子どもがやったと伝えると、とても喜ばれることが多いです(笑)。
できなかったときに悪いママになった気がするので、この教育観は、個人的にはあまり好きではありません。日本で楽しそうにゲームをする子どもたちを見ていたので、「それだけが正解じゃないよ」と私は思っています。

「デジタルに頼らず、リアルな体験を尊ぶべきだ」という、伝統的で厳格な子育て観が、この差を生んでいる気がします。
その「正解」は誰にとって?

2026年1月、国を挙げて「15歳未満のSNS禁止」へと大きく舵を切ったフランス。日本とは真逆の動きを見せるその背景を掘り下げてみると、そこには両国の「治安」と「教育観」の決定的な差がありました。
どちらのやり方が正しい、間違っているということではありません。育てる環境も違えば、子どもの個性だってそれぞれです。理想の国なんてないし、世界共通の正解なんてどこにもない。
国や周りが決めたことを妄信するのではなく、目の前の子どもにとっての正解を選んでいければと思います。
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この記事を書いたのは
三菱UFJ銀行の法人営業、ユーザベースのセールス&マーケティングを経て独立。ビジネスやマネーの取材記事から、恋愛小説まで幅広く執筆。2025年よりフランスに拠点を移し、フランス企業の日本進出支援(ローカライズ)やフィクションの翻訳にも携わる。3児の母。
X:@yel_ranunclus
Instagram:@ayabemato
<文/綾部まと>