【英語】英単語は親世代の約1.5倍に…! 中学英語でつまずかないために、小学生のうちからできること

小学校で英語が教科化され、以前よりも早い時期から英語に触れるようになった子どもたち。一方で、「英単語はどのくらい覚えればいい?」「中学校の授業についていけるか心配」と感じている保護者もいるのではないでしょうか。そこで今回は、乳幼児の言語獲得や英語教育を研究し、幼稚園や小学校の英語カリキュラム・教材作成にも携わってきた佐藤久美子先生に、家庭でできる英語との関わり方やフォニックスの必要性、英会話教室の選び方など、小学生の英語教育にまつわる気になるあれこれをたっぷりと伺いました!

小学校では楽しかった英語が、中学校で難しく感じるのはなぜ?

――現在の小学校・中学校の英語教育は、以前と比べてどのように変わっていますか?

佐藤先生:私たちの時代と比べて大きく変わったのは、中学校よりも小学校の英語教育です。現在は小学3・4年生で外国語活動が行われ、5・6年生では英語が教科になっています。

現行の学習指導要領では、小学校で600~700語に触れ、中学校では1,600~1,800語を扱います。中学校で扱う単語数は以前の約1.5倍に増え、高校で学んでいた現在完了進行形や原形不定詞、仮定法など、一部の文法も中学校で扱うようになりました。

学ぶ内容が増えた一方で、自分の気持ちや考えを英語で伝え合う「言語活動」が重視されるようになったのは、とてもよい変化だと感じています。覚えた単語や文法を使って、自分の伝えたいことを表現する力が求められています。

――小学校で学んだ単語は、中学校では「すでに学んだもの」として扱われるのでしょうか?

佐藤先生:そうですね。ただし、小学校では600~700語に触れるといっても、授業で全ての単語を読んだり、正しいスペルで書いたりできるように教えているわけではありません。

小学校では「聞く・話す」活動が中心です。教科書に一度しか出てこない単語もあり、聞けば意味がわかる単語と、自分で使って話せる単語を合わせて600~700語となっています。

一方、中学校では「読む・書く」活動が増えます。小学校では英語で話して褒められていたのに、中学校ではスペルを少し間違えただけで、テストでは不正解になることもあります。こうした学び方の違いに戸惑う子どもは少なくありません。

小学生のうちに、英語はどこまでできればいい?

――ギャップがあるんですね。戸惑わないためにも、中学校に進むまでに身に付けておきたいことはありますか?

佐藤先生:まずは、アルファベット26文字の大文字と小文字を読めるようにしておきましょう。さらに、文字を見て読めるだけでなく、アルファベットや自分の名前を書けるようにしておくと、中学校に進んでからの負担が軽くなります。

4年生ごろまでには、dog,cat,red,blueなど、日常生活でよく目にする3~4文字程度の短い単語を読んだり書いたりできるとよいでしょう。難しい単語をたくさん暗記する必要はありません。食べ物や動物、色、身近な物など、子どもにとって意味がわかりやすく、よく使う単語から始めてみてください。

――高学年では、どのようなことを意識するとよいでしょうか?

佐藤先生:小学校では「What animals do you like?」「I like ~.」などの簡単な表現を学びます。ただし、その単元が終わると使わなくなり、忘れてしまうこともあります。一度習った表現を繰り返し口にすることが大切です。

例えば「I like bananas.」のように、知っている単語を使って短い文を作り、慣れてきたら書いてみましょう。文の最初は大文字にする、単語と単語の間を空ける、最後にピリオドをつけるといった基本も、少しずつ身に付けていけるとよいですね。

中学校の英語では、日本語で考えた長い文を、そのまま英語に訳そうとして難しく感じる子がいます。知っている単語や簡単な表現だけでも、伝えられることはたくさんあります。完璧な英文を作ろうとせず、まずは知っている表現を使って話し、それから書いてみることを意識してください。

歌や絵本を活用! 家庭でできる英語との関わり方

――未就学児や低学年の家庭では、どのように英語を取り入れるとよいですか?

佐藤先生:英語の歌を一緒に歌うことは、とても取り入れやすいと思います。動画を見ながら、踊りながら歌ったり、車での移動中に歌を流して家族で歌ったりするのも楽しいですね。

英語には、日本語とは異なるリズムや強弱があります。歌を繰り返し聞くことで、単語だけでなく、英語らしいアクセントやリズムも自然に耳に入ります。例えば、体の部位を触りながら歌う「Head, Shoulders, Knees and Toes」のような曲なら、動きと単語の意味を結びつけて覚えられます。

――英語の絵本を読むなら、どのようなものを選べばよいですか?

佐藤先生:最初から文章量の多い本を選ぶ必要はありません。1ページにわかりやすいイラストが一つあり、英文は1文程度という、やさしいものを選びましょう。保護者にとっても読む負担が少なく、続けやすくなります。

読んだあとは、「What’s this?」「What color?」「Who’s this?」など、簡単な質問をしてみてください。子どもは同じ質問を繰り返しても、得意そうに答えてくれます。絵を見ながら会話を重ねることが、言葉の定着につながります。

私が行った調査では、歌を聞くグループと、その歌詞が出てくる絵本を読むグループを比べると、絵本を読んだ子どもたちの方が、より多くの英語を身に付けていました。絵を見ながら言葉の意味を確認し、やり取りできることが大きいと考えています。

高学年には、使われる単語や文法、文章の長さなどがレベル別に調整された、英語学習者向けの読み物「Graded Readers」もおすすめです。様々なジャンルの読み物が用意されていますので、最初は短くて簡単なものから始め、子どもが興味を示したシリーズやテーマを選んでください。また、お手本の発音を確認できるよう、音声がついている本を選ぶとよいでしょう。

佐藤先生の著書『My Hometown, Your Hometown』は音声も付いているので幅広い英語学習に利用できる

フォニックスとは? 小さいうちに取り入れるメリット

――英語学習でよく聞く「フォニックス」についても教えてください。

佐藤先生:フォニックスを、発音練習だと思っている方も多いかもしれません。フォニックスは、英語の文字と音の関係を学び、文字を読めるようにするための学習法です。文字が読めれば文が読めて、絵本など本が読めるようになります。

アルファベットには、A(エイ)、B(ビー)、C(シー)という「文字の名前」と、それぞれの文字が持つ「音」があります。「ABCの歌」で覚えるのは、文字の名前です。

例えば、C・A・Tを文字の名前のまま「シー・エイ・ティー」と読んでも、cat(キャット)という単語にはつながりません。フォニックスでは、Cは「ク」、Aは「ア」、Tは「ト」に近い音で捉え、それぞれの音をつなげてcat「キャット」(キャを強く)と読みます。

フォニックスを学ぶと、初めて見る簡単な単語も、一文字ずつ音をつなげながら読めるようになります。さらに、イラストと一緒に見ることで、読んだ音と単語の意味も結びついていきます。

――家庭で取り組むときのポイントはありますか?

佐藤先生:未就学児や低学年には、文字と音の関係を理屈で説明するよりも、歌や動画を活用する方法がおすすめです。リズムやメロディーに乗せて繰り返すと、子どもは楽しみながら文字の音を覚えられます。

ただし、英語にはフォニックスの規則どおりに読めない単語もあります。まずは、CATやHATのように文字と音の関係がわかりやすい、短い単語から始めてください。

英会話教室やオンライン英会話は必要?

――今は、低学年から英会話教室などに通っている子も多いですよね。学校以外でも英語を習わせた方がよいのでしょうか。

佐藤先生:英会話教室やオンライン英会話は、必ずしも全ての子どもに必要というわけではありません。家庭で英語の歌や絵本を取り入れ、親子で楽しみながら英語に触れる方法でもいいと思います。大切なのは、家庭がどのような力を身に付けさせたいかを考え、子どもの性格や興味に合った方法を選ぶことです。

――習い事として英語を始める場合、教室選びで確認したいことは?

佐藤先生:最初に確認したいのは、子ども本人がその教室を好きかどうかです。体験レッスンを行っている教室が多いので、いくつか足を運び、先生やレッスンとの相性を見てください。

保護者がよい教室だと思っても、子どもが「行きたくない」と感じているなら、無理に通わせることはおすすめしません。とくに未就学児のうちに英語への嫌な印象がつくと、その後の学習にも影響する可能性があります。

しっかり力を身に付けることをめざすなら、年齢ごとの目標やカリキュラムが決められているかも確認しましょう。「3歳ではここまで」「4歳ではここまで」と到達目標があり、どのような力が身に付くのかがわかる教室は、学習の成果も確認しやすくなります。家庭の目標に合った指導を受けられるか、そのうえで子どもが楽しんで通えるかを見ることが大切です。

親が英語を話せなくても、子どもをサポートできる

――英語が苦手な保護者は、どのように関わればよいでしょうか。

佐藤先生:保護者が英語を流ちょうに話せなくても、子どもの学習をサポートすることはできます。とくに未就学児の場合、保護者の発音や語彙力よりも、一緒に遊び、英語に関心を示すことが大切です。

「学校ではどんな英語をやっているの?」「アイスクリームをくださいって、英語でどう言うの?」と聞いてみてください。子どもが答えたら、「発音がいいね」「そんな言い方を知っているの?」「お母さんにも教えて」と褒めてあげましょう。

小学校高学年になると、保護者と一緒に幼児向けの歌や動画を見ることを嫌がる子もいます。その場合は、親が教えようとするのではなく、子どもが学校で学んでいることを聞いたり、興味のあるものを一緒に探したりするだけでも十分です。

中学生以降は、音声を聞きながら、リズムに乗ってフレーズや文をまねして反復したり(※)、教科書を音読する方法もおすすめです。繰り返し声に出すことで、英語のフレーズや文が口から出やすくなり、発音力もアップし、話したり読んだりするスピードも上がり、長文を早く理解する力にもつながります。

音読が合う子もいれば、歌やリズムに乗って繰り返す方が合う子、本をじっくり読む方が合う子もいます。子どものことをよく知っている保護者だからこそ、その子に合った方法を見つけるきっかけをつくれます。

※この練習方法は「チャンツ」と言います。佐藤先生の著書『わからないを30日でわかるにかえる 3年間の中学英語』(文理)参照。

――中学校の英語についていけるか心配している保護者へ、メッセージをお願いします。

佐藤先生:小学生から中学生ごろまでは、親子で会話をしたり、同じことに興味を持ったりしやすい時期です。英語も、親子の共通の話題や趣味の一つにしてほしいと思います。コミュニケーションは一方通行ではありません。保護者が英語について話し、子どもも自分が知っている英語について話す。お互いに知っていることや感じたことを伝え合うことで、会話が生まれます。

保護者が英語を教えられなくても、子どもの話を聞き、興味を持ち、応援することはできます。英語を通して親子でコミュニケーションを楽しむことが、子どもの学びを支える力になると思います。

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お話を聞いたのは

佐藤久美子 玉川大学・大学院 名誉教授

全国各地の教育委員会や小学校の要請を受け、小学校英語のカリキュラムや教材作成を行うと同時に、教員対象の研修講座や講演を多数行う。2016年度より町田市教育委員会の委託を受け、「放課後英語教室」を主宰。NHKラジオ「基礎英語」の講師を8年勤め、2012年度よりNHK Eテレ「えいごであそぼ」「えいごであそぼwith Orton」「えいごであそぼMeets the World」の総合指導/監修、2017年度よりNHK Eテレ「エイゴビート」、2020年度より「エイゴビート2」の番組委員。著書に『わからないを30日でわかるにかえる 3年間の中学英語』(文理)、『My Hometown, Your Hometown』(イデア・インスティテュート)など。

この記事を書いたのは

やまさきけいこ ライター

美容師として働いた後、子育てをきっかけにWEBライターとして活動をスタート。現在は親子向けWEBメディアを中心に、子育て・教育・ライフスタイル分野の記事を執筆している。親子イベントや商品レビュー、専門家インタビューのほか、映画や配信作品のレビュー記事も手がける。

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