「アフターピルって何?」と聞いてくる小6も。産婦人科医・サッコ先生に聞く、高学年の今から始める性教育

ネットで簡単に性の情報に触れられる今、早くから正しい知識を我が子に伝えたいと思う親も多いはず。でも、子どもが高学年になると、どう切り出せばいいのか迷う場面もありそうです。そこで全国で子どもたちに性教育の講演をしている“サッコ先生”こと産婦人科医の高橋幸子先生に、講演で伝えていることや子どもたちの現状、家庭で親ができることなどをうかがいました。

性の話は、恥ずかしがらずに明るく伝える

全国の小・中・高校で年間200回を超える性教育の講演をしているサッコ先生こと、高橋幸子先生。講演の内容は学年に合わせて変えているそうで、たとえば小学4年生には絵本を読んで、お腹の赤ちゃんの心音を聴かせたあと、赤ちゃんができる仕組みや生まれ方を科学的に説明しているとのこと。科学といっても子どもにとって身近な話が入り口です。

「『男の子と女の子で、パンツの中の穴の数が違うのはみんな知ってるでしょう?』と言うと、男子からは『え、そうなの?』なんて反応が返ってきます。『とっても大事な場所だから、みんなパンツを履いて守ってるよね。パンツを履いてない人いる?』と聞くと、『履いてるに決まってるじゃん』って盛り上がるんです」(サッコ先生)

ときには講演中に「セックス」など性に関する言葉を子どもがふざけて口にすることもありますが、先生はそんな言葉も無視せず拾って、説明する機会に変えています。

「性に関することはいけないことじゃないし、恥ずかしいことでもない。ポジティブに捉えてもらえるように言葉選びなども工夫しています」(サッコ先生)

自分の体に誰が触れていいかは、自分が決める

講演では、パンツの話をそのまま自分の体を守る話につなげていきます。

「唇、胸、性器、お尻の4つを合わせて『プライベートゾーン』と呼んでいます。大切な場所だからこそ、誰がどこをどんなふうに触っていいかは、自分だけが決めていいんだよ、と教えています。知っている人でも、『見せて』『触らせて』と言われて嫌だったら、やめてと言っていいし、逃げていい。そして周りの大人に伝えてね、と。もし、怖くて体がすくんで逃げられなくても、悪いのは嫌なことをしてきた人であって、された人は1ミリも悪くないんだよ、とも話します」(サッコ先生)

6年生には思春期の変化からネットとの付き合い方まで

6年生向けの講演では、思春期の心と体の変化の話が中心です。

「『体の成長が早くて恥ずかしい』『逆に遅くて心配』などの悩みも出てくる頃なので、15歳頃までにはみんな成長のスイッチが入るから大丈夫だよ、と話します。その上で、月経や射精の仕組み、性器の洗い方まで教えます。ネットとの付き合い方も伝えていて、玄関に貼れない言葉はネットに書かない。玄関に貼れない写真や動画はネットにあげない。彼氏や彼女にプライベートゾーンの写真を送ってと頼まれたらどうする?と問いかけ、自分の頭で考える時間を持たせます」(サッコ先生)

性の情報は、親が思うより早く子どもに届いている

サッコ先生は、長年子どもたちと接する中で、「性の情報が届く時期がどんどん早くなっている」と感じるそうです。

「10年前だと、4年生はみんな目をキラキラさせて話を聞いていて、6年生になると最前列の男子が『おい、今日あの話だぜ』ってニヤニヤしている感じでした。それが今は、4年生でもうニヤニヤしている。明らかに低年齢化していますね。6年生に『アフターピルって何?』と聞かれたこともあります」(サッコ先生)

ネットから入ってくる情報は断片的で、偏ってもいます。あるときは、6年生の男の子から「どうしたら陰茎が大きくなるのか」と聞かれ、理由を尋ねると「そのほうが気持ちいいんでしょ」と返ってきたそうです。

「6年生がそんな情報にさらされているのか、と心配になりました。『性交はお互いがしたいという気持ちと、体と心の準備が整ってこその心地よさなんだよ』ということをちゃんと積み重ね直して教えてあげないといけないですよね」(サッコ先生)

一見、理解しているように見える子も、大人が思いもよらない素朴な疑問を持っていることがあります。

「『先生、セックスは服を脱がなくてもできますか』と聞かれたことがあるんです。その子は、講演の感想で『今、うちには赤ちゃんがいるんですけど、命の大切さがあらためてわかりました』と言ってくれた子だったんですよ。

そういう質問をされたときに大人がはぐらかしたら、子どもはネットで調べて、歪んだ情報に絡め取られてしまいます。だから、性に関する疑問を持ったときに、聞ける大人が身近にいることはとても大事。子どもたちには、『信頼できる大人の顔を頭の中に3人思い浮かべて。そのうち1人は、家の外にも思い浮かべてほしい』とも伝えています。高校生くらいになると『親にだけは言えない』と言う子が多くなるからです」(サッコ先生)

子どもの「知りたい」を逃さない。答えに迷ったら本や動画を活用しよう

では、小学校高学年の今のうちに家庭でできることは何でしょうか。まずは、「子どもが性に関する質問をしてきたときに、ごまかさず、まっすぐ答えること」だとサッコ先生。性的な言葉をふざけて連呼するのも、「知りたい」という気持ちの表れかもしれません。

「子どもから質問されたときに、大人が恥ずかしいからとごまかしたら、もう二度と聞いてこないかもしれません。今回限りと思って、聞かれたときはその機会を大事にしてほしいんです。その場で答えられなくても『必ず答えるから、待っててね』『本を探してくるから、一緒に読もうね』などと伝えてあげてください」(サッコ先生)

性の話をどう説明したらよいかわからないときは、本や動画に頼るのも一案とのこと。

「これはと思うものを見つけたら、直接渡してもいいし、机の上やベッドサイド、トイレなどにそっと置いておくのもいいですね。あとは親が先に読んでおいて、『ここに書いてあることはなんでも質問していいよ』と伝えておけば、子どもが話したくなったときの相談相手になれます。でも、伝えてほしいのは内容そのものより、『これがあなたの人生のお守りになるから、知っておいてほしいと思っているよ』という気持ちです」(サッコ先生)

家庭での性教育におすすめの本・動画

サッコ先生に、家庭での性教育にもおすすめの本や動画をいくつか教えていただきました。

【絵本・書籍】

『あかちゃんはどうやってできるの?』(コーリー・シルヴァーバーグ 文、フィオナ・スミス 絵、たち あすか 訳/岩波書店)

人が生まれる仕組みを楽しくわかりやすく描いた一冊。サッコ先生が小学4年生への講演で最初に読んでいる絵本です。

『10歳までに知っておきたい まんがでわかる! 子ども防犯性教育』(高橋幸子・清永奈穂 監修、フルカワマモる まんが/KADOKAWA)

性と防犯の知識を、まんがで学べる一冊。保護者向けに家庭での伝え方のポイントも紹介しています。

【動画】

「境界線ってなに?」
こころとからだの「境界線」について学べる福岡県作成の動画。小学校高学年向けです。

【教材】

「まるっとまなブック」
年齢に合わせて、性やこころとからだの健康を学べる無料教材。小学校高学年の目安はレベル2(9~12歳)。サッコ先生の解説動画もあります。

親が価値観をアップデートして、子どものSOSを受け取る準備を

家庭での性教育で、もう一つ大切なのが、子どものSOSを受け取る準備をしておくこと。今、子どもたちは、学校の「生命(いのち)の安全教育」(※1)で、「(性的に)嫌なことをされたら信頼できる大人に相談すること」と教わっています。

「もしお子さんがSOSを発したときに、親御さんが『2人きりでいたらそうなるよね』など昭和の価値観で返してしまったら、その子はもう二度と人に相談しようと思えなくなるでしょう。『よく相談してくれたね。あなたの言うことを信じるよ。お母さん(お父さん)があなたを守るからね』と言える大人でいたいですね」(サッコ先生)

※1 誰もが性犯罪・性暴力の加害者にも、被害者にも、傍観者にもならないよう、生命の尊さや、一人ひとりを尊重する態度などを発達段階に応じて身に付けることをめざした教育。

「子どもが性について質問してこない」なら、今日から行動してみよう

「親が子どもと性について話せる時間には、限りがある」とサッコ先生は話します。

「たとえば、親が異性の子どもに性について伝えられるのは、中1がせいぜいだと言われています。小学校高学年ならまだセーフですよ」(サッコ先生)

子どもが中学生になったり、小学生でも親子で話すのが気恥ずかしかったりする場合には、専門家に頼る手もあります。たとえば、若者が性について学んだり相談したりできる「ユースクリニック」は全国に広がっています。

また、「家庭で性教育をしたいけど、子どもが質問しないからきっかけがつかめない」といったケースもあるでしょう。その場合は、いつ動き出せばよいのでしょうか。

「きっかけを待つ必要はありません。今日、この記事を読んだことが、あなたにとってのきっかけです。ぜひ何か一つ、行動を起こしてみてください」(サッコ先生)

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お話を聞いたのは

高橋幸子 性教育産婦人科医

埼玉医科大学医療人育成支援センター・地域医学推進センター助教。埼玉医科大学病院産婦人科で思春期外来を担当。一般社団法人彩の国思春期研究会代表理事、日本思春期学会理事。「サッコ先生」の愛称で全国の小・中・高校などで性教育の講演を行っている。2025年は260件を実施。著書に『サッコ先生と!からだこころ研究所 小学生と考える「性ってなに?」』(リトルモア)、監修に『10歳までに知っておきたい まんがでわかる! 子ども防犯性教育』(KADOKAWA)。

この記事を書いたのは

古屋江美子 ライター

通信会社に約6年間勤務した後、ライターに転身。旅行、IT、インタビューなどを中心に執筆。一児の母で、子どもとのおでかけや子連れ旅行の経験も記事づくりに生かしています。出身地・山梨県の「やまなし大使」。現在は川崎市在住。

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