「ようかん」を漢字で書くと「羊羹」。「羊(ひつじ)」が使われているそのワケとは?【知って得する日本語ウンチク塾】

国語辞典編集者歴44年。日本語のエキスパートが教える〝知ってるようで知らなかった〟言葉のウンチクをお伝えします。

「ようかん」のルーツは中国の羊料理だった!

和菓子の「羊羹」になぜ「羊(ひつじ)」という漢字が使われているのか、不思議に思ったことはありませんか。

さらに「羹(かん)」という漢字も謎です。この字は、「あつもの」とも読みますが、その名の通り「熱いもの」という意味です。「あつものに懲(こ)りて膾(なます)を吹(ふ)く」の「あつもの」です。肉に野菜をまぜて煮た熱い吸いもののことです。「羊」も「羹」も甘い菓子とはまったく関係のなさそうな漢字ですが、どうしてそんな漢字が使われているのでしょうか。

実は「羊羹」は、もともと中国で古くからあった料理で、羊肉の羹(あつもの)、つまり汁のことだったのです。それがいつの頃かわかりませんが日本に伝わりました。日本で初めて文献に「羊羹」の語が見られるのは室町時代中期以降です。ただしそれは汁物のことではなく、点心の品目としてだったのです。

そのため、日本の「ようかん」は汁物の羊羹から変化したのではなく、「羊肝糕(ようかんこう)」という餅の一種からだとする江戸時代の随筆『嬉遊笑覧(きゆうしょうらん)』(1830年序)のような説もあります。

「羹」「糕」は、ともに古い時代の音(漢音)は「こう」なので、「糕」とすべきところを誤って「羹」と書いたともいうのです。ただこの説には一つ問題があります。「羊肝糕」がどのようなものだったのか、よくわからないのです。「糕」は穀物の粉を蒸して作った食品をいいます。江戸中期の有職(ゆうそく)故実家の伊勢貞丈(いせさだたけ)が書いた『貞丈雑記(ていじょうざっき)』には、かつての羊羹は今の蒸羊羹のようなものだったとあります。「羊肝糕」は謎ですが、蒸すことは共通していますので、何か関係があったのかもしれません。

今の練ようかんが生まれたのは、18世紀末ごろ

今のような、練りようかんが生まれたのは、18世紀末ころのことです。練りようかんは寒天と砂糖を溶かし、これに各種のあんを配合して流し固めたものです。これを軟らかく作ったものが水ようかんです。

いずれにしましても、「ようかん」は日本独自の菓子として作られ進化していったのです。そこに「羊羹」という表記だけが残ったというわけです。

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監修

神永 曉|辞書編集者、エッセイスト

辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。文化審議会国語分科会委員。著書に『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)、『辞典編集者が選ぶ 美しい日本語101』(時事通信社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。新刊の『やっぱり悩ましい国語辞典』(時事通信社)が好評発売中。

 

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