「受給者証」取得のメリットは?利用料の負担が減ることも!【発達障害の子育て情報2】

小学校に就学後の子どもたちが放課後に通所できる「放課後等デイサービス」などの利用料が1割負担になるなどのメリットがある「受給者証」。

障害者手帳が取得できないくても、「受給者証」は取得できるのでしょうか? 発達障害や不登校の子どもたちのための個別学習塾「東京未来大学こどもみらい園」の斉藤幸枝先生にお話を伺いました。

療育施設や通所施設に通うためには「受給者証」の取得を

障害者手帳を取得するには、医師の診断書が必要で、障害の程度によっては手帳が発行されません。また、気持ち的に手帳をもらうのに抵抗があり、申請をしていないという場合もあるでしょう。そういうご家庭でも、取得をおすすめしたいのが「受給者証」です。「受給者証」の取得にも、医師の診断書は必要です。障害の程度が軽くて手帳は取得できなくても、「受給者証」は取得できることがあります。

申請方法は、各自治体によって異なりますが、福祉事務所や障害福祉担当の窓口で申請します。「受給者証」には下の3つの種類があります。

1「自立支援医療受給者証」の支援内容

精神医療を継続的に受ける人の医療費を公費で一部負担。

対象:統合失調症、気分障害、知的障害、心理的発達の障害、そのほかの者、または精神医療に一定以上の経験を有する医師が集中・継続的な医療を要すると判断した者

*精神障害者保健福祉手帳を持っているか、または精神障害に関する診断書が必要となります

*地域によっては未就学児、または義務教育の期間(中学卒業まで)、医療費が免除になるので、その場合は免除の期間が終了するときに申請するといいい

2「日中一時支援受給者証」の支援内容

日中一時支援事業=知的障害者、障害児のショートステイ(日中預かり)

  • 日中に障害のある子どもの世話をできないときに、一時的に見守りなどを行う
  • 障害のある子を育てる家族の就労支援
  • 障害のある子を日常的に介護している家族の一時的な休息を図る

*地域生活支援事業(市町村が主体となって実施する事業)のため、実施していない地域もあります。

*利用料の負担額の割合も、市町村により異なります。

3「障害児(通所・入所)受給者証」の支援内容

障害児通所支援

  • 児童発達支援‥‥障害のある未就学の児童に対して、生活能力の向上に必要な訓練、社会との交流の促進などを行う
  • 医療型児童発達支援‥‥上肢、下肢または体幹の機能の障害がある児童に対して、発達支援・治療を行う
  • 放課後等デイサービス‥‥6〜18歳の就学している障害のある児童に対して、生活能力も向上に必要な訓練・社会との交流促進などを行う
  • 保育所等訪問支援‥‥保育園・幼稚園に通っている障害児に対して、集団生活への適応のための支援を行う

障害児入所支援

  • 福祉型障害児入所施設‥‥介護などの福祉サービスを行う
  • 医療型障害児入所施設‥‥福祉サービスに加えて、治療も合わせて行う

 

医療費負担を軽減する「自立支援医療受給者証」

「自立支援医療受給者証」は精神疾患の治療の通院や医療費を負担してくれる制度です。発達障害のなかでもADHDには薬が効く場合もあり、その薬代が1割負担になるのは助かります。

「自立支援医療受給者証」のメリット

  • 外来診療、処方薬、病院での医療などの自己負担割合が原則1割になる(ただし、所得によって窓口負担の上限が定められている)

自立支援医療の負担上限月額は収入によって異なる

生活保護世帯→0円

市町村民税非課税世帯・本人収入80万円以下→2,500円

市町村民税非課税世帯・本人収入80万1円以上→5,000円

*市町村民生課税世帯の場合は条件が異なりますので、お問い合わせください。

保護者が支援を受けられる「日中一時支援受給者証」

保護者が仕事で障害のある子の面倒を見られないときに預けることができるタイムケア(就労支援)や、障害児を育てる家族の一時的な休息のためのレスパイトを受けることもできます。

障害のある子を育てることは大変なこと。家族だけで抱え込まず、福祉のサポートを受けて、保護者がときには休息をとり、リフレッシュすることも大切です。「日中一時支援受給者証」は、これらの日中一時預かりの費用が1割負担になるものです。

*日中一時支援を利用できる条件は市町村によって異なります。負担額が1割負担でない地域もあります。

「障害児(通所・入所)受給者証」があると、利用料が1割負担に

障害のあるお子さんが、生活訓練や交流促進などを受けられる施設は、未就学児だと「児童発達支援」、6〜18歳は「放課後等デイサービス」です。これらの施設は「障害児(通所・入所)受給者証」を持っていないと利用できません。利用料は本来1回5000〜1万円くらいですが、「障害児(通所・入所)受給者証」があると、1割負担ですむうえに、負担上限額が設定されます。これらの施設は、仮に全額自己負担しても利用できないので、まずは、役所に申請して、「障害児(通所・入所)受給者証」が交付されていることが条件となります。

「障害児(通所・入所)受給者証」のメリット

  • 各施設と契約ができる
  • 国と自治体から利用料が9割給付されるので、自己負担1割でサービスを受けられる
  • 前年度の所得により、ひと月の負担額の上限が決められるので、利用する日数が多くても、上限額以上の負担が発生しない
  • 自治体により独自の助成金がある場合もある

申請しないと福祉の支援は受けられません!

福祉サービスはふつうに暮らしていると気づかないものも多く、自分で見つけて申請しないといけません。幼稚園や保育園の先生たちも知らないことも多いので、気になることがあったら、各自治体の福祉窓口を訪ねた方がいいでしょう。乳幼児期であれば、3歳児健診や就学前健診などのタイミングに、医師や保健師などに相談するのでもいいでしょう。

利用できる制度には、地域差が大きいので、お住まいの自治体の福祉事務所や発達障害者支援センターなどに相談してみてください。「受給者証」の発行は、各地方自治体が管轄になるので、引っ越しをしたら、再度転居先の福祉窓口での申請が必要です。手続きを忘れないようにしましょう。

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お話を伺ったのは

斉藤幸枝先生

東京未来大学こどもみらい園園長。製薬会社の研究室勤務を経て公務員に転職。東京都足立区衛生試験所長をスタートに福祉や保健、総務等の管理職を経て、2007年には足立区初の女性教育長に就任。2011年に退任し現在に至る。

『発達障害 あんしん子育てガイド』小学館

発達障害の子に寄り添う子育てバイブルです

構成/江頭恵子

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