子どもを全肯定で育てたくなる!映画『さかなのこ』から感じる温かい子育て術

お魚博士として愛されているさかなクンは、一体どんな環境で育ち、どんな出会いを経てきたのでしょうか?そんなさかなクンの半生をひもとく珠玉の映画『さかなのこ』は、ファミリーで観てほしい感動作です。

のんがさかなクンに!「じぇじぇじぇ」から「ギョギョギョ」へ

©2022「さかなのこ」製作委員会

 

老若男女から愛されている“お魚博士”さかなクンの自伝的エッセイ「「さかなクンの一魚一会 ~まいにち夢中な人生!~」を、のん主演で映画化した『さかなのこ』が9月1日より公開されました。本作は、Hugkumファミリーに猛プッシュしたいすてきな1本に仕上がっています。

©2022「さかなのこ」製作委員会

 

さかなクンの物語なのに、なぜのんが主役なのか?と、不思議に思った方も多いのでは?そこは、『子供はわかってあげない』(21)など、ほのぼのとした作風でしっかりと人間ドラマを紡ぎあげる名手・沖田修一監督と、劇作家で演出家、小説家としての才能も発揮している前田司郎による共同脚本のなせる技!『横道世之介』(13)以来のタッグ作となった本作は、まさに令和4年公開にふさわしい多様性のテーマも盛り込んだ秀作となりました。

のんとさかなクンの名コンビぶりは、朝ドラ「あまちゃん」(13)での劇中劇として放送された子ども向け教育番組「みつけてこわそう」でも立証済み。この番組は東日本大震災後、「じぇじぇじぇのギョギョギョ」というタイトルに変更されましたが、まさにのんは、主演になるべくしてなった印象を受けました。また、さかなクンも、のん演じるミー坊の人生に大きな影響を与えるギョギョおじさん役で映画初出演を果たしています。

のんと共演したさかなクンが映画を観て号泣

©2022「さかなのこ」製作委員会

 

主人公のミー坊は、小さい頃からお魚が大好きな子どもでした。勉強はまったくできないけど、ミー坊の母ミチコは「勉強しなさい」とは一切言わないどころか、ミー坊の魚への探究心や好奇心を大切にして、常に優しく見守っていきます。

ある日、ギョギョおじさんと出会い、意気投合したミー坊。2人はある騒動を巻き起こしますが、そんなおじさんからもらったのが、のちにトレードマークとなる“ハコフグ帽子”でした。

©2022「さかなのこ」製作委員会

 

高校生になってもミー坊のお魚熱は加速し、母と暮らすアパートは水槽だらけに。また、学校で飼っていたカブトガニが日本初の人工孵化に成功し、脚光を浴びるなか、ミー坊は「お魚博士になりたい」と宣言します。

完成した映画を観たさかなクンは、「ワンシーンワンシーンでものすギョく感動してギョー泣(号泣)しました」と語っていましたが、実に心洗われる感動作となりました。

©2022「さかなのこ」製作委員会

 

まずは、俳優・アーティスト・映画監督として多才なのんが放つ透明感とみずみずしさが、さかなクンの分身ともいえるミー坊役にベストマッチ。また、井川遥が懐の深い母役を好演し、親子の絆をしっかりと体現しています。

©2022「さかなのこ」製作委員会

 

さらに隅々まで行き届いた豪華キャストにもご注目。ミー坊と交流していく幼馴染みの“狂犬”ことヒヨを演じる柳楽優弥、“総長”の磯村勇斗、“カミソリ籾”の岡山天音らが演じる不良たちや、夏帆が演じる幼馴染みのモモコなど、要所要所で繰り広げられるアンサンブル演技が見ものです。

加えて劇中では、活き活きとしたお魚たちの名脇役ぶりが最高です。沖田監督自身も演出しているうちに、魚の気持ちがわかるようになったそうで、画にはとても説得力があります。

子どもの個性を伸ばす子育て方針とは?

©2022「さかなのこ」製作委員会

 

魚類学者であり、メディアでも様々な形で活躍するさかなクンは、今やお茶の間の人気者ですが、本作でさかなクンが成功をつかむまでに至った半生を観れば、子どもを信じ、サポートしてきた母親の偉大さに感心させられます。

その子育て方法とは、子どもを信じて個性を全肯定していくというもので、ミチコの包容力や胆力は、海のように広いです。だからこそミー坊もいろんなことをポジティブに受け止め、好きなものにまっしぐらになれたのかなと。

子どもの可能性は無限大だなと改めて実感。きっと子どもがこの映画を観れば、「好きなことを追求していいんだ」という喜びや勇気、安心感をもらえますし、親世代の方が観ると、大いに学びや刺激をもらえそう。また、きっとさかなクンの生き方をまぶしく感じるのではないかと。

魚の世界はまさに多様性に富んでいますが、この物語の根底にもそのメッセージがしっかりと流れています。繰り返しますが、これぞ令和に観るべき1作だと思うので、ぜひ親子で楽しく観ていただきたいです。

文/山崎伸子

『さかなのこ』は9月1日(金)より公開中
原作:さかなクン「さかなクンの一魚一会 ~まいにち夢中な人生!~」(講談社刊)
監督・脚本:沖田修一 脚本:前田司郎
出演:のん、柳楽優弥、夏帆、磯村勇斗、岡山天音、三宅弘城、井川遥…ほか
公式HP:sakananoko.jp/

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