運動が苦手な「スポーツ弱者」でも楽しめる!新感覚「ゆるスポーツ」に大人も子どももハマりたい

年齢・性別・運動神経に関わらず、誰もが楽しめる新スポーツを掲げる「ゆるスポーツ」。その成り立ちや面白い競技のルール、コロナ禍におけるオンラインでの挑戦について、「世界ゆるスポーツ協会」の事務局長・萩原拓也さんにお話を伺いました。

答えてくれたのは…萩原拓也さん(一般社団法人世界ゆるスポーツ協会理事・事務局長)

「ゆるスポーツは『小学一年生』’20年9月号で紹介されたこともあるんですよ」(萩原さん)

世の中の半分が「スポーツ弱者」。それでも楽しめるのが「ゆるスポーツ」

−−スポーツが苦手な人でも楽しめるものとして考案されたのが「ゆるスポーツ」なんですね。

はい。スポーツって、ポジティブな効果がいっぱいありますよね。定期的に体を動かすことによって健康になるし、ストレス発散にもなる。友達ができるし、知らない人と仲良くできる…。

それにもかかわらず、日本の成人の運動実施率は約半分です。ポジティブな効果があるスポーツを成人の半分がやってないというのは、すごくもったいないですよね。

スポーツをやらないという人に聞いてみると、やらないのには物理的な理由や身体的理由、そしてスポーツへの苦手意識といった心理的な理由がありました。こういった理由を持った人達を、ゆるスポーツ協会は「スポーツ弱者」と定義しています。

「スポーツ弱者」が世の中の半分もいるって、ちょっとおかしいですよね。そこで僕たちは、これってスポーツ弱者が悪いんじゃなくて、「その人達ができるスポーツがない」のが悪いんじゃないか、と考えたんです。

ないのであればつくってしまえばいいということで、2015年に発足したのが「ゆるスポーツ協会」。そこで考案しているのが、年齢・性別・運動神経に関わらず、誰もが楽しめる新しいスポーツ、「ゆるスポーツ」なんです。

「イモムシラグビー」「ハンぎょボール」 強いだけでは勝てない仕組みを作る

−−代表的な「ゆるスポーツ」について教えてください。

代表的なものだと、「イモムシラグビー」があります。その名の通り、専用の芋虫ウェアを装着し、芋虫になりきってプレーするラグビーです。移動方法は、這ってほふく前進か、転がるかの二択。「這う」という他のスポーツであまり行わない動きが多いので、思いがけない人が活躍したりします。

「ハンぎょボール」は、ハンドボールのルールに、脇にブリのぬいぐるみを抱えるっていう要素を入れたもの。ブリは出世魚なので4種類あって、ゴールするたびにブリが成長していきます。最後は100センチ超えたブリになるんですけど、これがかなり抱えると邪魔で、さらにこの最終段階まで進むと、ゴールしてもそれ以上は成長しないというシステムです。

さらに、一段階目のブリで1点、二段階目は4点、三段階目は6点、最終段階は7点と得点を割り振っておいて、最後にそれを加点します。ひとりがたくさん点を取るより、メンバーが1点ずつ取ったほうがチーム合計得点が高くなるようにという設定にしています。

普通のラグビーやハンドボールだったら、うまい子ばかりが活躍して、得点を決めるじゃないですか。ゆるスポーツのルールだと、上手な人でも思う通りに動けなかったり、点を取れば取るほどプレーしにくくなります。ひとりの力では勝てないとなると、どうやったら勝てるかみんなで考えるようになる。これがゆるスポーツのおもしろいところです。

 

「ベビーバスケ」「ブラックホール卓球」 ミスしても笑える仕掛けを作る

ゆるスポーツでは、「ミスをしても笑えるようなしかけ」も作るようにしています。たとえば「ベビーバスケ」というスポーツでは、激しく動かすと大声で泣き出してしまう、特殊なボールを使います。強いパスを投げたり、ボールを強く触ると、泣いちゃうんです。泣いたら相手ボールになるから、泣かないように優しくパスして、そっと運ばないといけないんです。

泣かせちゃうこと自体もおもしろいから、失敗しても楽しめますよね。他にもトラベリング(ボールを持ったプレイヤーが4歩以上歩くこと)を「子煩悩」、連続して3秒以上ボールを持ち続けることを「過保護」と呼んでいます。反則なんだけど、「過保護!」なんて声がかかると、おのずと笑いが生まれたりします。

穴の空いたラケットを使った「ブラックホール卓球」というのもあります。点を重ねると真ん中に空いた穴が大きくなってくるので、どんな実力の人同士がやっても結果的にゲームが競ってくる設定にしています。

それにプラスして、真ん中の穴をボールが通ると、自分たちの失点にはなるんですけど、周りから「ナイスホール」と声をかけてもらえるんです。失敗だけど「ナイスホール」。

ネガティブと捉えがちな失点やミスを、ポジティブな笑いに還元することも、ゆるスポーツの仕掛けとして用意しています。

コロナ禍でも楽しめる「ARゆるスポーツ」も始動

ーーゆるスポーツの、コロナ禍における現状はいかがですか?

リアルなイベント開催はやはり難しくなっていて、毎年年に1回「ゆるスポーツランド」というイベントを開催していたんですが、今年は実施を見送りになりました。

ただ、僕たちはスポーツをつくることで社会課題を解決していくことを目的にしていて、コロナも大きな社会課題のひとつと捉えています。コロナ禍、ステイホームの時期において何かできるものがないかと考えた結果、オンライン会議ツールを使った「ARゆるスポーツ」というものを作りました。

たとえばこれは、眉毛を動かした数を競う「まゆげリフティング」。顔の筋肉は30種類以上あるので、その筋肉を動かすことも立派なスポーツです。コミュニケーションも活性化するし、ストレス発散にもなるといった意味でも、これはスポーツとしての効果がきちんと出ていると思っています。

他にもたくさんの種類があるんですが、これを使って先日は、シンガポールと日本で対戦したりしました。他には、介護施設。コロナ禍で出入りが厳しくなっているんですが、施設同士で対抗戦をやったりして、交流してもらったりしています。

面白くないなら、自分で新しいルールを作ればいい

今実験的にやっているのが、「スポーツを作るワークショップ」です。中学生や高校生に、実際に自分たちで新しいスポーツを考えてもらうんです。

学校現場もそうだし、会社での人間関係にしてもそうなんですけど、誰かにはまらなかったり、面白くないんだったら、新しいルールを作っちゃおうよ、というふうに考えてもらいたい。ちょっと何かを変えてみたり、視点を変えるだけで環境を少しでもよくできるのであれば、みんながすごく生きやすくなりますよね。

「ゆるスポーツ」を普及して世界大会を目指したいわけではなくて(笑)。大切なのは、ゆるスポーツという事例を通して、こういった考え方そのものを発信していくことだと思っています。

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お話を伺ったのは

一般社団法人世界ゆるスポーツ協会理事・事務局長
萩原拓也(はぎわら・たくや)

システム開発会社、スポーツIT会社を経て2018年スポーツマネジメント会社入社。 スポーツ専門のシステム開発やコンサルタントとして活動する傍ら、友人であり代表理事でもある澤田智洋さんと2015年に世界ゆるスポーツ協会を設立、普及に努めている。https://yurusports.com/

 

写真提供/一般社団法人世界ゆるスポーツ協会 文・構成/五十嵐ミワ

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