子どもの絵に「何を描いたの?」「上手だね」はNG? 子どもの表現意欲が変わる親の声かけを保育士が解説

子どもの絵に、つい「何を描いたの?」と聞いてしまうことはありませんか。実は、この言葉自体が悪いわけではありませんが、子どもの年齢や様子、タイミングによっては、思いがけない受け取られ方をすることがあります。保育士資格を持つ筆者が、子どもの表現意欲を守る声かけを紹介します。

小さな子どもにとって、絵は「何かを描くこと」とは限らない

大人は絵を見ると、つい「これは何の絵だろう」と意味を探します。何を描いたのか知りたい、子どもと会話をしたい、上手に描けたところを見つけて褒めたい。そんな気持ちから出てくる言葉でしょう。ただ、特に小さな子どものお絵描きは、最初から何かを描こうとして始まるとは限りません。

クレヨンを動かしたら線が出てきた。
腕を大きく動かしたら丸い形になった。
赤の上に青を重ねたら色が変わった。
強く描いたら濃くなり、弱く描いたら薄くなった。

子どもは、こうした手の動きと線の変化を楽しみながら、描くことそのものを味わっています。つまり、大人にとっては「完成した作品」でも、子どもにとっては、手を動かした軌跡や色が変化していく過程そのものが遊びなのです。

子どもの描画は、一般に、線や点そのものを楽しむ「なぐり描き」から、描いたものに意味を見いだす時期へと移っていきます。
初めから何かを描こうとするのではなく、描き終えた後で「これは電車」「やっぱり恐竜」と意味づけることもあります。昨日と今日で絵の名前が変わっても、不自然なことではありません。

そんなときに「何を描いたの?」と聞かれても、子どもには答えがないことがあります。「これはお花?」「お顔かな?」と意味を求められることが続くと、自由に線や色を楽しむよりも、「何か分かるものを描かなければ」と意識する場合もあります。

「何を描いたの?」がうれしい子もいる

一方で、自分の描いたものについて話したい子もいます。

「これはママで、こっちは私」
「恐竜が火を吹いているところ!」
「昨日行った公園を描いたの」

このように、子ども自身が何かを表現しようとして描いている場合、「何を描いたの?」と興味を持ってもらうことが、うれしい経験になることもあります。大切なのは、目の前の子どもが何を楽しんでいるのかを見ることです。

描きながらたくさん話している子、完成した絵を得意そうに見せてきた子には、「何を描いたか教えてくれる?」と聞くのもいいでしょう。

反対に、黙々と手を動かしているときや、色や線そのものを楽しんでいるように見えるときは、無理に意味を聞き出さなくてもよいのです。

保育の現場でも、同じ絵への反応は子どもによって違う

保育の現場でも、絵を見せに来た子への反応は一人ひとり異なります。「見て!」と言ったまま、満足してすぐ遊びに戻る子もいれば、登場人物や出来事を次々と話し始める子もいます。黙って差し出して、大人の表情をじっと見る子もいます。

そんなとき、すぐに絵の正体を当てようとするより、「見せに来てくれたんだね」「この色を選んだんだね」と、まず子どもの行動や目の前にあるものを受け止めると、その子なりの言葉が後から出てくることがあります。

逆に、説明が始まったら、途中で大人の解釈を挟まずに聞くことも大切です。子どもが求めているのは、いつも絵の評価や質問とは限りません。「自分が大切に作ったものを、一緒に見てほしい」という気持ちの場合もあるからです。

まずは、見えたことをそのまま言葉にする

なんと声をかけたらよいか迷ったときは、絵を評価したり、意味を決めたりせず、見えたことをそのまま伝えてみましょう

  • 「赤をたくさん使ったんだね」
  • 「ここは線がぐるぐるしているね」
  • 「紙いっぱいに描いたね」
  • 「さっきより色が増えたね」
  • 「長い線がここまで続いているね」

このような声かけには、正解も不正解もありません。子どもにとっても、「これは何?」と答えを求められるより、自分がしたことをそのまま受け止めてもらいやすくなります。

ポイントは、実況中継をするように、事実を言葉にすることです。ただし、子どもが集中しているときには、声をかけずにそっと見守ることも立派な関わりです。

「上手だね」よりも、取り組んだ過程に目を向けて

「上手だね」「すごいね」は要注意です。褒めることが悪いわけではありませんが、常に評価の言葉だけが続くと、子どもが「上手な絵を描かなければ」「褒めてもらえるものを作らなければ」と感じることもあります。

それよりも、「いろいろな色を試したんだね」「何度も描き直していたね」と、子どもの選択や工夫、取り組んだ過程に目を向けてみてください。評価を急がず、「あなたがどう描いたかを見ていたよ」と伝えることが、自分なりの表現を続ける力につながります。

未就学児を対象にした研究では、使う材料を自分で選んだ子どものコラージュは、大人に材料を決められた子どもの作品よりも創造性が高く評価されました。声かけだけでなく、色や画材を子ども自身が選べるようにすることも、自由な表現を支える関わりの一つです。

また、描いた絵を飾るのも、「あなたが作ったものを大切にしているよ」と伝える方法の一つです。ただし、大人が勝手に決めるのではなく、「飾ってもいい?」「どこに飾りたい?」と本人に聞いてみましょう。飾らずに取っておきたい、誰にも見せたくないという気持ちも、その子の大切な選択です。

気持ちを聞きたいときは答えを限定しない聞き方に

絵についてもう少し話したそうな様子があるなら、答えを限定しない聞き方がおすすめです

  • 「この絵のお話、聞かせてくれる?」
  • 「どんなところが気に入っている?」
  • 「描いていて楽しかったところはどこ?」
  • 「この色を選んだんだね」
  • 「ここはどうやって描いたの?」

「これは何?」と聞くよりも、子どもが話したい部分から自由に話せます。ただし、子どもが「分からない」「言いたくない」と答えた場合は、それ以上聞き出そうとしなくても大丈夫です。

子どもの表現は、必ずしも言葉で説明できるものばかりではありません。なんとなく描きたかった、手を動かしたらこうなった、理由はないけれどこの色にしたかった。そうした表現も十分に価値があります。

大人が絵の意味を決めない

注意したいのは、大人が先回りして絵の意味を決めてしまうことです。たとえば、子どもの描いた丸を見て、

「かわいいお顔だね」
「これは太陽でしょ?」
「この青いのは海かな?」

と決めつけると、子どもが別のものを描いたつもりだった場合、「違う」と否定しなければならなくなります。また、そもそも何かを描いたわけではなかった場合にも、大人の答えに合わせるようになることがあります。

予想したくなったときは、「これは太陽だね?」と断定するより、「私は太陽みたいにも見えたけれど、どうかな?」と、あくまで大人の見え方として伝えるのがおすすめです。

子どもが「違うよ」と言ったら、「そうなんだ」といったん受け止めます。子どもが続きを話したそうなら、「どんな絵なのか教えてくれる?」と尋ねれば十分です。子どもの表現の主導権は、描いた本人にあります

声かけが「また描きたい」につながる

「何を描いたの?」は、必ずしも避けるべき言葉ではありません。子どもの様子を見ながら、「見せてくれてありがとう」「この色を選んだんだね」など、評価や決めつけをしない言葉も取り入れてみてください。

「あなたの表現に興味があるよ」という気持ちが伝わることが、子どもの「また描きたい」という意欲につながります。

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この記事を書いたのは

酒井千佳 フリーキャスター、気象予報士、保育士

京都大学 工学部建築学科卒業。北陸放送アナウンサー、テレビ大阪アナウンサーを経て2012年よりフリーキャスターに。NHK「おはよう日本」、フジテレビ「Live news イット!」、読売テレビ「ミヤネ屋」などで気象キャスターを務める。現在は株式会社トウキト代表として陶芸の普及に努めているほか、2歳からの空の教室「そらり」を主宰、子どもの防災教育に携わっている。

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