遂に人気シリーズ最新作にして最終章となる2部作の第1弾『るろうに剣心 最終章 The Final』が4月23日(金)より公開されました。原作コミックやアニメファンはもとより、映画から入ったファンの方々からも愛されてきた「るろ剣」ですが、まさに最後を締めくくるにふさわしいシリーズの集大成的作品となりました。
これまでにも、あまた溢れる人気コミックが実写映画化されてきましたが、「るろ剣」シリーズは、主演の佐藤健をはじめとしたキャスティングから、アクション、人間ドラマなど、隅々に至るまで行き届きつつ、興行面でも大成功した稀有な作品です。また、1作目から日本だけでなく世界を見据えていた本シリーズは、北米、イギリス、香港、韓国、台湾、フィリピンなど、ヨーロッパやアジア諸国を含む100 ヶ国以上で配給され、世界で50以上の国際映画祭にも出品されて、大きな反響を呼びました。
今回公開された『るろうに剣心 最終章 The Final』では、佐藤さん演じる主人公・緋村剣心と、自身の顔にある十字傷の謎を知る上海マフィアの頭目、雪代縁(新田真剣佑)との死闘が描かれます。まさに相手にとって不足はなし。驚異的な身体能力を持つ佐藤さんと新田さんが相まみえるシーンは、本作のハイライトとなりますが、その激闘シーンが、切ない愛と葛藤のドラマに裏付けられたものであるという点が、本シリーズの真骨頂だと思いました。
佐藤健、武井咲から江口洋介まで、オールスターキャストにうなる
泣いても笑っても、本作と『るろうに剣心 最終章 The Beginning』(6月4日公開)で「るろ剣」の実写映画は最後となりますが、だからこそ佐藤さんはもちろん、武井咲、青木崇高、蒼井優、伊勢谷友介、土屋太鳳、江口洋介というシリーズを彩ってきたレギュラー陣が集結し、それぞれの見せ場で輝きを見せます。
通常、下手に欲張って詰め込みすぎると、ざっくりとしたダイジェスト版になってしまいますが、大友監督はヒットメーカーにして、アクションと共に丁寧な人間ドラマにも定評がある“二刀流”の監督なので、全体的な配分も考えたうえで、それぞれのキャラクターの旨みを見事に切り取っています。自身の監督作では、基本的に共同脚本を手掛け、ストーリーにも細かく気を配りますが、まさに今回はそのスキルが最大限に生かされた気がします。
また、見ていてそれぞれのキャストが、大友監督の士気を受け、魂を込めた熱演をしているのが伝わってきます。さらに、ある大物俳優のサプライズ登場もあり、そのシーンでは「そうこなくっちゃ!」と拍手をしたくなりました。ファンの心を鷲づかみしていく点はさすがのひと言に尽きますが、最終章で初登場するキャラクターも適材適所なキャスティングとなっていて、オールスター映画ならではの醍醐味が詰まった映画となりました。
佐藤健の円熟味と「るろ剣」シリーズの根底にある壮大な愛に感動
シリーズを通して剣心役を務めてきた佐藤さんは、本作の上映会での舞台挨拶で「22歳の時にこの役、この作品と出会えなかったら、いまの僕はいません」と特別な想いを口にし「こんな作品に出会えることって普通にあることではないと思っています。役者としても幸運でした」と語っていましたが、確かに佐藤さんのキャリアにおいて燦然と輝く作品になったことは間違いないです。
そういう意味でいえば、本作と待機中の『るろうに剣心 最終章 The Beginning』は、これまで研鑽を積んできた今の佐藤さんならではの円熟味を感じさせる1本となった気がします。剣心といえば、かつて「人斬り抜刀斎」として数多くの人々を殺めてきた刺客でありながら、流浪人となり「不殺(ころさず)の誓い」を掲げ、人を斬れない“逆刃刀”を携えています。
そこに至るまでに壮絶な過去があったことが、最終章の2作を通して明かされます。そして「るろうに剣心」シリーズの根底にあるのが、愛と贖罪だったことも、佐藤さんの静かな哀しみを称えた表情が雄弁に物語っていきます。いうなれば、たとえ大きな過ちを犯した人も、愛を知り、愛の力で導かれていけば、きっといつかは再生できるんだという深い愛の物語なんだと、改めて心に染みました。
ということで、まだまだコロナ禍ではありますが、コロナ禍ですが、感染対策を万全にして、できれば親子で観ていただきたいですし、4月30日(金)21時より「金曜ロードショー」で放映されるシリーズ第1作『るろうに剣心』(12)もぜひご覧いただきたいです。
原作:和月伸宏「るろうに剣心−明治剣客浪漫譚-」(集英社ジャンプ コミックス刊) 監督・脚本:大友啓史
出演:佐藤健、武井咲、新田真剣佑、青木崇高、蒼井優、伊勢谷友介、土屋太鳳、有村架純、江口洋介…ほか
公式HP:rurouni-kenshin.jp
文/山崎伸子
©和月伸宏/集英社 ©2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会