自閉症の娘・ムーちゃんの子育てをマンガに。障害を受け入れられなかった夫が今はいちばんの理解者

自閉症の娘さんとの日常を描いたマンガ『ムーちゃんと手をつないで〜自閉症の娘が教えてくれたこと〜』の作者みなと鈴先生。前回の記事では、自閉症の症状の中でも特に大変な「異食症」について伺いました。今回は園に通い始めて大変だったことや幸せだったこと、ご主人が自閉症の子を受け入れられず離婚を考えるほど苦悩したことなどをみなと先生のマンガを交えてお届けします。

前回の記事はこちら

我が子はなんでも口に入れる「異食症」 うんちまでも!漫画家・みなと鈴先生が自閉症の娘、ムーちゃんとの日々を描きたかった理由
マンガ『ムーちゃんと手をつないで〜自閉症の娘が教えてくれたこと〜』とは 自閉症の娘、睦ちゃん(ムーちゃん)との生活を描く、みなと鈴先生の作...

園に通い出して苦労したことや嬉しかったことは?

ムーちゃんは、療育施設と幼稚園を併用して通っていました。幼稚園では、健常児と一緒に過ごし、マンガの中では多くの葛藤や苦悩が描かれていました。その反面、支えてくれるたくさんの人たちとの出会いもあったそうです。

幼稚園でお友だちに噛みついてしまったことも

- 一番印象的なできごと・エピソードはなんでしょうか?

みなと鈴先生 他のお子さんに噛みついてしまったというのが一番衝撃的でした。

自分の子どもが加害者になりうるということってあまり考えていなかったので、ショックが大きかったですね。マンガで描いたように、菓子折りや慰謝料を用意し、主人と父母参観でお詫びをしました。

※3巻P.109~P.110より
※3巻P.109~P.110より

― 親として苦労した点は?

みなと鈴先生 本人が一番大変だったとは思うのですが、親として一番大変だったことは「人間関係」ですね。幼稚園の場合は、やはり周りの健常児のお子さんたちとは違うので、漫画の中にも描いていますけれども、迷惑そうに言ってくる方もいらっしゃいましたし、親同士の付き合いが難しかったです。

周りのお母さんたちとは共通の話題もない

みなと鈴先生 健常児のお母さんであれば気にしなくていいところを私たちは気にしていかなきゃいけないし、他のお母さんたちも私に何を話していいかわからないという状態だったんじゃないかと……。そもそも子ども同士の付き合いが全くないので、お母さんたちと共通して話す内容もありません。親睦会は「できれば行きたくない」と正直負担に感じていました。

親として自分の子どもがどこで迷惑をかけているか分からない不安も

その一方で、自分の知らないところで自分の子どもが迷惑をかけてしまっているかもしれない不安もありました。逆に、自分が知らないところで仲良くしてくれる子どものお母さんがいるなら感謝の気持ちを伝えたいという面もありました。

先生から言われて嬉しかった言葉は

– 先生から言われて嬉しかった言葉を教えてください。

みなと鈴先生 「いつでも遊びにきてね」って言ってくださったりするんですよ。例えば、卒園した時には「また遊びにきてね」って送り出してくださったんです。引っ越しをしていたので二つの園に通っていたのですが、どちらも久しぶりに先生に会ったりした時にはそう言ってくれます。

実際に何度も行けるわけではありませんが、そう言ってくださる気持ちも嬉しいですし、相談できる場があるんだということへの安心感もあります。心を開いて相談できる人がいるということを再確認できるので、卒園して何年も経っていても、覚えていてくれるというのも嬉しいですね。

―卒園しても、先生たちは一緒にムーちゃんの成長を見守ってくれているということですね。

みなと鈴先生 今は直接的な交流が多いわけではありませんが、作品を読んでくださっていたり、SNSで繋がって応援してくれている先生もいます。

他に、幼稚園や療育園の先生ではありませんが、こっそり療育支援の先生をモデルにして描いたこともあって、「今回のマンガに私のこと描いてくれていたでしょ!」と見つけて喜んでくださったこともありました(笑)。

幼稚園や療育園、各種福祉サービスの先生方には本当に親切にしていただいたと思っています。幼稚園と揉めることも全くありませんでした。教育の方針とか子どもへの接し方の違いはあったけど、話をして理解を深めて交流していく中で、先生の思いが見えてきて、そういった部分を作中でも描きました。

「先生はお母さんのように叱れない」という言葉の真意

※4巻P.71~P.72より
※4巻P.71~P.72より

みなと鈴先生 マンガに登場する「先生はお母さんじゃないからあまり叱れない」という言葉。それも実際に療育園の先生から聞いた言葉です。

先生は、「お母さんにどんなに叱られても、子どもにとっては大好きなお母さんで、子どもがお母さんを嫌いになることはない。でも先生たちはお母さんじゃない。先生がキツく叱って園に来ることが苦痛になってしまってはいけないからお母さんみたいにキツく叱れないんですよ」とお話ししていました。

療育施設では、母子通園で先生たちとの交流の時間がたくさんあったからこそ、気づけたことも多くありましたね。

離婚を考えるほど苦悩した時期も

夫婦関係は、発達障害のお子さんがいる・いない関わらず、どの家庭でも悩むであろうテーマ。マンガの中では、パパはムーちゃんの障害についてなかなか受け入れられずにいます。ムーちゃんの子育てを共に行う中で、どのように夫婦が結束していったのかも伺いました。

-個人的には、パパのパンツの一連の事件が印象に残っています。あれは実話ですか?

みなと鈴先生 はい、実話です(笑)。

専業主婦だったので、家事をこなして当たり前というイメージがあったんでしょうね。子どもを世話しながら、家事をすることって本当に大変で、ましてや療育では心身ともに疲弊するし、家ではムーちゃんは一時も目を離せないので、落ち着いて家事をすることもできませんでした。

※2巻P.125~P.128より引用
※2巻P.125~P.128より引用

―マンガの中では、パパはムーちゃんの障害についてなかなか受け入れられず、最初は、その話題を避けるような雰囲気も描かれていましたよね。パパは子育てをしていく中でどんな気持ちの変化があったのでしょうか?

※1巻p.66~69より引用
※1巻p.66~69より引用

みなと鈴先生 障害が分かるということは、自分が思い描いていた理想の子育てや子どもの姿が打ち消されるということなんです。パパって、仕事に行ったりして子どもと接している時間が短い分、ママよりも障害受容に時間がかかってしまうんだと思うんですね。「そうか、自閉症なのか。じゃあ、これからどうしようか!」とパッと切り替えられる人って少ないと思います。

- 何かきっかけはあったのでしょうか?

みなと鈴先生 子どもが2人になったらどうしても親が2人でやらないと回らなくなってしまうので、自然と一緒に育児にも家事にも取り組むようになりました。また、実際に療育に参加したり、ムーちゃんの相手を1人ですることもあったので、やってみることで大変さをわかってくれたんだと思います。ケンカすることや衝突もありましたが、今は夫が一番の理解者です。

今、振り返ると、夫とケンカした時や生きるのが辛かった時に、結論や決断を急がなくてよかったなと思うときがたくさんあるんです。

なので、子育ても人間関係もすぐに白黒つけようとせず、長期的な視点を持って、人や物事の本質を見るようにすることが大切だなと感じています。HugKumユーザーのパパママも仮に失敗をしたと感じても、「自分をダメな親だ」なんてすぐに決めつけないでほしいと思います。子育て期間がかけがえのない良い思い出になるように、お子さんと手をつないで道草をするように過ごしていけたらいいですね。ここまでお付き合いくださりありがとうございました。

-たしかに子育ても、人間関係も、すぐに結論を出すことは禁物ですよね。「急いでは事を仕損じる」ということわざもありますものね。こちらこそ、今日はありがとうございました。

発達障害のお子さんがいる・いないではなく、ぜひ読んでほしい一冊

自閉症をマンガ『ムーちゃんと手をつないで〜自閉症の娘が教えてくれたこと〜』は、現在6巻まで発売しています。みなと先生のTwitter(@karin_jeen)は、マンガの最新情報はもちろん、ママ目線のつぶやきメッセージに胸を打つことも。こちらもチェックしてみて。

『ムーちゃんと手をつないで〜自閉症の娘が教えてくれたこと〜』1巻

あいさつができず、パパもママも言えない1歳半の娘、ムーちゃん。 そんなムーちゃんが「自閉症」かもしれないとわかって…!? 理解を示さない夫と一度はぎくしゃくしたけれど、それでも前を向いて、ムーちゃんとともに生きていく決意をした母親の彩。著者自身の体験をもとに綴る、自閉症の娘への愛がたっぷりつまった家族の物語です。

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マンガ『ムーちゃんと手をつないで〜自閉症の娘が教えてくれたこと〜』とは あいさつができず、パパもママも言えない1歳半の娘、ムーちゃん。そん...

お話を伺ったのは…

みなと鈴|漫画家

2月5日生まれのみずがめ座B型。埼玉県在住。

1995年ソニーマガジンズ「きみとぼく」よりデビュー。2006年コミックス「おねいちゃんといっしょ」(講談社刊)が第10回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に。

現在は自閉症の第1子と定型発達の第2子の2児を育てながら「ムーちゃんと手をつないで~自閉症の娘(キミ)が教えてくれたこと~」を秋田書店「エレガンスイブ」にて執筆中。

Twitter @karin_jeen

ブログ https://minatorin.com/

取材・文/吉田萌美

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