目からウロコの自由研究ヒント・理科編|親は「成果より過程」を重視して。生き物大好きな先生が教える進め方4案と具体例【HugKum×花まる学習会 セミナールポ】

夏休みを迎えて、お子さんの自由研究の宿題に頭を抱えているご家庭は多いはず。そこで今回は、8月4日にオンライン開催された、HugKum×花まる学習会によるレクチャー「探究的“自由研究”進め方のヒント ~子どもが理科も社会も好きになる!夏休みの過ごし方~」をルポ! 本記事では、なかでも“理科”の自由研究にフォーカスをあてた川幡智佳先生によるレクチャーの様子や内容をお伝えします。理科を扱った自由研究テーマの立て方や、取り組み方、まとめ方がきっとわかるはず!

ポケットにダンゴムシ? 生き物大好きな川幡先生がレクチャー

花まるスクールFCの川幡智佳先生

今回、レクチャーしてくれたのは、花まるグループの進学塾部門スクールFCにて、小学生の理科・算数を担当する川幡智佳先生。生き物が大好きで、子どもの頃は、ポケットのなかにはダンゴムシ、筆箱のなかにはトカゲやてんとう虫が……なんてことは日常茶飯事だったのだとか!

そんな“生き物愛”ほとばしる川幡先生が、子どもが理科を好きになる「自由研究」の進め方のヒントを教えてくれました。

自由研究のヒントの前に…自由研究の目的を考えてみよう!

実験は好きみたいだけど、理科が好きというわけではない。理科は好きだけど、自由研究は好きじゃない…。お子さんを観察していてそんなふうに感じたこと、ありませんか?

子どもの“好き”は、幅広くも限定的

まず、「矛盾しているようですが、子どもの“好き”は、幅広くも限定的な印象です」と話す川幡先生。

幅広い分野に興味を持っても、お子さんによっては、研究計画を立てることだけが得意な子もいれば、実験そのものだけが好きな子もいるように、得意なこと、興味を持つポイントは限定的である場合が多いのだとか。

その結果、部分的には自由研究を楽しめても、「テーマが決められない」「まとめが苦手」といった悩みを抱えてしまいがちに。これらのようなことが、子どもの自由研究がスムーズに進まない大きな要因となっているように川幡先生は感じられているそうです。

自由研究=物事を「解明する」ことが目的ではない。

そこで先生が強調するのが、「自由研究は、物事を解明することが目的ではない」ということ。もちろん、それを理想としたい子がいることも前提とした上で、以下のように話してくれました。

“自分が「わかった、知った、感じた」ことを、誰かに伝えるということが、そもそもの研究であり、自由研究なんじゃないかなと考えます。
小学生の自由研究であれば、本人のことば、やり方で表現できて、「この先こういうことを知りたい」「こういうことがわかるんじゃないかな」という知識や学びの広がりを実感できれば十分だと思います。”

子どもの自由研究には、「今回はこんなことがわかった、今後こんなことがわかるかもしれない」という展望で締めくくられるものも珍しくないのだとか。

【自由研究の進め方①】まずは「ゴール」を決めてみよう!

「だからこそ、自由研究の走り出しには“ゴール”の設定が必要」、と話す川幡先生。

どのレベルまでやりたいのか、気になったものを実際に確認するところまでなのか、コンクールで賞に選ばれるレベルまでなのか……どこを目指すかによっても、研究の深め方は変わりますよね。

どのくらいまで深める? ゴールの決め方とは

また、ゴールを決める上では、
・理想を高く掲げすぎないこと(期待しすぎにも注意!
・夏休み中に終わること
このふたつの大切さも強調されていました。

自由研究とはいっても、あくまでも夏休みの宿題! 現実的に考えて、夏休みで無理なく到達できるように計画を立てることも、ひとつの学びになりますね。

ゴールに無理なく到達できるスケジュールを立てよう

では、そんな計画を立てるにはどんなことに留意すれば良いのでしょうか。川幡先生は、以下の図を見せてくれました。

子どもの自由研究に関わらず、研究ではこのような手順を追うことになります。これを全て、子どもがひとりで考えるというのはなかなか難しいですよね。

「テーマ探しのヒントや、調べ方・考え方・まとめ方などの手段等、時には、保護者の介入が必要かなと思います」と川幡先生。

そして、研究計画を立てることも、保護者が手伝ってあげたい手順のひとつ。

“いつまでに何をどこまでやれば良いのか、材料はいつまでに揃えれば良いのか、親が手伝うのはいつまでなら可能なのか、等々、日程を提示してみるのも手。”

お子さんのスケジュールはもちろん、場合によっては家族のスケジュールも照らし合わせつつ、お互いにとって無理のない計画を立てていきたいですね。

【自由研究の進め方②】テーマを見つけよう!

次に、きっと多くのお子さんがつまずきやすい、“テーマの決め方”。「自分で疑問に思ったことをテーマにしてほしい」と考える川幡先生が、疑問をみつける秘訣についても詳しく教えてくれました。

疑問の探し方A どうして? なんで? 【現象との因果関係】

「一番わかりやすい」ものとして挙げられたのが、「どうして〇〇なの?」「なぜ〇〇は〇〇なの?」といったお子さんの素朴な疑問をテーマにするというもの。
これまでの普段の会話のなかから、拾ってあげるのも手ですね。

疑問の探し方B 本当にそうなの?【事実の検証】

次に、「教科書に載っている、図鑑に載っている内容は本当に正しいのか」、自分で再検証してみるというもの。これに関しては、「うまくいかないときこそ、研究になる」と川幡先生。

たとえば、物理・科学のような分野では、「条件を揃えないとその結果にならないということが結構ある」のだとか。検証してみて、もしもうまくいかなかったら、なにが間違えていたのか、どうすればうまくいくのか、その「条件」を探ってみましょう。

疑問の探し方C 他のものでもそうなるの?【銅鉄科学】

3つ目が、「他のものでもそうなるの?」という疑問の立て方。結果はわかっていても、素材や条件を変えて同様の実験をしてみる研究を「銅鉄研究」と呼ぶのだそうです。

「例えば、生き物でこういう研究をした人がいた。その生き物と違う生き物だったらどういう結果になるかが気になったので、調べてみました。やってみました。これも立派な研究ですよね」

「銅鉄研究」は、あんまり良い意味では使われていないそうですが、この研究は「結果の比較がしやすいので、子どもの自由研究にはおすすめ」なのだとか!

すぐには思いつかない場合は…

また、すぐには疑問も思いつかない場合は、以下を頼りにしてみるのも◎とのこと!

・自由研究データベース
・科学館や企業などのHP
・科学館や企業などのイベント
・自由研究の本・図鑑
を探してみる。

好きなことを『なぜ好きなのか』と考えると、もしかしたら新たな疑問が出てくるかもしれない」といったお話もありました。

【自由研究の進め方③】疑問を研究へと発展させよう!キーワードは「変える」

疑問が見つけられたら、それを研究へと発展させましょう。では、どうすれば、疑問が研究になるのでしょうか。

キーワードは「変える」

前章にあった「本当にそうなの?」「他のものでもそうなるの?」の疑問を研究へと発展させる場合は特に、「変える」が重要なキーワードになるのだとか!

レクチャーでは、「ムラサキキャベツ液」にまつわる疑問をもとに、「変える」というキーワードを使って、これらを研究へと発展させる例が挙げられました。

まず、ムラサキキャベツ液とはこんなもの。

このムラサキキャベツ液に対して、以下のような疑問を抱いたとします。

キーワード「変える」を使えば、以下のようにさまざまな研究へと発展させられます。

ちょっとした疑問も、もう立派な研究に育っていますね! どれも結果が気になります。

また、研究の対象をスライムやクッキー、ケーキに変えたこんな研究の仕方も挙げられました。

身近なものを対象にするだけで、理科が苦手なお子さんでも好奇心が刺激されやすそうですね。

こんな考え方も!【番外編】

そのほかにも、気象や天体を対象に場所や時間を変えたり……

ふだん何気なく見過ごしているものへと目を向けて、場所を変えたり……

ほか、過去や未来には、対象がどんな姿をしているのか考えるものや、

場所が変わることによって、どんな変化があるのか観察するもの、

日常の何気ない疑問にフォーカスしたもの等々、研究を育てるためのさまざまなヒントが挙げられました。ふだん慣れ親しんでいるものも、「変える」を応用すれば、疑問や研究方法がどんどんと浮かび上がることがよくわかりますね。

【自由研究の進め方④】記録をしてみよう!

研究の方向性や方法が決まったら、次に大切なのが「記録」です。時系列順に、経緯の写真や測った数値をすべて記録しておきましょう。記録をする際に、どのようなことが必要となるのかもレクチャーではお話がありました。

写真(大きさがわかると◎)

時系列順に、経緯を写真に撮りましょう。「大きさが分かる物と一緒に写真を撮っておくこと。どんな場所だったか、周りの風景と一緒にとっておくこと」も大切だというお話もありました。上の画像は、サイズ比較用に1円玉を置いた例です。

使ったものを全部とっておく


研究に使ったものは、すべて一応とっておくようにしましょう。「あとで、もう一度調べたいときに使える可能性があります」と先生。

参考文献も記録に残しておく

参考にした本のタイトルとページ、インターネット(研究室や科学館などがオススメ)のURLも記録しましょう。
提出の際は、参考文献はしっかり明記する必要があります」という大切なお話もありました。

「模型」「スケッチ」で考える

「スケッチを書くと、より深く観察できるのでおすすめ」と話す先生。「全身描くだけでなく、気になったところだけ、ちょっと拡大して描いてみるというのも、ぜひやってみましょう!」

自由研究は「成果」よりも「過程」が大切

最後に、川幡先生からこんなお話がありました。

“自由研究は、“成果”を目的とするよりも、研究を行う“過程”で、
・知的好奇心や探究心の種をまいていく
・世界は広く、知らないことがたくさんあることを知る
といった経験を得ることが大切。そんなチャンスと捉えて、自由研究に取り組んでもらえたらと思います。”

どんなテーマであっても、自分で抱いた疑問をもとに、実行して、その結果をふたたび考える……という行為は、お子さんの大きな成長につながるはず。時には大人もサポートをしながら、ぜひ、親子で自由研究を楽しんでみてくださいね。

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登壇者プロフィール

川幡 智佳 | 花まる学習会 スクールFC 南浦和校 理科授業担当
大学は水産学部を卒業後、大学院にて自然環境学を専攻。花まるグループ入社後は、進学塾部門であるスクールFCで理科や算数などを担当し、小4総合コースの「理科」や、科目横断型・総合的学習の時間である「合科」の立ち上げに携わる。「知るは楽しい」をモットーに、「身のまわりの理科」を中心に子ども達と一緒に楽しみつくす場を作ろうと、授業以外にも各講座で活躍。
イラストの作画も手掛けた『どこがおなじでどこがちがうの?カワハタ先生の動物の不思議』(実務教育出版)、『考える力がつく理科なぞぺ~』(草思社)の著書のほか『マンガでわかる!10才までに覚えたい 科学のふしぎ250』(永岡書店)の監修も務める。

 

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文・構成/羽吹理美

夏休み☆自由研究ハック

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