「どこがわからないの?」ではなく「どこまでわかったの?」。家庭でできる「算数力」の伸ばし方【家庭教師・個別指導のプロ講師、るり先生に聞く】

小学校低学年ではすらすらできていた算数が、3、4年生になって急につまずいてしまうというケースは少なくありません。家庭ではどんなふうにサポートすればよいのでしょうか? 塾講師・家庭教師として指導を続け、身近なアイテムを使った教え方をInstagramで発信するるり先生に、つまずきの見つけ方から算数力アップのコツ、中学につながる学習習慣までを伺いました。


低学年では得意だったのに……算数でつまずきやすいポイントとは?

――るり先生がおうち学習について発信を始めたきっかけを教えてください。

るり先生:「本人が持っている力とは関係のないところで、成長の芽が摘まれてしまうのをなんとかしたい」という気持ちが、発信の出発点です。

学生時代から塾講師や家庭教師をしてきて、ご家庭によって教育への意識や環境に差があることが、ずっと気にかかっていました。決定的だったのがコロナ禍の休校期間です。長い休校期間を利用して個別指導で小学校のうちに中3の範囲まで終えてしまう子がいる一方で、小学校の内容に追いついていないのに「学校がないから勉強しなくていい」と学習機会を失っている子もいました。

「速さ」の文章題が苦手な子のために、「道のり(み)」「速さ(は)」「時間(じ)」を「見える化」して概念の理解を促す(写真:るり先生ご提供)

――算数で子どもたちが共通してつまずきやすいポイントや学年はありますか?

るり先生:つまずきというと「割合」や「速さ」などではないでしょうか。お母さんたちの声を聞いていると、不安になり始めるのが3年生ぐらい、実際にわからなくなるのが4、5年生というケースが多いです。

低学年は、計算ドリルなどで反復するうちに克服できていたのに、学年が上がって文章題が増えた途端に急にできなくなる子は本当に多いので、親御さんも悩んでしまいますよね。子どもが「どのように解けばよいのか」「どこをどう読めばいいのか」わからなくなるのは、低学年から機械的に計算してきた刷り込みがあるから。文章題や割合、速さといった「概念」の単元になると、ハードルが高く感じられてしまうのです。

「どこがわからないの?」ではなく「どこまでわかったの?」と聞こう

「割合が見える魔法のゴム」。100円ショップなどで売っている白いゴムを使って割合の概念を身につけられる(写真:るり先生ご提供)

――子どものつまずきに早めに気づくためにできることはありますか?

るり先生:小学校の算数は単元のブロックごとに進みます。ですから、授業が新しい単元に入ったタイミングで、前の単元の問題を振り返ってみてください。すらすら解けるなら大丈夫。でも、新しい単元が入ってきたときに前の単元が「わけがわからない」状態になっていたら、少し危ないサインかなと思います。あとは、宿題の準備はできているのに手が進まないとき。子どもは机に向かうまでのハードルが高いため、宿題をする準備ができたのに進んでいないなら、内容で困っている可能性があります。

ですから、普段の会話の中で、「子どもが今どんな単元を勉強しているか」をなんとなく知っておくといいと思います。勉強のことを探ろうとすると子どもも身構えてしまうので、「今日、先生どんな面白いこと言ってた?」くらいの感じで聞くのがおすすめです。家の中で自然と学校の話がある状態にしておくと、子どもが困ったときに相談しやすくなると思います。

――実際に子どもがつまずいたとき、家庭ではどんなふうに対応するのがよいでしょうか?

るり先生:「どこがわからないの?」と聞くのはやめたほうがいいと思っています。子どもにとっては、わからないところを言語化するのは難しいんです。おすすめは「どこまでわかったの?」に変えること。

それでも答えられないときは、問題を指差しながら「この1リットルってどういう意味?」「太郎くんはどこからどこに行ったの?」と、問題文を短く切って小さな質問にしていきます。大事なのは正誤ではなく、子どものリアクション。例えば、正解なのに不安そうにしているなら、その問題を理解できていないのかもしれません。逆に、間違いの説明でも一生懸命に話してくれるなら、理解を深められるチャンスです。

――最近は、親世代が習っていない単元もあり、焦ることもあります。

るり先生:Instagramの投稿にもコメントがありました。2020年度から始まった新しい学習指導要領で「データの整理」という領域が大きく変わったんです。以前は中1で習っていた(※1)中央値や最頻値、度数分布表、柱状グラフ(ヒストグラム)が、小6で出てくるようになりました。言葉を聞いたことがないだけで、中身は難しくありません。親が習っていなくても、身構えずにお子さんと向き合う姿勢が大切です。

※1 中学校では2012年度から導入された

長さの異なるかりんとうを使って、ヒストグラムを解説。Instagramでは、しめじを使った動画を発信している(写真:るり先生ご提供)

教えるのではなく「一緒に悩む」。身近なもので「見える化」して楽しく算数力アップ

――家庭で親が勉強をサポートするときに気をつけることはありますか?

るり先生:まずは教科書をベースにするのがおすすめです。特に算数に苦手意識のある子は、学校のやり方がわからないまま、参考書などで工夫した方法だけを覚えると、「学校ではこう言われたのに」と両方のやり方の間で混乱してしまう場合もあります。

教科書を開いて一緒に音読したり、指差しで読んでみたりするだけでもOKです。言葉をなぞりながら「ここ、学校の先生はなんて説明してた?」と尋ねてみると、そもそも話が聞けていないのか、聞いたけれどわかっていないのかが見えてきます。

教科書の言葉が難しいことでつまずいてしまう場合は、意味が完璧にわからなくても大丈夫です。子どもにとっては、言葉の意味がわかることよりも「解けた」という達成感が次に進む力になります。

――るり先生の投稿は、算数のわかりづらい部分を「見える化」してくれてとてもわかりやすいです。

るり先生:ありがとうございます。講師をやっていた頃から、「わからない」という子には、ノートの切れ端などでパパッと何かを作るということはよくしていました。「この部分でつまずいている」ということが見えると、「じゃあ、ここが見えるようにしたら解けるよね」とアイデアがひらめくんです。

反響が大きかったものの一つに、ストローで作った分度器の教材があります。習った直後はわかるけれど、別の単元でまた使うときに「0の線はどこに合わせるんだっけ?」とわからなくなる子が意外と多いんです。機械的にやっている子ほど、やり方をすぐ忘れてしまうんですよね。

“じゃばらストロー”をつけた「角度が見える動く分度器」。目盛りの「0」を合わせる位置や、角度の感覚を身につけられる(写真:るり先生ご提供)

――それは盲点ですね! 三角定規にマスキングテープを貼る投稿も話題でした。

るり先生:三角定規を2枚使って平行線を引くとき、どの辺を合わせればいいかわからなくなる子が多いので、マステを1本貼って印をつけます。平行線を習うのは小4ですが、中1の作図でまた使います。3年も空くので、「習ったのは覚えているけれど、どこを合わせるんだっけ」となるんです。

こういったアイテムは自転車の補助輪と同じ。つけて練習をして、わかるようになったら外せばよいと思います。頭にイメージができればマスキングテープがなくてもできるようになります。「補助輪がないとできなくなってしまうのでは?」「テストで使えないから役に立たない」と考える親御さんもいますが、「いずれ外すのだから最初から使わない」というのは違うと思っています。

三角定規にマスキングテープを貼って、平行線を「見える化」したアイテム。貼るだけなので簡単に取り入れられる(写真:るり先生ご提供)

――目に見えたり、手を使ったりすることで、記憶にも残りやすいですね。

るり先生:「こんなに教えているのに、なんでわからないの?」とイライラしてしまった経験がある親御さんも多いと思います。でもそれはただ、アプローチがその子に合っていないだけ、ということもよくあります。理解の仕方は一つではなく、子どもによって方法は異なります。インパクトのあるものは記憶に残るので、書き方は忘れても、頭の中の映像から思い出せるんですよね。

図解にするときも絵や表、グラフなどさまざまな方法があります。例えば、分数を教えるときに「円を使うべきか箱を使うべきか」という話があります。今は箱で教えるのが主流ですが、私は円も捨てがたいと思っています。子どもに同じ方法で2回、3回伝えてもわからなければ、いったん諦めてアプローチを変えてみる。それを繰り返す中で、その子のタイプを知っていくことが、最終的な近道になるのではないでしょうか。

(左)分数を「箱」を用いて教える方法(右)円を用いて教える方法(写真:るり先生ご提供)

親が「勉強」というフィルターをかけないことが肝心

――子どものモチベーションを下げないコツはありますか?

るり先生:まず親御さんが、勉強に対するネガティブな気持ちを捨てることが大切と思っています。「こういう声かけをしましょう」という情報は調べればいくらでも出てきますが、いざその場面になると、その言葉を発せるメンタルではないということってありますよね。ですから声かけよりも、「子どもの勉強ってこういうもの」と、親御さんの考え方を変える方が有効だと思っています。

「子どもに勉強を教える」となると「教える人」と「教わる人」という関係になり、「わからせなきゃ」というプレッシャーからイライラが生まれます。それよりも、「今この子は何を見て、どう解釈して悩んでいるのか」を一緒に悩めばよいと思うんです。子どもとしても「ママ(パパ)が一緒に悩んでくれた。じゃあ、がんばろう」と思える方が、お互い穏やかでいられるはずです。早めにこの関係性を築いておくと、勉強が難しくなってきても一緒に向き合うことができます。

――小さいうちから算数的な考え方に慣れる習慣はありますか?

るり先生:「勉強というフィールドを用意しない」ということでしょうか。小さい子にとって勉強と遊びに区別はないので、生活と切り離さず、同じ空間にあるものとして扱います。

例えばおやつや食事のときには、「チョコレートを何個食べた?」「おかわりは何個ほしい?」というやりとりで数を数える。「トマトは2分の1に切る? 4分の1にする?」で分数に触れる。買い物の値引きシールも大チャンスです。「398円のお弁当が3割引だよ。大体400円とすると、0.7をかけて280円くらいかな」……この会話だけで、概数、割合、計算の工夫が全部入っています。また、お菓子のパッケージで立体図形を知ることもできます。

日常に数字がある状態が当たり前になっていれば、「勉強」に変わっても「いつもやっているやつね!」となります。大人が「勉強」というフィルターをかけずに接すると、後々ラクになると思います。

小学生のうちに身につけておきたいこと:①「間違い直し」

――るり先生は「間違い直し」の方法についても紹介されていますね。

るり先生:学校では「丸つけして間違い直しをしなさい」としか言われないことが多く、その言葉をどう解釈するかは家庭によって違います。「直す」というのは、なぜ間違えたのかを理解して、正しい解き方をもう一度自分でやってみること。答えを見て、正しい解答を書き写すことではありません。

そういうことを指摘してもらう機会がなく、「模範解答を見て赤ペンで答えを書く=直した」と思ったまま中学生、高校生になってしまう子も多いんです。

――確かに丸つけの方法まで指摘されることはないですよね。

るり先生:そうなんです。過去に、ある中学生を任されたことがあります。その子は平日3時間、土日は5時間勉強しているにも関わらず、不思議なことに成績は伸びず、志望校にもまったく届かない状態でした。その理由を知るために生徒のノートを見せてもらいました。

すると、間違った式に赤ペンで大きくバツをつけ、隣に模範解答を書き写していたのです。次のページで解き直しているのですが、まったく同じ間違いをしている。そのたびにバツをつけて答えを書き写す……それが何十ページも続いていました。ノートの字はとても丁寧に書かれていて、その生徒ががんばっていることは伝わりました。

そこで「間違い直しは『直す』ことなんだよ」というところから教えました。3か月後くらい経った頃、それまで10〜20点台だった単元ごとの小テストで初めて80点が取れたんです。解き直しとは何をすることなのかを正しく理解できると、短い時間で成果を出せるようになります。

――早いうちから身につけさせたい習慣です。

るり先生:低学年のうちは間違いも少なく、「なぜ間違えたか」を言語化するのも難しいので、結論を求めなくて大丈夫です。「なんでプラスをマイナスって書いちゃったんだろうね」と対話をしながら、間違えた理由を考えることを習慣化すると良いでしょう。

さらに、小学生がやりがちなのが、筆算にバツがついたら消しゴムで全部消してしまうこと。間違いをなかったことにせず、残して観察してほしいんです。模範解答と見比べて、「何行目の数字から違うのか」を見るだけでもいいです。「3問とも繰り上がりを書き忘れているだけ」かもしれません。気づかないまま同じ間違いを繰り返すのは、すごくもったいない。こういうふうに分析する習慣を小学生のうちにつけておくと、中学でかなりラクになりますよ。

小学生のうちに身につけておきたいこと:②「年齢に合った学習習慣」

牛乳パックで作った「立体ブロック」。自分で作ったり、手でさわったりしながら、立体に親しむことができる(写真:るり先生ご提供)

――中学に向けて、小学生のうちにやっておいた方がよいことはありますか?

るり先生:小4くらいまでは、遊びを通した土台固めで十分です。例えばブロック遊びでも順番を先に立てて考える、パーツの違いを選ぶ、数えるなど算数力を鍛えることができます。間違えたときにはどこでずれたのか観察するなど、うまくいかなくても試行錯誤して自分で解決する力は、とても大事です。その上で、小5くらいからはドリル学習を意識したいですね。割合、速さ、分数、面積、体積と、中学で使う考え方のほとんどが詰まった重要な学年だからです。

実は中学の学習の進め方でつまずくことの一つは、宿題が出ないことなんです。「やってもやらなくてもいいよ」と言われて手をつけず、テスト2週間前に「ワーク(問題集)の40ページまで提出」と言われて慌てる子も多いです。今日習ったページをその日にやる習慣が小学生のうちにできていれば、テスト前に見直す時間も取れますし、一度やっているぶん理解も違います。

――ドリルを使うなら、どんなものを選べばよいでしょうか?

るり先生:私は無料の学習プリントもよく使います。たくさんのサイトがあり、1枚単位で渡せるので、強化したい単元に特化できるのが利点です。デメリットは管理のしづらさと選ぶハードル。なくしてしまう子や綴じるのが苦手な子には、市販のドリルが合うと思います。選ぶなら、私は解説が中心のものより、手を動かす量が多い「ドリルタイプ」をおすすめしたいです。

「わかりやすい」と「できる」はイコールではありません。苦手な子には同じパターンの基本問題が多いもの、得意な子には適度に応用問題やパズル問題が入ったものがよいと思います。また、1ページに3〜5問しかない薄いものは「やったつもり」で終わってしまいます。文章題なら3〜5問でいいのですが、単純計算なら最低でも1ページ10問以上はほしいですね。

――算数につまずいたまま高学年になってしまった場合はどのようなアプローチが有効でしょうか?

るり先生:先ほど学習習慣や算数に慣れる習慣についてお話ししましたが、お子さんが算数につまずいたまま高学年になってしまっても、手遅れとは思わないでほしいです。

というのも、低学年と高学年では、問題へのアプローチが変わるからです。例えば図形は顕著で、幼少期に積み木やブロックで遊んだ子は自然と展開図が頭の中で描けるようになります。でも高学年の子どもに「今からブロックで遊びなさい」と言っても、時間も取れないし、興味がなければ身につきませんよね。

高学年ならば、同じ図形でも数的に捉えるテクニックを身につけるというアプローチが可能です。「図形のセンスがないから解けない」ではなく、「テクニックで解くには、この問題をどう解釈したらいいのか」という方法で取り組むと良いでしょう。このように、今のお子さんの年齢に合う方法で軌道修正していければいいのかなと思います。

――ありがとうございました! るり先生のInstagramやYouTubeでは、身近なものを使って算数力を身につけられるアイデアがたくさん投稿されています。ぜひチェックしてみてくださいね!

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お話を聞いたのは

るり先生 家庭教師・個別指導のプロ講師

塾講師・家庭教師のプロ講師歴10年以上。学生時代から多くの子どもたちを指導してきた経験を生かし、算数の概念や学習ポイントなどを楽しくわかりやすく発信している。

TikTok:@ruri_homeitem

この記事を書いたのは

平丸真梨子 ライター

音楽大学卒業後、出版社勤務を経て、現在はフリーライター・編集者として活動中。小学生2人の母。主に教育系、不登校への取り組み、著名人インタビューなどを執筆しています。子育ての中で感じた疑問や発見を活かしながら記事を作成することを心がけています。

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