マンガ『ムーちゃんと手をつないで〜自閉症 の娘が教えてくれたこと〜』とは
自閉症の娘、睦ちゃん(ムーちゃん)との生活を描く、みなと鈴先生の作品。苦悩だけでなく、家族の絆や愛が溢れるあたたかいエピソードも子育て世代から人気で、秋田書店「エレガンスイブ」にて連載中です!
実話?
「ムーちゃんと手をつないで〜自閉症
-マンガにしようと思ったきっかけはなんですか?
みなと鈴先生 もともと少女漫画家として恋愛漫画やファミリーものを描いていたのですが、子育てのため引退していました。が、自身で自閉症育児をする中で、いつか自分の経験を描いて世の中の役に立ちたいという思いが強くなり、第二子が幼稚園に入ったタイミングで復帰しました。
最近、自閉症をテーマにした漫画はたくさんありますが、「自閉症の子どもを育てていてストーリー漫画を描ける」という人は少ないと思うので、私が描かねば、と。
ムーちゃんがうんちを食べてしまった!?「異食症」は治るの?
マンガの中では、さまざまな自閉症の症状が描かれています。中でも特に大変と感じた「異食症」について今回掘り下げてお話を伺いました。
【「異食症」とは】
異食症とは、食べ物以外のものを食べてしまうこと。小石や葉っぱ、枝や糞便など1ヶ月以上にわたって食べ物以外の栄養のないものを食べてしまう状態のことをいいます。はっきりとした理由はわかっていませんが、感覚にまつわる特性が関係していると言われています。
- ムーちゃんはどうやって対処して、乗り越えたのでしょうか?
みなと鈴先生 実は、乗り越えてはいないんですね。
健常児のお子さん(定型発達の子ども)だと幼稚園の年長さんくらいになると、何でもかんでも口に入れちゃうということはほぼなくなってくると思うんですが、異食症の場合は、そこまでの過程がすごく長いという感じなんです。
ムーちゃんの場合だと、頻度は減ってきているのですが、赤ちゃんの時からこの春中学を卒業するまでずーっと続いているという感じです。
前はなんでも口に入れてしまって、毛布の毛玉をちぎって口に入れてしまったり、電化製品やリモコンなど家中にあるものを口に入れてしまったり、ということもありました。今はだいぶ落ち着いてきているけれども、忘れた頃にポッと出てきます。大人になるまでにゼロにできるのかな?というところです。
なんとかして異食症を乗り越えなきゃという焦り方はしていないんですよね。
ただ、周囲のお母さんや先生方のお話を聞くと、ムーちゃんと同じでグラデーションのように次第におさまっていくお子さんが多いように感じたので、軽度のお子さんであれば成長と共に自然となくなっていくのだと思います。
とはいえ、中程度から重度だと小学校の高学年でも対処に苦労されているというお話も聞いたので、なかなか一発で乗り越えるような秘策はないと思っています。
-では、ムーちゃんの異食症への対応で変わった部分はありますか?
みなと鈴先生 異食症に限らずですが、一生懸命治そう、なくそうと思っていると、親の方が参ってしまうので、何か出てきたら対処しようというマインドになりました。ムーちゃんの場合、何かをしたら問題行動が消失したということはなかったからです。
今現在で言うと、ムーちゃんは入浴剤が好きで、お風呂の時間には、最初に30分程度ムーちゃん一人で遊ぶ時間があって、そのあと私自身も一緒に入ると言う流れがありました。ところが、ある時、お風呂に行ったら、入浴剤のパッケージをビリビリに破いて、それを口の中に入れてガムのように噛んでいた場面に遭遇したんです。
「あぁ、ちょっと困ったことやり出したな。これが面白くなっちゃったんだな」と思って、今度からはパッケージから出した状態の入浴剤を渡すようにして、パッケージをお風呂に持って行かせないようにしました。そうしたら今度は、入浴剤を口に入れるようになってしまったんです。入浴剤を砕いて、そのかけらを口に入れるようになっちゃったんですね。そうなったら、今度はお風呂場を開け放しておくようにして、できるだけ早く私も追いかけて入るようにしました。
みなと鈴先生 もう、当人が飽きるまで、その都度対処するしかないんですよね。飽きたらやらなくなるのですが、やらなくなってまた気を抜いたら、また別のことがパッと出てくるような感じです。もし、それがいつかなくなったら、「本当に終わった」ということなんだと思います。
なので、とにかく異食症などに関しては気長にやるしかないんですよね。魔法のように消し去るということは難しいので、自分のメンタルを保つことが大事な気がします。なんとかこれをやめさせなきゃと思うと、自分のメンタルが追い詰められちゃうじゃないですか。
気長に考えて、何か出てきたらその都度対処すればいいというマインドでいると、楽かなぁと思うんですけどね。私も何か起きたら、人に相談したりアドバイスをもらいながらその都度対処しています。問題行動は異食症だけでなく、髪の毛を抜いてしまう時などもありましたし、その都度対処するしかないと考えています。
一杯一杯になって、神経質になって、なんとかこれをやめさせなければならないと思い込んでいた時期は乗り越えたんだと思いますね。
ムーちゃんとの日々、後編はこちら
発達障害のお子さんがいる・いないではなく、ぜひ読んでほしい一冊
自閉症をマンガ『ムーちゃんと手をつないで〜自閉症の娘が教えてくれたこと〜』は、現在6巻まで発売しています。編集部のスタッフで2児の母でもあるAは、このマンガをインスタの広告で知り、試し読みの時点で気づいたら涙がポロポロ出ていたそう。その後、発達障害のお子さんがいる・いないではなく、子育て世代の親御さんにこのマンガをぜひ読んでほしいと企画会議で提案し、秋田書店さんに連絡をしたとか。マンガでは、発達障害のさまざまな豆知識も分かりやすく知ることができます。
『ムーちゃんと手をつないで〜自閉症の娘が教えてくれたこと〜』1巻
あいさつができず、パパもママも言えない1歳半の娘、ムーちゃん
第1巻をプレゼント!
HugKum編集部では、『ムーちゃんと手をつないで〜自閉症の娘が教えてくれたこと〜』1巻をプレゼントします!この機会にぜひ読んでみませんか。
また、みなと先生のTwitter(@karin_jeen)は、マンガの最新情報はもちろん、お母さん目線での日常のつぶやきも多くてとても親近感が湧きます! こちらもチェックしてみてくださいね!
お話を伺ったのは…
2月5日生まれのみずがめ座B型。埼玉県在住。
1995年ソニーマガジンズ「きみとぼく」よりデビュー。2006年コミックス「おねいちゃんといっしょ」(講談社刊)が第10回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に。
現在は自閉症の第1子と定型発達の第2子の2児を育てながら「ムーちゃんと手をつないで~自閉症の娘(キミ)が教えてくれた
Twitter @karin_jeen
取材・文/吉田萌美