正直者たちの大奮闘が希望を与えてくれる
視聴者からの反響を受け、再放送もされている山下智久主演のNHKドラマ「正直不動産」(総合毎週火曜22時~)。不動産業界の舞台裏を描く本作には、目からウロコのトリビアが満載ですが、第4回はその極みで、まさかの切ないエピソードにも胸を打たれました。
主人公は、たたりに遭って以降、ウソがつけなくなった不動産屋の営業マン・永瀬財地(山下智久)。永瀬は、自分と同じくバカ正直さが取り柄である後輩の月下咲良(福原遥)と共に、今や正直さを武器にした営業マンとして奮闘しています。
でも、永瀬たちの誠実さは、回を追うごとに少しずつ周りの人たちの心を動かしていくようで。コロナ禍の今、こういう希望を与えてくれるドラマは実にウエルカムですが、前4回は特に涙腺を刺激される感動回となりました。
倉科カナが永瀬と対峙していく強敵・花澤役に
(以下、ネタバレを含みます)
この回では、永瀬が務める登坂不動産と、汚い手を使ってでも契約を取ろうとするライバル会社・ミネルヴァ不動産とが、分譲マンションの空き部屋を競い合って販売することに。永瀬は、給料アップのチャンスとばかりに奮い立ちますが、ミネルヴァ不動産の社員・花澤涼子(倉科カナ)もかなり強気で、なんと永瀬に堂々と宣戦布告をしていきます。
演じる倉科さんは、永瀬から部下の不正についてツッコまれても、まったくひるむことのない鋼鉄の女を演じ、存在感を発揮。彼女がいかに切れ者であるかは、鋭い眼差し1つで伝わってきます。
永瀬のライバルといえば、登坂不動産の同僚・桐山貴久(市原隼人)という好敵手がおりますが、ここへ来てまた、一筋縄ではいかない強敵が現る!ということで、一層ドラマを盛り上げてくれそうな予感!
結局、2社の売上げ合戦は、ミネルヴァ不動産に軍配が上がりましたが、根本には「正直者がバカを見ない」という精神が流れているドラマなので、ぜひ今後も“チーム永瀬”にエールを送っていきたいです。
事故物件のみにこだわる老女の言葉に涙
マンションの空き部屋争奪戦が繰り広げられるなか、永瀬と月下の前に現れたのが、「事故物件」にのみ住みたがるという奇妙な老女・節子(風吹ジュン)でした。いつもながら誠実に対応していく月下ですが、ネックとなるのは、節子の年齢です。ほとんどのマンションは高齢者お断りで、そもそも単身での引っ越し自体が難しいようです。
でも、なぜ節子は、事故物件ばかりを好むのでしょうか?そこには、なんとも切ない理由がありました。節子は夫を亡くしていて、一度だけ夫が夢枕に立ってくれたことがあるので、事故物件に住めば、再び夫に会えるのではないかと淡い期待を寄せているとのことでした。
なるほど、深い……(涙)。この言葉は月下だけではなく、永瀬の心にも刺さったようで、彼は節子に心から謝罪します。そう、永瀬は開眼しました。「どうでもいい物件なんてどこにもない。どんな家にもどんな部屋にも誰かの人生がそこにある」ということを。
節子はこう言いました。「その部屋で亡くなった誰かも、きっと誰かにとっては大切な人だったと思うの。だから私も事故物件を怖いと思わないの」
そして、永瀬が節子の話を受け、マンションの売り主に掛け合って、今後増えていくであろう高齢の入居者用に、人感センサーの設備などを提案した点もすばらしいなと感心した次第です。こういう令和の社会問題をしっかりと入れ込むところはさすがですね。
紆余曲折を経て、節子は無事に新居を決めることができたし、さらに節子の息子夫婦も近所のマンションを購入してくれることになり、永瀬にとっては起死回生の展開に。ああ良かった!これまでにない充実感や達成感を覚えた永瀬の表情がなんとも印象的でした。
迎える第5回では、再び永瀬と花澤が激突!また、月下は離ればなれとなっていた父・昌也(加藤雅也)と8年ぶりに再会しますが、ここでもひと悶着が起きそうな予感。次回もぜひお見逃しなく!
文/山崎伸子
「正直不動産」毎週火曜日、夜10時からNHK総合にて放送 再放送は毎週火曜日 午後3時10分~3時55分にNHK総合にて放送
見逃し配信はNHKプラスで!(放送後、最新話が公開されます)
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本書は、大人気漫画『正直不動産』で取り上げてきたテーマのうちの24テーマを、宅建業者のTwitter集団・「全宅ツイ」の各専門クラスターが数人ずつトーク形式で語る本です。