子どもは6歳から犯罪被害にあいやすくなる!犯罪にある2つの前兆とは?【安全教育のプロに聞く】

入学、進学を機に気持ちも新たになる4月。特にこの春小学校に入学したお子さんの親御さんは、子どもの新しい環境での生活に、期待もありつつ、不安もいっぱい抱えているのではないでしょうか。実は小学校入学のタイミングは、子どもが急激に犯罪被害にあいやすくなるタイミングでもあります。この機会に親が知っておくべき防犯意識と安全教育について、犯罪から子どもの身を守る安全教育の専門家、NPO法人体験型安全教育支援機構代表理事の清永奈穂先生に、お話を伺いました。

小学校入学のタイミングで、子どもは急激に犯罪被害にあいやすくなる!

刑法犯の罪種別年齢別被害認知件数の令和2年のデータによると、0歳から12歳までの子どもが被害にあった犯罪の認知件数は、8788件と言われています。その中でも、0歳から5歳の子どもが被害にあった件数が751件であるのに対し、6歳から12歳までの子どもは、一気にその10倍以上の8037件まで増えているのです。

以下は、ここ数年に小学生が被害にあった、実際の事件です。

2014年9月 小学1年生の女の子が、男に「絵のモデルになってほしい」と言って自宅に誘い入れて殺害された。

2017年3月 小学3年生の女の子が登校時に連れ去られ、殺害された。犯人として逮捕されたのは面識のあった男。

2018年5月 小学2年生の女の子が下校時に男に連れ去られ、殺害された。

このような大変悪質な事件が大きく取り上げられましたが、もっと軽微な犯罪であれば、地域や性別問わず、全国の至る所で子どもが犯罪に巻き込まれています。

このことから、6歳という小学校入学のタイミングで、子どもが急激に犯罪被害にあいやすくなる現実がわかります。5歳までは親と一緒に登園していた子どもも、6歳で小学生になると、1人で登校するようになります。親は、入学を機に、子どもが少しでも自分で自分の身を守れる方法を身につけさせることが求められます。

犯罪には、2つの前兆があります。親は子どもの学区や通学路の情報をチェックしましょう

同時に、大人が犯罪の前兆を見逃さないことも大切です。

犯罪には2つの前兆があります。

1 犯罪を起こそうとしている本人が起こす前兆

うろうろしたり、子どもの後をつけたり、車で待ち伏せしたりといった、犯罪のための下見をする行動が例に挙げられます。

2 色々な犯罪がその地域に増えているという前兆

どろぼうやひったくりなど、罪種は違うけれど、犯罪者が入りやすい隙間が地域に生じていることを示す前兆です。そういった犯罪の入りやすさができてしまっていると、子どもが巻き込まれる犯罪も起こりやすくなっている可能性があります。

見過ごしてしまうこともあるとは思いますが、特に子どもの学区や通学路には注意して、何か気になることがあれば子どもや周りの大人と情報共有しておきましょう。

マスクが当たり前のコロナ禍で、犯罪傾向に変化が!

ここ2年くらいのコロナ禍においては、子どもが巻き込まれる犯罪にも特徴的な傾向が見られるようになりました。

感染症予防の観点から、子どもたちもあまり外に出なくなりました。そして、休校や短縮授業などの影響で、これまで通りの決まった時間に同じ道を通らないことも多くなりました。

チャンスが減っている分、強引な手段にでる犯人が増えている

すると、犯罪を起こそうと考える人にとっては、「1回のチャンスを逃したくない」という思いが強くなるのです。

その結果、これまでに比べていきなり強引な手段に出ることが多くなっています。目を付けた子どもにつきまとい、1度のチャンスで何としても目的を達成しようと、家の中まで入ってくることもあったようです。そして、マスクをしていて顔が隠れることも、犯罪者にとっては有利な状況です。

マスクで顔がわからず、地域の見守りも停滞

また、人々の感染予防意識がもたらした、地域による子どもの見守り体制への影響もあります。地域の人たちも子どもからの感染を警戒しているため、あまり近づこうとしなかったり、声をかけづらくなったりしています。

子どもからしても、これまでのようにあいさつをしない方が良いと思ってしまう傾向がありますし、マスクをしていることで、相手がどんな人かわかりづらくもなりました。このような事情から、地域の見守り体制は、コロナ禍に入ってから停滞しているように思います。

ですが、このような状況だからこそ、マスクをしていても、顔や口以外から善意が見えるコミュニケーションをしていくことが求められています。子どもを見守る大人たちは、口元が見えなくても手ぶりや目元などで善意を示し、安心できる地域のコミュニティを作っていきたいですね。

2年生、3年生も注意が必要!なぜなら…

この春小学1年生になった子どもだけでなく、実はコロナが流行り出してからの時期に小学校に入学したお子さんである、今の2年生や3年生も、注意が必要なのです。

この学年の子どもたちは、入学したばかりの4月・5月に、みんなで一緒に帰る練習をきちんとできなかったのではないでしょうか?そのため、白線の内側をまっすぐ歩く、寄り道をしない、などの基本的な通学マナーが学べていないかもしれません。

他にも、防犯ブザーを鳴らすなどの、自分の身を守るための「安全基礎体力」ができていない可能性もあります。去年や一昨年のこの時期は、親もバタバタして大変な時期だったのではないでしょうか?この機会にぜひ、改めて子どもの通学路を一緒に歩き、通学マナーや安全意識の確認をしてみてください。

「おさんぽマップ」作りを!子どもと一緒に通学路を確認してください

新一年生だけでなく、既に就学しているお子さんにも、学年が上がったという気持ちも新たになったこのタイミングでぜひやって頂きたいことがあります。それは、子どもと一緒に親も歩いて、通学路の確認をすることです。

よく通る道だと思っていても、子どもにとってはいつもお母さんの自転車の後ろや車に乗ってしか通っていない道だった、ということはありませんか?自転車の後ろの子ども用シートだと、子どもが歩いた時の視界とは高さも見え方も違います。スピード感も違います。そうすると、いざ1人で歩こうとしても、歩けない子もいるのです。

ぜひ、親が子どもと一緒に歩いて「おさんぽマップ」を作ってみて下さい。

「おさんぽマップ」の作り方

『いやです、だめです、いきません』(清永奈穂・著/岩崎書店)より

1 自分の家と小学校を書き、線でむすんで「通学路」にします。

2 「見守ってくれる人のいる場所」を書き込んでいきます。

例えば、親子で歩いた時にあいさつした、地域のお店の人や、信頼できる顔見知り関係のご近所さん、おまわりさんがいる交番など、子どもが安心できる人や場所です。

3 空き家や、公園の茂みなど、「あぶない場所」も書き込んでいきます。

あぶない場所とは犯罪がやりやすい場所。「ひまわり」で覚えましょう

「あぶない場所」とはどんな所なのでしょうか?

犯罪を起こす可能性がある人は、「やりやすいと思った時や場所」で子どもを襲います。ここで言う「やりやすい」とは、その子やその場所に近づきやすく、逃げやすく、直観的に「やりやすい場所だ」と感じやすい場所のことを指します。具体的には次の4つの条件の場所です。頭文字をとって「ひまわり」と覚えましょう。

『あぶないときは、いやです、だめです、いきません』(清永奈穂・著/岩崎書店)より

 

「ひまわり」があてはまる場所は特に、どうしてあぶないかを子どもと話しながら、一緒に歩いておきましょう。

親が積極的に地域になじむことが、子どもの安全を守ることにつながります

子どもに生きていく知恵として、もっと防犯の知識を知ってもらいたい。子どもが自分の身を守る術を身につけておくことは必要ですが、親自身にも子どもの安全を守るためにできることはあります。

それは、地域の見守り環境をつくっていくことです。まずは学校の保護者会など、子どもを通じた付き合いから始めて、負担のない範囲で構わないので、何気ない会話やあいさつから、親も積極的に地域になじんでいきましょう。

子どもがあいさつできる「安心安全な場所づくり」を

子どもにとって安心安全な場所があってこそ、あぶない場所や人を意識し、避けることができるのです。ですから、まずはあいさつできる人や家などがある、安心安全な場所づくりをしてあげてください。

そうしないと、子どもは誰も信用できず、不信感ばかりがつのってしまいます。子どもには、「あぶない人」を見極めるためにも、「あなたをあたたかく見守ってくれる大人がいるよ」ということを伝え、人を信頼する心も育んでいきましょう。

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「いやです、だめです、いきません」 親が教える 子どもを守る安全教育

 

あぶないときは いやです、だめです、いきません 子どもの身をまもるための本

 

清永奈穂/著 石塚ワカメ/絵 岩崎書店/刊

子ども自身が自分で危機をはねのける力をつけ、大人がそのサポートをしていくという「子ども主体」の安全教育を教えてくれます。ただ警戒するのではなく、子どもを守るためにどんなことに注意すべきかを伝えていく親子で楽しみながら意識を深めていける書籍と子ども自ら手に取って楽しみながら読める絵本。

 

教えてくれたのは

清永奈穂さん

 

NPO法人体験型安全教育支援機構代表理事。株式会社ステップ総合研究所所長。日本女子大学学術研究員。博士(教育学)。2000年にステップ総合研究所を設立。犯罪、いじめ、災害などから命を守るための研究に取り組み、大学などの研究員や政府、自治体等の委員会委員なども務める。各地の自治体、幼稚園、保育園、小学校などで独自の体験型安全教育を行っている。著書に『犯罪から園を守る・子どもと守る』(メイト)、『犯罪からの子どもの安全を科学する』(共著 ミネルヴァ書房)、『危険から身を守る 学校・通学路・遊び場・家』(監修/一部 岩崎書店)など。

取材・構成/佐藤麻貴 イラスト/石塚わかめ 写真(清永さん)/HARUKI

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