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自閉スペクトラム症の1年生。口ごたえや屁理屈がひどく、騒ぐと1時間以上収まりません。どうしたら…
自閉症スペクトラム症の小学校1年生の娘です。何事にも、いちいちごねる、口ごたえ、文句や屁理屈がひどく、課題に取り組ませるのにひと苦労です。
私が何か言うと「いやだいやだ」、「やりたくない」と言って大騒ぎして、泣いたりわめいたり、私に手を出す事もあります。一度騒ぐと1時間以上収まりません。私が逃げて部屋を出ても追いかけて来て騒ぎ、車の中に1時間近く閉じこもっていたこともあります。どう対応すればいいのでしょう?
切り替えの悪さと粘着性を特性としてもっている子。興奮する前に対処することがカギ
IQにはさほど問題が無いとされていて、認知は割と高めの自閉スペクトラムの1年生のお子さんです。
感情の凸凹は激しく、弁が立ちます。「どうして?」「なんでそれをしなくてはいけないの?」とよく聞いてくる子です。話し方もやや大人びており、大人の対応を予測しています。
今回のこのケースは、お母さんは彼女が撒いた地雷を踏んでしまい爆発している状態です。踏んでしまったら最後、彼女は興奮してしまいます。どんなお子さんでもそうですが、一旦興奮状態に入ると落ち着くまで聴覚情報は入りません。つまりこちらの言う事は彼女の耳には入らない状態なのです。
彼女の場合は切り替えの悪さや粘着性を特性として持っているので、一旦爆発すると切り替えに時間がかかります。結局今回のケースは拗らせてしまったために彼女が落ち着くまでお母さんは車の中で1時間以上閉じこもる事になってしまったのです。
ですから、そうなる前に手を打つ必要があります。
多くの場合このようなケースについて「なぜそうなったか?」を保護者に伺うと、「片づけるように言っただけ」とか「話していたら突然こうなった」等と答えるケースがとても多いのですが、実際にはその前に「何か」があります。
「問題行動の前の行動」がカギに
しかし、保護者の多くは気がつきません。なぜなら、保護者にとっては「暴れる」「暴力をふるう」「大声で叫ぶ」などの問題行動の印象の方が強くなってしまい、なぜそうなったか?その前の行動を意外と覚えていません。大体多くのケースが子どもの発信した言動に保護者が関わりすぎです。
ごね始めたときに、「どうするの?どうしたいの?」「やめるの?」など声掛けをして、子どもの癇癪に付き合ってしまう事が多いのです。そして、それがスイッチになっている事に気がついていません。これを回避するには、ごね始める前の環境や原因をその都度探り、手入れが必要になるのです。
じゃあ、こういう子どもがごねるのをどう防ぐのでしょうか?地雷を踏まずに適切な行動に導くためにはどう接すればいいのか?を一例をあげて説明いたします。
「トイレに行きたいけど、行かないとごねる」事例にどう対処したか
この子は、来所した際に「トイレ!トイレ!トイレ!先にトイレに行きたい!!」と叫びながら入口に荷物を放り投げ、靴もちらかして激しく入ってくるのが常でした。
排尿については医療機関にかかっており、特に問題がなかったようで、お母さんも本当にトイレに行きたいのかどうかわからないと言っていました。「大騒ぎして靴やカバン放り投げ、叫びながら走ってトイレに行く」というパターンを彼女は作っています。それに対して少しでも自分のパターンを壊す邪魔が入ろうものなら大げさにわめき、ごね始めます
行動を一つずつ挟んでルール化して実践
そこで、ロッカーに入ってからトイレに行くまでのスケジュールを作りました。
1.鞄を持ってロッカーに入る
2.鞄を自分のロッカーに入れる
3.鞄から自分のタオルを出す
4.トイレに行く
5.トイレから出て手を洗う
6.タオルで手を拭いてロッカーに戻る
この一連の流れをパターンにしていくことが目標です。つまり、来所してからトイレに行くまでにいくつかの行動を挟みこんでルール化していくわけです
まず、保護者にタオルを持たせるように伝えました。 「トイレに行きたい~~~」と叫んで大騒ぎして入ってきたときに 、まずは「トイレに行きたいのね」と声をかけると「うん」と答えます。 「わかった、じゃあ手を洗うからタオルを出そうか?」と言うと、「え~面倒くさいからやだ!!」と座り込みました。
自分の決めたパターンへのこだわりを一つずつ分解する
ここでわかるのは漏れてしまうような切羽詰まった状態ではないという事です。 「じゃ、どうする?手を洗わない?先生に貸してと言って借りる方法もあるよ」と一つ案を出します。 すると「面倒くさい!面倒くさい!」と座り込んで叫びます。
自分の決めたパターンにこだわっているという事です。 それなら時間をかけても大丈夫です。 なので、彼女が叫んでいる間は言う事に対して無視を始め、大人は身体を他に向けて他の事を始めます。 すると「トイレに行きたい!でもハンカチ出すの面倒くさい!!」とキーッっとなりながらも鞄からハンカチを出しはじめました。
「ロッカーから叫びながら走ってトイレに行く」という彼女のルールに対し、鞄をロッカーにしまい、鞄からタオルを出すという行動を挟み込みをして彼女の不適切な行動を一つ変えました。 落ち着いて行動してもらうには、行動を一つ一つ分解し、 適切な順番で動けるようにすることです。
子どもの「ごね」に振り回されるのではなく、行動を支援するパターンを作りましょう
半年ほど経つと「トイレ~」と入って来ますが、ちゃんと脱いだ靴を揃え、ロッカーに鞄を入れて、タオルを出し「先生、トイレに行きたいです」と、適切に大人に言ってからトイレに行く事が出来るようになりました。結果、安心材料が増えたせいかトイレの回数も減りました。
事業所の中では大きくごねる事はなくなり、自分が求められている事が何なのかを、わかりやすく視覚的に提示してあげる事で自分の要求を適切に大人に伝える事が出来る様になりました。
子どもの「ごね」に振り回されて付き合うより、行動を組み立て支援してあげる方がスムーズに動いてくれることが多いです。
日常生活においても、家庭の中で様々、彼女自身がパターンを決めている事があります。 そのパターンを崩されるとごねるのです。 一つずつ、行動を挟み込んでルール化を、彼女の決めたパターン自体を好ましい行動に変えていく必要があります。
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記事監修
健康運動指導士、介護福祉士、保育士、公認心理師。株式会社スプレンドーレ代表。
YouTubeで「子どもの対応おたすけチャンネルMamma mia」を配信中
イラスト/本田 亮