意表を突く脚本の妙にファン感嘆！『コンフィデンスマンJP 英雄編』が最高傑作なワケ

シリーズ最高傑作と呼び声が高い『コンフィデンスマンJP　英雄編』

ダイナミックかつ痛快なコンゲームを描く人気シリーズ最新作『コンフィデンスマンJP　英雄編』が、1月14日（金）より全国公開されました。舞台は風光明媚な世界遺産の都市、マルタ島のヴァレッタ。ひねりにひねった脚本にうなる娯楽映画ですが、コロナ禍で海外旅行が制限されている今、開放感あふれるリゾート気分が味わえることもうれしい限りです。

“コンフィデンスマン”とは、欲望にまみれた人間たちから大金を騙し取る“信用詐欺師”のこと。コンフィデンスウーマンのダー子（長澤まさみ）、情にもろいボクちゃん（東出昌大）、百戦錬磨のベテランのリチャード（小日向文世）は、これまで3人で結託し、鮮やかな手口でお宝を手にしてきましたが、今回は少し勝手が違う展開となります。

当代随一の腕を持つコンフィデンスマンによって、密かに受け継がれたきた〈ツチノコ〉の称号。ある日、“英雄”と謳われた3代目のツチノコ（角野卓造）が死去します。彼の元で、詐欺の腕を磨いたダー子、ボクちゃん、リチャードは、4代目のツチノコの称号を懸けて、騙し合いの真剣勝負を始めますが……!？。

キャスト陣を悩ませた緻密な脚本がアッパレ！

「コンフィデンスマンJP」シリーズは、どんでん返しがあることは百も承知のうえで、引っかかるものか！と気合十分に臨みますが、毎回気持ち良いくらいあっさりと騙されてしまいます（苦笑）。特に今回は「そう来たか！」とうなり、心のなかで「完敗！」と頭を下げました。

全シリーズを手掛けているのは、人気脚本家・古沢良太。「リーガルハイ」シリーズや映画『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズなどで知られる古沢さんは、今最も脂がのっている売れっ子で、2023年の大河ドラマ「どうする家康」の脚本も決定しています。

古沢さんは本シリーズにおいて、時間軸を巻き戻す手法をよく用いますが、今回は特に緻密な構造になっているため、キャスト陣もそれを読み取くのに苦労したようです。でも、そこが本作の醍醐味でもあり、五十嵐役の小手伸也によると「僕はちょっと混乱したんですが、映画になった作品を観たら、恐ろしいほど分かりやすかったです」と感心していましたが、本編を観ると大いに納得します。

シリーズのファン目線でいえば、コンフィデンスマン誕生の秘話が明かされるので注目してほしいですし、ロマンス編でも話題となったダー子とボクちゃんのラブの行方も気になるところでしょう。さらに、これまでにないリチャードのクールさにしびれます。小日向さんがイベントに登壇する度に「リチャードがカッコイイ！」と自画自賛し、笑いをとっていますが、確かに今回は、ベテランならではのミステリアスな凄みを発揮しています。

また、チームとしての結束力が強かったダー子たち3人が、お互いに罠を仕掛けていくという心理戦の面白さが、これまでにない見どころかと。特に感心したのは、三者三様の行動を取る3人の意外な一面を引き出しつつ、あくまでも“○○らしさ”を深堀りしている点です。そこは脚本の妙味で、最後の最後に、キャラクターの魅力がさらにダダ漏れしますので、お楽しみに。

おなじみの人気キャラクターの活躍にファンは胸アツ

これまでのシリーズと同様に、本作でも、オールスターキャストの顔ぶれが集結。シリーズ初参加の松重豊、瀬戸康史、城田優、生田絵梨花らをはじめ、江口洋介、広末涼子、織田梨沙、関水渚ほかおなじみのキャスト陣が、それぞれにディープなキャラクターに扮し、愉快な掛け合いを繰り広げます。

舞台がマルタ島ということで、ダー子たちの前に立ちはだかる強敵、マルセル真梨邑役の瀬戸さんは、インターポール（国際刑事警察機構）のスーパーエリートという役柄のため、英語台詞にトライ。腹に一物ありというニヒルさにもしびれます。

そして、お宝の持ち主である大富豪、ジェラール・ゴンザレス役の城田さんは、これ以上にないキャスティングかと。スペイン人の母親を持つ城田さんにとっては、英語とスペイン語オンリーの役柄も見事にこなせたようですし、ハーフならではの彫の深い顔立ちもゴンザレス役に説得力を与えました。

加えて、その内縁の妻である畠山麗奈役の生田さんは、乃木坂46を卒業後、女優としても熱い視線を浴びていますが、今回はセクシーな魔性の女役で新境地を開拓。それぞれ適材適所なキャスティングがすばらしいです。

長澤さんがワールドプレミアで「おなじみのキャラクターたちが、この映画のなかにちゃんといます」と言っていましたが、これまでシリーズやキャスト陣を愛してきたファンの方にとっては、うれしいサプライズもあり、かなり胸アツでしょう。

そして何よりも、すべてのパズルが美しく完成する結末に、心から拍手を贈りたくなること請け合いです。映画が届けてくれるのは、大きな希望や飽くなき挑戦をしていくパワーです。家族で観たら、大いに盛り上がれますし、私自身もシリーズ最高傑作に仕上がったと自信を持ってオススメしたい1作です。

文／山崎伸子

©2022「コンフィデンスマンJP」製作委員会