『まんじゅうこわい』はどんなお話? あらすじやおすすめの本を紹介【教養としての落語】

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『まんじゅうこわい』は有名な古典落語の演目の一つです。よく知られている話ではありますが、細部には詳しくないという方も多いはず。子どもにウケる定番落語なので、これを機会に親子でおさらいしてみましょう!

『まんじゅうこわい』とは

『まんじゅうこわい』とは「ここらで一杯お茶が怖い」のセリフが有名な、落語の演目の一つです。子ども向けに読みやすくアレンジされた絵本なども販売されているので、本屋や図書館で見かけた方もいるかもしれませんね。落語の前座でもよく行われてる演目です。

原話は、中国明(みん)『五雑俎(ござっそ)』や『笑府』にあると言われており、中国の笑い話が、上方で落語として発展したのち、明治末期に東京に伝わり、落語を代表する演目になったと言われています。

お話の概要は知らないけれど、「ここらで一杯お茶が怖い」のフレーズは、どこかで聞いたことがある方も多いのではないでしょうか? 本によって、登場人物の名前が「辰さん」「松さん」「名前がない」など異なる部分はありますが、全体のお話としては「好きなものを嫌いと言い、自分に嫌がらせをしようとした人たちに一杯くわせて、自分は好きなものを手に入れる」というストーリーです。

演者は、まんじゅうを「酒まんじゅう」「そばまんじゅう」「くりまんじゅう」など色々な種類のまんじゅうを言い立てるのが定番の型で、怖いはずのまんじゅうをおいしそうに食べる落語家の仕草が見どころ。

肩の凝らないお話なので、子どもが多い場所で演じられることも多いようです。

あらすじ

江戸時代は今の様な娯楽が少なかったので、集まってしゃべるのも一つの娯楽だったようです。町の若者が集い、自分たちの怖いものや、嫌いなものについて語り合っているところがお話の舞台。

みんな「蜘蛛が怖い」や「蛇が怖い」と話しているその中で、黙りこくっている男がいました。「何が怖いか」と尋ねると、「何もない」と答えます。

「蛇は?」と聞いても「あんなのは頭痛の時に頭に巻いて、はちまき代わりだ。頭がしまって気持ちいいんだ」と言う。「アリは?」と聞くと、「赤飯にごま塩代わりにふりかけて食べているよ。動いて食べにくいけど」と言うではありませんか。「蜘蛛は?」と聞くと、「あんなのは、納豆の糸引き具合が悪い時に2、3匹入れて食べる。蜘蛛が良く糸を出して丁度いいんだ」など、ああ言えばこう言うものだから、みんなは癇に障って「何か一つくらいないのか?」と聞きました。

まんじゅうが怖い

みんなが、怖いものが本当にないのか問い詰めると、男はようやく思い出したように「まんじゅうが怖い」と大声を上げたのです。それを聞いた皆は一斉に笑い出すと、男は「だから言うのは嫌だと言ったんだ。思い出しただけで気分が悪い。ちょっと隣の部屋で横にならせてもらうよ」と言い残し、隣の部屋へと行ってしまいました。

周りの男たちは、いつもいばっている男にいたずらしてやろうと、手分けしてお菓子屋からたくさんのまんじゅうを、山ほど集めたのです。「奴はびっくりして死んでしまうかもしれないな」と言いながら、たくさんのまんじゅうを隣の部屋に投げ入れて、逃げ道をなくすために襖を閉めました。

横になっていた男は、「わー、まんじゅうだ、怖いよ」と布団を被って怖がる様子です。男たちは「怖がっているな」と喜んでいました。

男は「わーそばまんじゅうだ、甘いあんこが怖い。むしゃむしゃ。こちらは栗まんじゅうだ。大きな栗が怖い。こっちは酒まんじゅう。酒の匂いがして、怖いよ、むしゃむしゃ」となんだか様子が変なことにようやく気が付いた周りの男達。

様子をうかがうと

隣の襖を開けると、男がおいしそうにまんじゅうをぱくぱく食べているではありませんか。周りの者たちは、やられたと思い「食べるのをやめろ! 本当は何が怖いんだ」と聞くと、「ここらで濃いお茶が一番怖い」と男が答える、というお話です。

「まんじゅうがこわい」と言えば、嫌がらせでまんしゅうを買ってきて来るだろう、と見越しての男の作戦通りになり、大好物のまんじゅうをたくさん食べることが出来て、町の若者たちは一発食わされた、というお話です。

登場人物

『まんじゅうこわい』に出てくる登場人を紹介します。

このお話の主人公。口が達者で、ちゃっかりした賢い人。

八つぁん

蛇が苦手な長屋の若者。

熊さん

アリの群れを怖がる長屋の若者。

松つぁん

蜘蛛を怖がる長屋の若者。

『まんじゅうこわい』をよむならこちら

『まんじゅうこわい』を子ども向けの本として読みたい時に、おすすめの本を紹介します。絵の雰囲気や、本の中の語り口調など、それぞれ雰囲気が異なりますので、お好みのものを見つけてくださいね。

落語絵本2 まんじゅうこわい(クレヨンハウス)

表情豊かな登場人物たちのイラストが印象的な一冊。話のテンポも良いので、子どもへの読み聞かせにもおすすめです。

まんじゅうこわい(ランランらくご)(あかね書房)

こちらは、落語の世界を大胆にアレンジした本。登場人物が、なんと「くまさん」などの動物になっているんです。『まんじゅうこわい』の他にも『親子酒』『できごころ』のゆかいな物語全3編を収録されています。イラストも緩い雰囲気の、可愛い動物たちが登場します。

まんじゅうこわい―食べ物の出てくるお話 (ちびまる子ちゃんの落語) 単行本(学研教育出版)

こちらは、ちびまる子ちゃんのキャラクターで描かれている親しみやすいデザインの本。子どもでも読みやすく描かれているので、小学校での朝の読書などにもピッタリの一冊です。『まんじゅうこわい』以外にも、『ちりとてちん』『そば清』『目黒のさんま』『本膳』『茶の湯』など、食べ物が出てくる古典落語のお話が載っています。

落語に触れるきっかけを

「落語」と言えば、年配の方が聞くものというイメージで、なかなか普段落語に触れる機会はありませんよね。しかし、最近では子ども向けに読みやすくアレンジされた本や、なじみのあるキャラクターを使って描かれている本などもあります。話のテンポも良いので、学校での朝の読書や読み聞かせにもピッタリです。

落語に触れることで、当時の庶民の暮らしや、文化を垣間見ることが出来ますよ。是非お子さんと一緒に、落語入門として触れてみるのはいかがでしょうか?

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構成・文/吉川沙織(京都メディアライン)

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