【子供の発達障害】小学生になったらどこへ相談したらいい?どんな支援が受けられる?

小学校入学前の幼児期は、地域の児童発達支援センターや療育センターなどで支援を受けることができますが、小学生になると、どんな支援が受けられるのでしょうか? 愛知県名古屋市の放課後等デイサービス「ルーチェ」で、発達障害のお子さんを支援する藤原美保さんにお話を伺いました。

 

就学前診断や就学相談で、我が子が入学する学校を選ぶところからスタート

まずは「就学前診断」で3つの就学先から選択

小学校に入る前の年長の年にある「就学前診断」では、地域の小学校に出向いて、子供の健康状態や知的能力などの検査などを受け、子供の就学先を検討します。就学先には大きく分けて、「通常級」、「特別支援学級」、「特別支援学校」があります。

 

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地域によっては特別支援学校は定員超えで入りにくい

肢体不自由や知的障害など、障害者手帳があり日常生活を行うのに支障がある場合は「特別支援学校」に優先的入れますが、定員が限られているため、多くの場合、障害程度が中度~軽度の子は入るのが難しいようです。発達障害でも知的にボーダーや軽度のお子さんは「特別支援学級」でサポートを受けたいところですが、教室の中で授業妨害せず座っていられる子であれば、特に学習内容が簡単な低学年のうちは「通常級」を薦められることが多いのです。

本人が困っていることは、あまり理解してもらえない

「特別支援学級」への進学を希望する方が多い場合、教室で授業を受けるのが困難とみられる座っていられない子や手のかかる子が優先されます。支援級と情緒学級に分けられているところもありますが、人数的に名称は分けられていても、活動を一緒に行ったりする場合が多いようです。「通常級」にいても先生や他の子の邪魔にならないような子は「通常級」でとなります。学校としては学級運営上問題があるかどうかも考えるので、本人の問題を最優先してもらえない場合も多いのです。

もちろん保護者の中には、幼稚園や保育所のころのお友達と一緒にすごせる「通常級」の方がいいと望む方もいるでしょう。定型発達の子とともに過ごすことによる成長を望むという人もいます。そして、校長先生に理解があったりクラス担任に力量がある場合などには、それはそれでうまくいくこともあります。

学校に見学に行き、発達障害の支援方法をよく見極めよう

支援の仕方は、学校によってさまざま

お子さんの障害特性や、その程度によっても、どの進学先がいいとは一概に言えません。また、それぞれの学校によっても、状況は違います。発達障害に理解のある校長先生であれば「通常級」にいても、学習支援員をつけてくれて、クラスの中でも上手に仲間作りをしてくれるかもしれません。「特別支援学級」の先生の指導力が高く、越境してでも入学を希望する子が多いという学校もあります。ただ、その校長や支援学級の先生が異動してしまうと、支援体制がガラリと変わってしまうことがあるのも事実です。

とはいえ、進学先を選ぶにあたっては、まず学校に見学に行き、「特別支援学級」と「通常級」、どちらの授業も見せてもらい、わが子に合うのはどちらかを考えることをおすすめします。「通常級」に在籍しながら、苦手部分をフォローしてくれる「通級」に通う方法もあります。ただ「通級」も希望者が多く苦手の理解の程度によっては希望しても通えない場合があります。

 

発達障害の小学生が放課後を過ごせる「放課後等デイサービス」とは?

お子さんの特性に合わせた「療育」をしてくれる

「特別支援学校」の場合は、学校の先生が子どもの特性に合わせた指導をしてくれますし、先生や学校が地域の支援情報を持っていることが多く、将来のことについても相談ができるでしょう。

しかし、地域の小学校に入ると、学校の先生は支援情報を持っていないことが多いので、親が自分で情報をとりにいかなくてはいけません。相談先や情報を持っているところを探す必要があります。そんなときに頼りになるのは、発達障害のあるお子さん達が放課後を過ごせる「放課後等デイサービス」です。お子さんの特性にあわせて「療育」をしてくれるところもあり、専門のスタッフにお子さんの特性について解説してもらい、かかわり方について保護者が一緒に勉強できるところもあります。

「放課後デイ」の支援を受けるのなら、受給者証が必要

「放課後等デイサービス」を利用するには受給者証が必要です。幼児期の児童発達支援の場合は診断がなくても希望すれば受給者証をもらうことができ、療育に通うことができましたが、「放課後等デイサービス」の場合、医療機関で診断が必要になる自治体がほとんどです。診断書をもらい自治体に申請しなくては「放課後等デイサービス」の受給者証をもらえません。

IQ75~90ぐらいのボーダーの子や知的に問題がないとされるお子さんでも、医療機関からの診断書があれば受給者証は交付されます。

受給者証に障害者手帳の有無は関係ありません。「放課後等デイサービス」「日中一時支援」などを利用することができるようになります。

約2割の「放課後等デイサービス」が厳しい経営状況に

ニュースなどでご存知の方も多いかと思いますが、2018年の4月より「放課後等デイサービス」の開設基準が厳格化されました。それは、補助金目当で利益重視のような、発達障害の知識もあまりない、いわゆる質の悪い事業所が増えてしまったためだと言われています。

そのため、指導員が療育に関する有資格者であることや、責任者になれる人の要件などが厳しくなりました。職員にキャリアのある有資格者を雇うことは、それだけ高額の給与が必要ということ。通所できる子どもの数は人数制限があって増やせないし、補助金を含め収入は増やせないわけで、経営は厳しくなります。加えて、人材不足で有資格者の採用も追いつかず、経営が成り立たない事業者が増えています。現在すでに約2割の事業者が、経営が成り立たないと言われています。

 

子供を通わせる「放課後等デイサービス」を選ぶときの基準は?

事業者の方針をしっかり聞いて選ぼう

これから小学校に入り「放課後等デイサービス」を選ぶ人もいるでしょうが、すでに通っている「放課後等デイサービス」が、廃業に追い込まれる可能性も大いにあります。すると、新たに通える事業所を探さなければいけなくなります。「放課後等デイサービス」を選ぶには、実際に足を運んで見学することと、事業主がどういう視点をもって「放課後等デイサービス」を運営しているのか、その運営方針をよく聞いて判断しましょう。

「放課後等デイサービス」に子供を通わせたい理由には、子供の将来のためもありますが、親に時間がないから、とにかく預かってほしいという場合もあります。後者の場合、送迎がある、夕飯も食べさせてくれる、パジャマに着替えさせてくれて、あとは連れて帰るだけでOKというような利便性に魅力を感じる人もいるかもしれません。でも、それが、本当に親子のためになるのか?は疑問です。

 

18歳以降の大人になってからのほうが人生は長い

保護者の中には、子供が親の言うことは聞かないから指導は任せた、親も疲れきっているから離れられる時間がほしいという方もいます。時にはそういう時間も大切だと思いますが、私は生活の中にこそ療育があると思っています。お子さんが1日の中で1番長く過ごすのは、やはりご家庭です。保護者がお子さんの発達障害について理解し、スキルを持って対応できるようになることがまず大切です。

目の前の、これとこれができたらいいというのでなく、これができると生活の中でこう役立つ。今ある問題行動は将来のこういう問題につながるから今のうちに改善したいなど、将来を見据えた支援が必要です。厳しい言い方になりますが、「放課後等デイサービス」などの支援を受けられるのは18歳までです。その後、お子さんたちは家庭に戻っていきます。そして、それからの方が人生は長いのです。それまでに、お子さんの問題行動が少しでも減らせるように、そして、二次障害にならないようなケアが必要なのは言うまでもありません。

わが子が受けられる支援は、何があるか調べよう

「放課後等デイサービス」の開設基準の変更や、障害者雇用の枠の拡大など、福祉にまつわる法律は、随時変更されています。上の子の時には使えなかった制度が下の子の時には使えるということも多々あります。

残念なことに、日本はただ待っていても福祉は受け取れません。わが子が使える制度には何があるのか、受けられる支援は何があるのか、自分で調べて情報を得るしかありません。そして、その条件は自治体によっても違うので、地元の情報を得ることが先決。さらに、よりよい支援がある地域に引っ越しすることも視野に入れた方がいいでしょう。

もしいま通っている「放課後等デイサービス」が、わが子にとても必要な居場所で、事業継続を望むのであれば、保護者達が動いてわが子の居場所を守る行動が必要かもしれません。市民の声が届いて事業が継続されるケースもあるかもしれません。いずれにせよわが子に与えられた社会資源には何があるのか?どの法律が使えるのか、ぜひ見つけてください。

お話を伺ったのは

藤原美保|健康運動指導士、介護福祉士、保育士 株式会社スプレンドーレ代表

発達障害のお子さんの運動指導の担当をきっかけに、彼らの身体使いの不器用さを目の当たりにし、何か手助けができないかと、感覚統合やコーディネーショントレーニングを学ぶ。その後、親の会から姿勢矯正指導を依頼され、定期的にクラスを開催。周囲の助けを受け、放課後等デイサービス施設「ルーチェ」を愛知県名古屋市に立ち上げ現在に至る。著書に『発達障害の女の子のお母さんが、早めにしっておきたい47のルール』(健康ジャーナル社)『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること』(PHP研究所)がある。

取材・文/江頭恵子

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