トイレを怖がるASDの小2の娘。外出先で困ることも度々で…【発達障害の子育てサポート】

発達障害の子の中には、我慢が難しい、約束やルールが守れない等お子さんの行動に頭を悩ませている親御さんは多いと思います。療育を目的とした「放課後デイサービスLuce」を運営し、発達障害児のサポートに関わる藤原美保さんに、具体的な支援について伺いました。

トイレを怖がる小2の娘。外出先でなかなかトイレに入れません

年中の時にASD(自閉症スペクトラム症)と診断された小学校2年生の娘です。いまだにトイレを怖がり、特に外出先ではなかなかトイレに入れません。扉を開けてするか、私が一緒に個室に入らなくてはできません。学校でも我慢してしまうようで1年生の時にもらしてしまったことがあります。最近学校では何とか入れるようになりましたが、外出先などではまだ怖がります。どのように対応すればいいでしょうか。

娘は、衝動性が強く、じゃんけんやゲームの勝ち負けにもこだわりがあります。待つことも難しく、人の会話にも割り込み、相手が自分に注目しないと癇癪を起し、物に当たることもしばしばです。

 

トイレに持ち込める、娘さんの好きな物を用意してみて。ダメなら、安心できる場所を少しずつ増やしていく方法を

人は脳からの神経伝達指令によって、中枢神経→抹消神経→固有受容覚という順に電気信号が行き、筋肉を拮抗させ関節が動いたりします。
そして、触った物から皮膚感覚や視覚などを使って外の世界の情報を神経伝達で脳へ情報を送ります。この子は、その神経伝達の過程が整っておらず、身体の重心も獲得できていません。
ぶつかるからよけたいと思ったとしても、身体をどう動かしたらよけられるかわからないという感じです。そして、左右の理解もまだ怪しい子です。一見すると気分の切り替わりが激しい癇癪持ちのお子さんに見えますが、実は不安が異常に強い子です。トイレの件は、不安より恐怖の感情と説明した方が解りやすいかもしれません。恐怖という感情は人間の基本感情と言われています。「怖がるな」と言ってもそれは難しいのです。

トイレに入れない原因を探ってみましょう。音?そこにあるもの?臭い?

お子さんがトイレを怖がるのには様々な原因があります。説明して理解できるのであれば説明すれば良いですが、発達障害のお子さんの場合説明しても我慢できない場合が多いです。

自宅のトイレの工夫から始めてみて

ご自宅の場合なら様々な工夫ができるでしょう。お子さんの好きな物を用意してみてください。

お風呂用のテレビや映像の流れるデバイスなどを、トイレに置ける場所を作ってみるのはどうでしょうか?

また、トイレに入れたらシールなどお楽しみ(メリット)を用意してあげてください。

 

家でトイレを済ませてから出かけるなどの配慮を。あとは、娘さんの発達を待つ気持ちで

「どこのトイレでもできるようになって欲しい」という希望は、まだお子さんの発達具合から考えると難しいでしょう。

例えば、ある場所のトイレではできるようになった。でも、そのトイレが大丈夫だからと言ってすべてのトイレが大丈夫という訳にはいきません。それは「その場所のトイレは大丈夫だ」と安心できる様になったという事です。その「安心できる」場所を増やしていく他方法はありません。

そういう場合はお家でトイレを済ませてから出かけるなどの配慮が必要になります。お出かけ前のスケジュールを親子で一緒に作りましょう。その1連の流れの中にトイレに行くという項目を入れ、ルーティーンにするのも一つです。

 

一つ一つ外での大丈夫なトイレを増やして行きながら、その子の感情の分化が進み、理解できるようになるまで成長を待つ他方法はありません。

本人が成長し何かのきっかけで、トイレは排せつしたらレバーを引いて(おして)水を流すから大きな音が出る、公共のトイレなら色んな人が使う物なんだなど、トイレの概念をパターン化で理解できるようになり、大丈夫になる日がくる事はあるかもしれません。

その子の成長をいじる事はできません。大人がその子の発達を「待つ」しかない事もあります。

1年経って、保護者の付き添いがあればトイレに行けるように

このお子さんの場合は、3年生になる頃には保護者が扉の外に待っていてくれればトイレに一人で入ることができるようになりました。
一人っ子ということもあり、保護者が常に付き添えるのは不安の軽減になったようです。女の子なので、防犯の意味でも外出先では母親が付き添った方がよいのですけどね。

 

教えていただいたのは

藤原美保|健康運動指導士、介護福祉士、保育士 株式会社スプレンドーレ代表

発達障害のお子さんの運動指導の担当をきっかけに、彼らの身体使いの不器用さを目の当たりにし、何か手助けができないかと、感覚統合やコーディネーショントレーニングを学ぶ。その後、親の会から姿勢矯正指導を依頼され、定期的にクラスを開催。周囲の助けを受け、放課後等デイサービス施設「ルーチェ」を愛知県名古屋市に立ち上げ現在に至る。著書に『発達障害の女の子のお母さんが、早めにしっておきたい47のルール』(健康ジャーナル社)『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること』(PHP研究所)がある。

イラスト/本田 亮

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