習い事をやめるのが「もったいない」と感じる理由
子どもの「やめたい」を聞いた瞬間、頭に浮かぶのは月謝や道具代ではないでしょうか。まずは、その気持ちの正体を整理してみましょう。
払ったお金は戻ってこない
判断を重くしている一番の原因は、すでに払ってしまったお金です。入会金も道具代も、ここまでの月謝も、続けたところで戻ってはきません。取り戻せない費用のことを「サンクコスト」と呼びます。
たとえばピアノを習うために電子ピアノを10万円で買ったとして、やめても続けても、その10万円は返ってきませんよね。
それでも惜しく感じるのは、送り迎えに使った時間や、上達を願ってきた気持ちも混ざっているからです。だからこそ判断が重くなります。
まずは「戻らないお金」と「これから先」を、いったん切り離して考えてみましょう。
子どもは損得で考えていない
一方で、子どもは費用の話をしているわけではありません。「やめたい」の裏にある理由は、お金とはまったく別のところにあります。よくあるのは次のようなものです。
- ・難しくなってきてつらい
- ・仲のいい友だちが先にやめてしまった
- ・遊ぶ時間や宿題の時間が足りない
- ・単純に飽きてきた
理由によって、取るべき対応はまったく変わります。続けるかやめるかを決める前に、まず理由を聞くところから始めましょう。
習い事にかかるお金
判断材料として、いくらかかっているのかを正確に知っておきましょう。意外と見落としがちなのが、月謝以外のお金です。
月謝以外にかかる費用

習い事の費用は、月謝だけではありません。
種類にもよりますが、月謝は月5,000〜15,000円が目安。これに入会金が5,000〜10,000円、道具や教材費が5,000〜30,000円ほど加わります。
さらに、ユニフォーム代や発表会・大会の参加費が年1〜2回、1回5,000〜30,000円ほど。教室が遠ければ交通費も月3,000円ほど乗ってきます。
年に1回しか出ていかないお金ほど、家計簿から抜け落ちがちです。月謝だけで見ていると、実際の負担を1〜2割ほど少なく見積もることになりますよ。
1年〜6年で見た総額

月謝を年単位・6年単位に引き伸ばすと、見え方が変わります。
月5,000円なら1年で6万円、3年で18万円、小学校6年間で36万円。月1万円なら1年で12万円、3年で36万円、6年で72万円です。
月15,000円なら、6年間で108万円です。教育資金として貯めるなら、そこそこの金額ですよね。
実際の平均も見てみましょう。文部科学省の調査によると、公立小学校に通う子ども1人あたりの学校外活動費は年間で約25万6,000円です。
塾や家庭教師などを除いた、習い事にあたる部分は年間で約14万4,000円。月にならすと約1万2,000円になります。
惰性で続けると、家計と時間の両方が固定費になってしまいます。ただし、費用が高いことそのものはやめる理由になりません。金額はあくまで、判断するための材料です。
続ける・やめるの判断基準
数字がそろったら、いよいよ判断です。軸をひとつ決めておくと、感情に振り回されずにすみますよ。
判断はこれから先で決める

判断の軸はひとつだけ。「これから払う費用と時間に、見合う価値があるか」を見ます。すでに払ったお金はどちらを選んでも戻りません。判断材料に入れると、続けるほうへ不必要に傾いてしまいます。
見るポイントは次の3つです。
- ・これから1年でいくら払うことになるか
- ・子ども本人が楽しめているか
- ・送り迎えの時間が家族の負担になっていないか
これから先の1年を想像して、それでも続けたいと思えるなら、答えはもう出ています。
続けたほうがいいサイン
やめたい理由が期間限定のものなら、少し様子を見る価値があります。たとえば、次のような場合です。
- ・進級して急に難しくなり、一時的につまずいている
- ・発表会や試合の前で、緊張やプレッシャーが強い
- ・特定の友だちとの関係が原因になっている
こうした理由は、時間の経過やクラス替えで解決することがあります。乗り越えたあとに、子どもが自信をつけるかもしれませんね。
「今日はイヤ」と「ずっとイヤ」は違います。2週間ほど間を置いて、もう一度聞いてみましょう。
やめてもいいサイン
反対に、無理に続けないほうがいい場合もあります。判断の目安になるのは次の3つです。
- ・睡眠時間が削られている、体調を崩しやすくなっている
- ・月謝を払うために、他の生活費を削っている
- ・続けたい理由が、親の期待だけになっている
特に3つ目は要注意です。「ここまでやったんだから」という気持ちは、子どものためではなく、払った費用への未練から来ていることがあります。
生活防衛資金(急な出費に備える貯金)を取り崩し始めているなら、いったん止まりましょう。
すぐに決めない選択肢

やめたいと言われて、その週に退会届を出す必要はありません。まずは、子どもと話し合って折り合いをつけてみましょう。
筆者の息子の場合、少年野球チームに入っていますが、土日祝は基本すべて練習か試合です。連休中は毎日あるので「しんどいときは休んでいいよ」と言って無理なく続けています。
多くの教室には、いきなり退会する以外の選択肢が用意されています。
- ・1〜3カ月の休会制度を使う
- ・週2回を週1回に減らす
- ・選手コースから趣味コースへ変える
回数を減らせば月謝も下がり、家計と時間に余裕が生まれます。減らしてでも続ける道を、まず探してみてはいかがでしょうか。
退会してから「やっぱりやりたい」となると、入会金や道具代をもう一度払うことになりますよ。
やめたあとのお金の使い道
やめると決めたなら、次に考えるのは浮いたお金です。ここを決めておくかどうかで、5年後の家計は変わってきますよ。
浮いた月謝の行き先を先に決める
浮いた月謝は、行き先を決めないと生活費に溶けます。
月1万円が浮いても、食費や日用品にじわじわ吸収されて、半年後には何に使ったか思い出せなくなります。やめると決めた日に、次のどれにするかを決めてしまいましょう。
- ・教育資金として積み立てる
- ・子どもが興味を持った別の体験に使う
- ・家族の思い出になるおでかけに使う
子どもの経験や教育は、削る対象ではありません。お金は増やすだけでなく、有意義に使うことも同じくらい大切だと考えています。
習い事をやめることは、節約ではなく使い道の入れ替えです。減らした分だけ、別の経験に回してあげてくださいね。
教育資金として育てる
行き先のひとつが、教育資金としての積み立てです。仮に年3%で運用できたとして計算してみましょう。

月5,000円なら、5年で元本30万円が約32万3,000円、10年で元本60万円が約69万9,000円。月1万円なら、5年で元本60万円が約64万6,000円、10年で元本120万円が約139万7,000円になる計算です。
10年で20万円ほどの差が生まれます。これが「時間を味方につける」ということですね。
新NISAのつみたて投資枠を使えば、こうした利益に税金がかかりません。基本は長期・積み立て・分散で、値動きのある商品を長く持ち続ける前提の仕組みです。
ただし元本割れの可能性があります。この計算も一定の利回りを前提にした試算で、将来の成果を保証するものではありません。
使う時期が5年以内に決まっているお金なら、預金で持っておくほうが安心ですよ。
習い事で迷ったときにできること
考え方が決まったら、あとは動くだけです。今日からできることを3つに絞りました。
習い事の費用を書き出す
まず、月謝以外も含めた年額を紙に書き出しましょう。入会金や道具代、発表会費まで足すと、思っていた金額と違うはずですよ。
数字にすると、感情ではなく事実で話せます。家族で相談するときの土台にもなりますよ。
子どもに3つの質問をする
次に、子ども本人に理由を聞きます。聞くのは次の3つだけで十分です。
- 何がイヤなのか
- どうなったら続けられそうか
- 1カ月休んだらどう思うか
責める口調にならないよう、隣に座って聞いてみてください。
1カ月だけ休んでみる
最後に、迷ったら1カ月だけ休んでみましょう。退会は取り消せませんが、休会は取り消せます。休んでみて「戻りたい」と言うなら続ければいいし、言わないならそれが答えですね。
可逆な選択から試すのが、お金の面でも気持ちの面でもいちばん損が小さくなります。
まとめ|やめる決断もムダにはならない
習い事の「やめたい」は、家計の話であると同時に、子どもの気持ちの話でもあります。判断に迷ったときは、次の4つを思い出してください。
- ・払ったお金は戻らないので、判断材料にしない
- ・これから先の費用と時間で決める
- ・いきなりやめず、減らす・休むから試す
- ・浮いた分の行き先を、その日のうちに決める
やめる決断は失敗ではありません。合わないとわかったことも、次の選択につながる経験です。
まずは今夜、習い事の年額を書き出すところから始めてみませんか?
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※画像はすべて著者提供
記事執筆
ミライズFPオフィス代表を務める独立系ファイナンシャルプランナー(FP)。2児の父親でもあり、自身の子育て経験を活かし、子育て世帯の家計管理や資産形成をわかりやすく伝えることを得意としている。金融メディアでの執筆・監修など、活動の幅は多岐にわたる。
