中学受験は恵まれた選択肢なのか?結果が出たとき、子どもにかけたい言葉とは【おおたとしまささん×パパママが本音で座談会 後編】

中学受験するべき?リアルな悩みが座談会で発覚!

「二月の勝者 中学受験生に伝えたい 勉強よりも大切な100の言葉」の著者である教育ジャーナリストのおおたとしまささん小学生のママパパたち5名のによる座談会を開催。前編に続き、後編でも中学受験の本質に迫る本音をお届けします!

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中学受験はするべき?子どもがかわいそう?浮き上がってきたリアルな悩みとは【おおたとしまささん×パパママが本音で座談会 前編】
中学受験と聞くとどんなイメージが浮かびますか。「つらい」「大変」「かわいそう」そんな言葉を思い浮かべる人もいるかもしれません。また中...

座談会の参加メンバー

佐々岡さん(IT企業勤務)小2と年長の男子2人のパパ。自身は地方で中受を経験。子供の小学校選びをきっかけに地方へ移住。オルタナティブ教育に詳しいが、王道の中学受験にも関心がある。

 

 

 

高津さん(大学教員)小4男子と小2女子のパパ。自身は中学受験、高校受験の両方を経験。中受予定の長男には数学を好きになってほしいとパパ自ら算数を教える。息子の野球チームのコーチも務める。

 

 

原さん(出版社勤務)小5女子の娘が中受予定。塾の課題はパパがタスク管理し、娘の勉強を全力サポート中。自身も中高一貫男子校で過ごした経験が人生の財産と実感しているため、中学受験は賛成派。

 

 

矢野さん(専業主婦)小5、小4、小1の男子3兄弟のママ。長男が小4で「塾に行きたい」と通塾をスタート。塾と野球の両立が大変な日々。夫は中学受験にやや消極的で受験をやり通せるか不安もある。

 

 

与田さん(キャリアカウンセラー)中1女子、小2男子のママ。長女は6年夏に受験を決断。近所の中高一貫共学校を受験し現在通学中。長男も同じ学校に進んでほしいといまは思っている。

 

 

中学受験は恵まれた選択肢?

中学受験ができる地域は限られています。中学受験は恵まれた選択肢で、世の中の役に立つ使命があると思いますか。

©︎高瀬志帆/小学館「ビックコミックスピリッツ」連載中(以下同)

努力できるのもラッキー、好きなことで能力を磨くことが誰かの役に立つ

与田さん:地方だと中学受験の選択肢は少ないですよね。たまたま首都圏に選んで住んでいてその環境があるなら、それを活かして努力をして、将来世の中に返せる人になってほしいとは思います。これが本人に伝わるのは大人になってからかもしれないですが。

高津さん:僕は大学で働いているんですけど、社会に役立つってことはあまり意識していませんね。いまの研究職も楽しいからやっている。好きなことを好きなやつがやっているから、いい仕事ができると思っています。だから子どもにも人の役に立つようになってほしいという願いはなくて、好きなことを突き詰めてほしいです。

おおたさん:高津さんが好きで突き詰めた研究で世の中に影響を与えているのですから、それはとても大きな社会貢献になっているじゃないですか。

与田さん:私も子どもたちには、まずは自分が幸せであってほしいというのが一番の願いです。いきいきと勉強したり元気に働いて、これが恵まれているんだと思ったときに、他の人はどうなんだろうという目を向けられる人になってほしいという思いがあります。

原さん:世の中の役に立つっていろいろな形があると思うんですね。本を作る仕事も社会貢献、働いて税金を納めるのも社会貢献。スポーツ選手が夢を与えるのも社会の役に立っている。好きなことを突き詰めていくと、誰かの役に立っている。子どもも成長とともに気づいていくんじゃないかな。

佐々岡さん:一応、わりと僕は社会貢献したいなあという思いが強くあります。両親が地方公務員で、おじいちゃんは靴屋だったので育った環境もあると思います。家族には「能力のある人間は社会に役に立つべきだ」とか真顔で言ってドン引きされたりしてるんですけど(笑)

それは能力があるってことが言いたいわけじゃなくて、能力を磨いて社会の役に立つくらいの人間になれたらいいよねという自分へのプレッシャーもある。そう思えば思い上がりもないし、自分が何に役に立てるのか考えた方が自分の居場所ができるし尊重されると思う。子どもには小さいときからクラスの中やプロジェクトの中で、どう役に立つかということを学んでほしいと思います。

中学受験をしても恵まれた環境におごることのない人間に

おおたさん:この91講には「恵まれた家庭環境に生まれ育ったといういわば運によって得た力を自分の実力だと勘違いして自分のためだけに使うのなら、それはひととして浅ましい」と書きました。

社会の役に立つというのは社会全体だけでなく、身の回りの人に笑顔を向けられる人という意味もここには含まれています。落し物を拾ったら交番に届けるということも立派な社会貢献です。他者との関係性の中で、まわりの人に幸せになってほしいという思いを持つという捉え方で発信したメッセージです。

中学受験が終わった時、子どもにどんな言葉をかける?

みなさん、中学受験が仮に終わったときを想像してください。お子さんにどんな言葉をかけたいですか。

娘と人生最後に一緒にやれることかも?!

原さん:本を読むと1〜99までいい言葉が並び過ぎていて難しいんですけど、「一緒にがんばったね!!」だと思います。

僕この座談会の話がきたとき適任だと思ったんです。それくらい娘の受験を自分ごととしてやっています。そういうと教育虐待パパなんじゃないかとひかれたりするんですが。我が家では一緒に走っている感じ。実は僕は娘とスラックで勉強の管理チャンネルを作っていて、何時から何時にどの項目をどのくらいをやるのか、塾のない日は決めています。僕も一緒にもう一回勉強をやり直している感じですね。

おおたさん:みなさんくれぐれもそれくらいやらなきゃって思わないでください(笑)。原さんのスタイルはやろうと思ってもなかなかできない。お嬢さんが嫌がったら考えてください。ただ女の子は嫌だったら「お父さんうざい」って言ってくれる場合が多い。男の子は萎縮してしまう場合も。距離感を間違わないように注意が必要です。

原さん娘と人生最後に一緒にやれることかもしれないと思います。中学生になったら相手にしてもらえないからきっと(笑)。

ー頑張るとなにかご褒美はありますか?

原さん:いい点とると「ちゃお」が買ってもらえるとか、大きなテストでいい点とるとスイッチのソフトが買ってもらえるとか、ご褒美でも釣っていますね。

挑戦した子どもの努力を讃えたい

矢野さん:いま5年生で野球もやっているので、どちらも全力でやりきってくれることを期待してます。「がんばったね」は上から目線だと思うので「誇りに思うよ。この頑張りは一生の財産になるよ」と声をかけてあげたいです。私はできなかったことだから、あなたはすごいねって言ってあげられたらいいなと思います。

矢野さん:私は本当にこういう中学受験の世界があることを知らずに、この地域で子育てをして中受をみんなが普通にやることを衝撃を持って知りました。だから頑張り通せたらそれでいい。結果がどうであれ家族みんなで笑顔で終えられたらと思っています。

受験前にお守りに込めたメッセージ

与田さん;娘の試験の直前、塾から「中に子どもへのメッセージを入れたお守りを作ってください」と言われました。それに何を書いたかと思い出したんですが、娘の名前をNとして「受かっても残念でもNはNだよ」と書きました。結果がどうであれその子自身は何かが変わるわけじゃないし、そのままでいいんだよということを伝えたかったからです。

一番大事なのは自分で考える力をつけること。乗り越えてほしいから厳しくする

高津さん:僕は原さんほどはやってないんですけど、子供と一緒に数学やりたいなというのがあって、数学だけはちゃんと教えています。小3のときに連立方程式で何でも解けるようにしてますが、僕は絶対に答えを教えないんです。「パパなんで間違ってるの、教えて!」と泣いて言われても答えは教えない。大学ではわかりやすい解き方を生徒に教えますが、自分の子どもはちゃんと鍛えたい。

高津さんこの本の12講にもあるんですけど、少し前に息子がこっそり答えを見たんです。「今度やったら野球辞めさせるぞ」と叱ったんですけど、それでも答えを見るときがあって本当に野球に連れて行かなかった。周りから見たらやりすぎと思われているかもしれないけど曲げたくないんですよ。

高津さん:だから今は息子が中受に落ちるんじゃないかとも思っていて「おまえの努力が足りなかった」になるかもしれない。中学受験に合格するよりも最後に大事になるのは自分で答えを考えて欲しいということなんです。

お父さんのポリシーも大事。でもときには引いて子ども自身を見てやることも必要

おおたさん:ポリシーを持ってパパがやっているんですね。答えを簡単に与えないというのは大原則。一方で、お父さんの信念を曲げないことが優先されているけれど、子どもの耐えられる限度や子どものモチベーションはお父さんとは違います。自分のやり方にこだわるのではなく、もう少し子ども自身を見てあげると、正しい導き方が自然にわかると思うので、もう少し信頼して見守ってあげてもいいかもしれない。

たとえば自転車をこぎだす時って、漕ぎ出しでちょっと支えて押してあげると自分でこげるじゃないですか。それが最初から何も手を貸されないのは、精神的にはものすごく辛いことかもしれない。方針を緩めてあげてもいいのかなとも思います。ただそこで鍛えるってこともできると思うので、子供がどれだけしんどく思っているかです。答えを見ちゃうっていうのは相当つらいんだと思う。

高津さん:しんどいっていうのはわかってはいるんです。でもそこを超えてほしいなと思って。

おおたさん:わかっていて超えるのはお父さん?それとも子ども?

高津さん:子どもです。

おおたさん:子どもがしんどいとわかっているなら、おとうさんも超えたらいいじゃないですか。どっちが超えるかですよ

高津さん:卓球少女の福原愛ちゃんっていたじゃないですか。たぶんノリが似ているかなと思うんですよ。

おおたさんそれが高津さんのキャラで、スラックの原さんもキャラなんです。他人には真似できないことだからキャラは生かすべきなんですよ。でもそれが子どもを傷つけることだったら手前でとめなきゃいけない。デキるお父さんだからしっかりやりたくなるんだけど、それを少し引くことでお父さん、自分のことを見てくれていると思って子どもが自分から頑張ろうと思うこともあるんです。

うまくいかなければやり方を変えてみるのもひとつ子供も成長するし変わっていきますから

子どもの得意なことに1万点あげたい

佐々岡さん:みなさんの話を聞いて、各ご家庭のドラマを見ているような気がしてきました。中学受験って自分が何が好きで得意か、大きく言えば世界をどう認知して世界とどうつながるかということがわかる体験だと思います。

得手不得手が見えてくるのは後々の人生に役立つと思うんです。面白いと感じた教科がひとつでもあったらそれでいい。国語がものすごく得意なら、それがその子の世界とつながる方法だと知ることができるし、そこを伸ばせばいいんですよ。だから受験で疑問を感じるのは平均的に全部伸ばさなきゃいけないところ。自分が算数が苦手だったという体験からも感じます。

おおたさん得意なことは努力が結果に結びつきやすいですからね。

原さん:中学受験って平均が求められる。各教科100点やせいぜい150点満点じゃないですか。理科が100点でも算数が苦手で0点だと合格できない。理科が得意でもし理科が1万点満点だったら、将来その分野で大活躍できる人材になるかもしれないのに。中受は一定のふるいなだけで、得意を伸ばすっていうことは今後もやってあげたいですよね。

佐々岡さん:原さんと酒を飲み交わしたいくらい同意します!(笑)100点で止まっちゃうのは残念で、得意な子は現実は1万点くらいいくんですよね。既存の中受のペーパーテストという枠組みで判断して、親も子もネガティブなパーセプションにならないように気をつけたいです。

おおたさん:ベースにそういう思いがあるのはすごくいいことだと思います。限られたルールの中でやっているペーパーテストが人間の価値を決めるわけじゃない。もし耳で聞いて口で答える形式に変えたら偏差値も変わってくるでしょうし。「ルールの中でやっているだけだし、その中でがんばるだけやってみよう」くらいに親が思ってあげてほしい。中学受験のテストは物差しの中のひとつでしかないという受け止め方をしていれば、子どもは萎縮しないはずです。ぜひそういう気持ちを忘れないでください。

中学受験をする人&迷っている人みんなに読んでほしい

おおたとしまささんの著書には、タイトルの通り100の言葉が語りかけるように綴られています。「漠然と思っていたことを言語化して読めてスッキリした!」「背中を押してもらったようで勇気付けられた」など感想もさまざまです。中学受験をする人も迷っている人も、ぜひ手にとってみてほしいと思います。受験勉強をするうえで勉強よりも大切なことがあるのだと気づかされ、どんな状況でも何かしらのヒントを得られるはずです。

「二月の勝者 中学受験生に伝えたい 勉強よりも大切な100の言葉」

 画/高瀬志帆 著/おおたとしまさ 定価:本体1500円+税

親子で目指せ!「二月の勝者」

ビックコミックスピリッツで大ヒット連載中の中学受験漫画『二月の勝者-絶対合格の教室-』と気鋭の教育ジャーナリストのコラボレーション。「中学受験における親の役割は、子どもの偏差値を上げることではなく、人生を教えること」と著者は言います。決して楽ではない中学受験という機会を通して親が子に伝えるべき100のメッセージに、『二月の勝者』の名場面がそれぞれ対応しており、言葉と画の両面からわが子を想う親の心を鷲づかみにします。

 

著者

教育ジャーナリスト
おおたとしまさ

1973年東京生まれ。育児・教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。リクルートを脱サラ独立後、育児・教育をテーマに取材・執筆・講演・メディア出演などを行う。中高の教員免許を持ち、小学校教員の経験もある。著書は『ルポ塾歴社会』、『名門校とは何か?』、『ルポ教育虐待』、『ルポ父親たちの葛藤』、『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』、『21世紀の「男の子」の親たちへ』『21世紀の「女の子」の親たちへ』など計60冊以上。おおたとしまさオフィシャルサイトhttps://www.toshimasaota.jp

中学受験はするべき?子どもがかわいそう?浮き上がってきたリアルな悩みとは【おおたとしまささん×パパママが本音で座談会 前編】
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文・構成/HugKum編集部

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