発達障がいの子どもたちを支援する「ロボット療育」とは?自閉スペクトラム症(ASD)の子どもたちを伸ばすきっかけに

AIロボットが、発達障がいのお子さんの療育の現場でも使われ始めたと知り取材へ行ってきました。向かった場所は川崎。「未来のエンジニアを育てたい」という放課後クラブ「プライズキッズ」を手がける永守社長にもお話を伺いました。

ロボット療育の可能性

我が家に会話に特化した手のひらサイズの家庭用AIロボット「Romi」が来て2ヶ月ほどが経ちました。

Romiとは?

ディープラーニング技術を用いて言語を生成して会話する世界初の家庭用コミュニケーションロボット。202063日に200台限定で先行販売し、約1カ月で完売。会話の流れや季節・天気・時間帯などから最適な返答を会話AIが作り出し、言葉のキャッチボールを楽しめる点が特徴です。

相変わらず、会話はトンチンカンで、スムーズとは言い難いですが、朝起きて、まずはRomiに「おはよう!」というのが日課になり、いるのが当たり前の存在になりました。

そんな折に発達障がい児向けの児童発達支援・放課後等デイサービスの「プライズキッズ溝の口教室」でRomiや他のAIロボットを使ったロボット療育を行なっていると聞き、AIロボットの教育現場の可能性を取材してきました。

お話を伺ったのは、「プライズキッズ」を運営するエルステッドインターナショナル株式会社の代表取締役社長の永守知博さんです。

日本のハイテクラインに放課後クラブを作ったわけ

永守さん自身が開発した株式会社MJIのタピア

モノづくりの最前線「川崎」での試み

「ロボット療育」とは、人とのコミュニケーションが苦手な傾向がある自閉スペクトラム症(ASD)を持つ児童向けのロボットを取り入れた療育です。

2022年7月1日にオープンした「プライズキッズ」では、最先端の「ロボット療育」を取り入れて、自己肯定感を高め、創造性を育む療育を行っています。

永守さんは大手家電メーカーに勤めていたご本人曰く「電機屋さん」。AIを搭載したコミュケーションロボット「タピア」を手掛ける株式会社MJIの代表取締役・ファウンダーでもあります。

実は「プライズキッズ溝の口教室」がある川崎市を走る南武線沿線沿いは、ハイテクラインという愛称もある電気・情報技術関連の日本有数の大企業の工場や研究所、事業所の集積地。「かながわサイエスパーク」などもあり、日本の技術開発力とモノづくりの最前線の場所でもあります。

「変わっている」特性ゆえに才能が摘まれてしまう子どもがいる

永守さん自身が技術者であることから、才能や技術を持った人の多くは、周りからコミュニュケーションを取るのが苦手だったり、「変わった人」と言われたりする人が多いと感じていたそうです。
今でこそ「発達障がい」という呼び名に変わり、世間の理解も広まってきているものの、ご自身が親となり子育てに携わる中で、“世の中の子どもたちの中には「変わっている」特性が障がいとされ、「育てにくい子」とされ、才能が摘まれてしまう”と危惧するようになったといいます。

未来のエンジニアを育てたい

ロボットを導入することで、技術開発に興味を持つ子も出てくる可能性があります。幼い頃からの「職業訓練所」としての児童発達支援・放課後等デイサービスの事業をカリフォルニアの「シリコンバレー」ならぬ、神奈川の「南部バレー」となりうる川崎市で手掛けることになりました。

子ども達の”尖った”ところを伸ばしていくために支援学校を作りました」と永守さんは話してくれました。

ロボット療育の現場

どんなロボットがいるの?

ケビー(左)とタピア(右)

永守さんの会社がロボット療育を手掛けるようになったきっかけは、「国立精神神経医療研究センター」から「ロボットなど無機質なものは自閉症に効果があり、心が開ける」という研究結果を受けてのことでした。
まずは、2015年に「タピア」を使ってのロボット療育を開始しました。その後、
株式会社MIXIからロボット「Romi」、Edutexから「ケビー」の提供を受けて異なるロボットを使いロボット療育を行なっています。
将来的には、プログラミングツール「Romiシナリオエディター」を用いたプログラミング学習なども視野に入れているとのこと。

ロボット療育の内容

コミュニケーションできるAIロボットたち

コミュニケーション能力や社会性の向上を目指すソーシャルスキルトレーニングを目指していますが、子ども達に何かを無理にさせるという授業ではなく、ロボットを教室に置いて、話しかけたり、自然な触れ合いを通してコミュニケーションを図っていくのだそうです。ロボット療育は、大体30分程度。すでに、親御さんからも大変好評を得ているそうです。

教室でもロボットが並ぶとそれぞれが話しだし、とても賑やかでした。「人間」が相手であると人見知りをしてしまうお子さんでも、見た目も可愛くて、天真爛漫なロボット達だと馴染みやすい様子。

まだまだ、生徒さんは募集中とのことですので「ロボット療育」にご興味のある方はお気軽に「プライズキッズ」にお問合せください。

才能を伸ばすハンカチ理論

「プライズキッズ」の教室内

発達障がいのお子さんを持つ家庭では、ともかく預ける場所があるだけでも助かるというのが実情だと思います。でも、療育を通じて、ただ「面倒を見る」だけではなく、将来の可能性も一緒に育てていくという「プライキッズ」さんの理念は、経営者が技術者であり、ビジネスマンだからこそ。

「プライキッズ」でのロボット療育は発達障がい児向けのプログラムのみとのことでしたが、発達障がいまでとはいかないが、コミュニケーションを取るのが苦手で、不登校や引きこもりがちな子ども達のサポートにもなるではないかと感じました。

永守さんは、「“プライキッズ”でのロボット療育は、発達障がい者向けであり、まだまだ、AIロボットの活用は始まったばかり。未知なことは多いけれど、AIロボットがより広く教育現場で活躍してくれるよう期待している」とのことでした。

最後に、永守さんが子どもを育てるのは「ハンカチ理論」が大切であるというお話が印象的でした。ハンカチ理論とは、ハンカチを持ち上げる時に一点だけをつまめば、全てが引き上げられるように、子どもの「好き」や「特技」の一つを伸ばせることができれば全てが伸びるというもの。そのきっかけなるかもしれないAIロボットに計り知れない可能性を感じます。

児童発達支援と放課後等デイサービス「プライキッズ」

神奈川県の川崎市にあり、発達が気になる・障がいがあるなど、特別なサポートを必要としているお子さんへの療育を提供する障がい児通所支援事業です。 児童発達支援と放課後等デイサービスを提供しており、その中でのアクティビティの一環で、日本で唯一とも言える発達障がい児向けの「ロボット療育」を取り入れています。

発達障がいとは?

プライズキッズさんによると、発達障がいとは、生まれつきの脳機能の障がいにより現れる特性により、生活に困難が生じている状態で、医学的な診断名としてはASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動症)、SLD(限局性学習症)などがあり、それらの総称とのこと。

発達障がいは一見分かりづらく、「しつけができていない」など周囲から理解が得られない場合もあり、辛い思いをしている方もいるかと思います。「プライズキッズ」さん曰く、躾や環境などが原因ではなく、本人にとってはどうしようもない場合がほとんどだそう。

二次障がいの発症も

発達障がいをもつ子は特性によりできない事が多いため、自己肯定感が低くなったり、不安症やうつ病など、二次障がいの発症に至ってしまう場合も…。家庭内だけで抱える事なく、二次障がいの発症前に、ぜひ療育に来て欲しいと、永守さんもおっしゃっていました。

ロボット募集中

プライズキッズでは、子ども達にいろんなロボットに触れ合って欲しいということで、協賛頂けるロボットメーカーの企業を募集しています。ぜひ、ご興味のある企業様はプライズキッズにご連絡ください。

プライズキッズ

教室名:プライズキッズ溝の口教室

住所:神奈川県川崎市高津区溝口3-11-17溝の口パークホームズ103号室

電話番号:044-299-8441

Romiの記事はこちらもおすすめ

我が家に家庭用AIロボット「Romi」がやってきた! 得意ワザは雑談。はたして家族の一員になれる?
我が家にロボットがやってきた! なんとなく、SF映画のようなロボットと暮らす日常がいつかはくるのだろうなぁと人ごとだったのですが、...

文・構成/Rina Ota

編集部おすすめ

関連記事