「相槌」は「打つ」。「合いの手」は「入れる」
「相槌を打つ」は他人の話に調子を合わせてうなずいたり、短い言葉を差しはさんだりするという意味です。「合いの手を入れる」は、相手の話などに合わせ、ちょっとした言葉やしぐさを差し挟むという意味です。
ところがこの「相槌」と「合いの手」とを混同して、「相槌を入れる」「合いの手を打つ」という人がいるらしいのです。私のパソコンのワープロソフトはそのよう入力しようとすると、親切に(?)誤用という表示が出てきますが。
「相槌を打つ」は、他人の話に調子を合わせてうなずく
「相槌」は、刀鍛冶(かじ)が、師が打つ間に弟子も槌(つち)を入れることで、互いに槌を打ち合わすことです。そこから、「相槌を打つ」で他人の話に調子を合わせてうなずいたり、短いことばを差しはさんだりするという意味になりました。
「合いの手」は、相手の話に合わせて言葉や仕草をはさむ
「合いの手」は、元来は邦楽で歌と歌との間に楽器だけで演奏する部分のことです。これが歌や音曲の間にはさむ手拍子や掛け声のことをいうようになり、さらには「合いの手を入れる」で、相手の話などに合わせ、ちょっとした言葉や仕草を差しはさむという意味になったのです。
「あいづち」と「あいのて」、似ているようで似ていない語で、つい混同してしまうのかもしれません。でも、「相槌を入れる」「合いの手を打つ」は誤用とされる言い方なので、使わないように気を付けたいものです。
記事執筆
辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。文化審議会国語分科会委員。著書に『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)、『辞典編集者が選ぶ 美しい日本語101』(時事通信社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。新刊の『やっぱり悩ましい国語辞典』(時事通信社)が好評発売中。