ワニは心の中で生きている。新キャラ登場でさらに深みが出た『100⽇間⽣きたワニ』

©2021「100⽇間⽣きたワニ」製作委員会

コロナ禍で公開が延期されていた『100⽇間⽣きたワニ』が、本日7⽉9⽇より公開されました。これは、Twitterで話題を呼んだきくちゆうきの4コマ漫画「100⽇後に死ぬワニ」をアニメーション映画化したものですが、もともとのタイトルに入っていた「死」ではなく「生」を打ち出したことで、原作が持つメッセージ性がより強く打ち出された気がします。

©2021「100⽇間⽣きたワニ」製作委員会

桜が満開の3⽉、みんなで約束したお花⾒の場に、主人公であるワニの姿はありません。そう、彼はこの日、あることがきっかけで天へ召されたようです。映画はそこから時間を100⽇前に戻し、ありし日のワニと仲間たちの日常を追うとともに、原作では描かれていない100⽇後の物語も映し出していきます。

監督を務めたのは、『カメラを止めるな!』(17)で大旋風を起こした上⽥慎⼀郎とふくだみゆき夫妻で、神⽊隆之介、中村倫也、⼭⽥裕貴、⽊村昴、新⽊優⼦、ファーストサマーウイカら豪華声優陣のアンサンブルも心地よいです。

映画ならではのオリジナルキャラクターのカエルが秀逸!

©2021「100⽇間⽣きたワニ」製作委員会

原作ものを映画化される際に、いろんなアレンジがされるのは世の常ですが、今回の場合は、オリジナルパートであるワニがいなくなってからの100⽇後の物語が加えられたことが、非常に感慨深いです。

まずは日々を丁寧に生き抜いたワニの人生が紹介され、そこが豊かに描かれるからこそ、彼がいなくなったあとの喪失感がより一層際立つという設計です。そう、大切な人がいなくなっても、残された人々の日常は時間の速度を緩めることなく進んでいく。そんな当たり前のことを実感させられます。

この100日後の物語に登場するのが、映画オリジナルキャラクターであるカエルで、⼭⽥裕貴が声を当てていますが、なんとも絶妙なんです。新しくこの街にやってきたカエルは、非常に脳天気なキャラクターで、よくいえば超フレンドリー、悪くいえば馴れ馴れしすぎる感じです。

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このカエルがワニの親友のネズミ(中村倫也)をはじめ、モグラ(⽊村昴)、センパイ(新⽊優⼦)、イヌ(ファーストサマーウイカ)など、ワニを取り巻く仲間たちと仲良くなりたいと思い、とことんオープンマインドで交流していきますが、なかなか上手くいきません。まさに人間関係の縮図を見ているようで、時には痛々しく思えるかも。

でもそこからが映画ならではの真骨頂で、その後の展開は見ていていろんな発見や気付きがあり、熱い感動がこみ上げていきます。ネタバレなので言及は避けますが、人(正確にいえば動物ですが)というのはプリズムのようで、見る角度によって色が変わるし、気が付かない一面もきっとあるのではないかと、つくづく考えてしまいます。

特にコロナ禍で、人と人とふれ合う時間が削られているぶん、相手の身になっていろんなことを想像することが本当に大切なんだと実感する今日この頃です。

何気ない日常がこれほどまで愛おしく思える人生の豊かさ

©2021「100⽇間⽣きたワニ」製作委員会

ワニの日常を見ていると、ささやかな日々の喜びがいかに大切なことかと、しみじみ思ってしまいます。例えば友人とラーメンを食べたり、お散歩をしたり、気になる人にときめいたりと、ほんのささいな“プチ幸せ”が、私たちの人生をどれだけ明るく照らしていることか、改めて実感させられます。

©2021「100⽇間⽣きたワニ」製作委員会

当たり前の生活が難しくなっている今だからこそ、ワニたちのほのぼのとした生活が、なんとも愛おしくなります。また、いきものがかりによる主題歌「TSUZUKU」も、より一層エモーショナルな余韻を醸し出します。

まだまだ外出もままならない今日この頃ですが、『100⽇間⽣きたワニ』には、今を生きる私たちに刺さるメッセージがたくさん詰まっています。子どもはもちろん、大人にも非常に響く映画だと思うので、機会があればぜひ親子でご覧ください。

『100⽇間⽣きたワニ』は7⽉9⽇(金)より全国公開中
原作:きくちゆうき「100⽇後に死ぬワニ」監督・脚本:上⽥慎⼀郎、ふくだみゆき
声の出演:神⽊隆之介、中村倫也、⽊村昴、新⽊優⼦/ファーストサマーウイカ、清⽔くるみ、Kaito、 池⾕のぶえ、杉⽥智和/⼭⽥裕貴…ほか
公式HP:https://100wani-movie.com/

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