【山田涼介、浜辺美波】ダダ漏れの愛がエモすぎる・・・言葉無しでも通じ合う二人に静かに引き込まれる純愛映画『サイレントラブ』現在公開中

『ミッドナイトスワン』(20)で第44回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した内田英治監督が描く切ないラブストーリー『サイレントラブ』。主演の山田涼介とヒロインの浜辺美波が織りなす、純度の高い愛に心を打たれる映画に仕上がっています。

山田涼介と浜辺美波による眼差しの演技が秀逸

©2024「サイレントラブ」製作委員会

本日1月26日(金)より公開された内田英治監督作『サイレントラブ』。高い評価を受けた草なぎ剛主演映画『ミッドナイトスワン』に続き、内田監督が自身のオリジナル脚本で挑んだ本作は、“世界でいちばん静かなラブストーリー”とされています。内田監督によると「何年も前からずっと、言葉が氾濫する時代に、極端までにセリフのない映画を作りたいと考えていました」とのことでしたが、その“静かさ”が本作のカギとなります。

©2024「サイレントラブ」製作委員会

主演は、橋本環奈と共演した連ドラ「王様に捧ぐ薬指」や、安藤サクラと共演した映画『BAD LANDS バッド・ランズ』(23)など、話題作や意欲作が相次ぐ売れっ子俳優の山田涼介。本作では、人気アイドルグループHey! Say! JUMPでのキラキラしたオーラを完全封印し、孤独で地味な主人公・蒼になりきりました。

ヒロインには、連続テレビ小説「らんまん」で国民的女優となり、世界でメガヒット中である『ゴジラ-1.0』でも確かな演技力を発揮していた浜辺美波。セリフをとことん削ぎ落とした本作だからこそ、山田さんと浜辺さんの佇まいがかなり重要ですが、彼らはただ道を歩くシーンだけでも、エモーショナルな空気感をまとっています。おふたりは初共演となりましたが、非常にいい化学反応が起きています。

ストーリーテリングの名手が放つ予測不能な物語

©2024「サイレントラブ」製作委員会

山田さんが演じるのは、声を捨てた青年・蒼。彼が音楽大学の清掃をしていたある日、不慮の事故で視力を失った音大生・美夏(浜辺美波)と出会います。絶望のふちに立たされても、ピアニストになるという夢を絶対に諦めない美夏に心を奪われた蒼は、定期的に大学にやってきてピアノの練習をする彼女を、密かにサポートしていくことに。

美夏の来る時間にピアノがあるホールのカギを開けたり、道を通る時には人をよけさせたりするほか、すべての危険から美夏を守ろうとする蒼。やがて蒼の存在に気づいた美夏は、蒼を同じ大学の学生だと思い込みます。そして言葉を話さない彼に「YESなら1回、NOなら2回、私の手の甲を叩いて」と提案。

©2024「サイレントラブ」製作委員会

また、蒼が美夏に自分がいることを伝える方法として、小さなガムランボールを鳴らすという手段もあります。その優しい音が鳴るたびに、2人の距離感も縮めていくよう。とことん不器用ですが、心から尽くしていく蒼の優しさに、かたくなだった美夏の心も少しずつときほぐれていきます。

©2024「サイレントラブ」製作委員会

そんな中、美夏に「あなたのピアノも聴かせてほしい」と言われた蒼は、美夏の通う大学で非常勤講師を務める北村(野村周平)に、自分のふりをして美夏のためにピアノを弾いてほしいと懇願します。名門家庭に生まれた北村は、貧乏人を常にバカにする鼻持ちならない青年ですが、ギャンブルにハマり多額の借金を抱えていたので、蒼からの申し出を高額のギャラで受けることにしました。

3人による不思議な交流が続いていく中、ある悲劇が起こります……!

©2024「サイレントラブ」製作委員会

最初にあらすじだけを読んだ時、ある程度、予想をしながら映画を観たのですが、物語は驚くべき方向に進んでいきました。さすがは日本アカデミー賞を制したストーリーテラーである内田監督。練りに練られたオリジナル脚本のクオリティにうなります。

その脚本に応えた主演の山田さんと浜辺さんによる、言葉を交わさずにシンパシーを感じ合う演技も秀逸。セリフが少ない分、蒼と美夏の眼差しや豊かな表情から、純度の高い愛がダダ漏れしています。その画力がすさまじく、まさに大スクリーンで観るにふさわしい映画となりました。

純愛を軸にしつつ、格差社会に一石を投じる物語でもある

©2024「サイレントラブ」製作委員会

不良あがりの蒼と、両家の令嬢である美夏が交流していく様子を見て、いろんな人物が2人を“不つり合い”だと決めつけてしまいます。ある人物は良かれと思い「もともと別の世界の人間だ」と言って、2人を引き離そうとしました。それでも、互いを知れば知るほど、惹かれ合っていく蒼たち。なぜなら2人はそれぞれの良さを見極め、心の内を誰よりも理解しあっているから。


そこに加えて、本作では蒼と美夏だけではなく、“貧しい人”と“裕福な人”という大きなくくりでの格差もいろんな人を通して描かれています。でも、生まれ育った環境が違っていても私たちは同じ人間なわけで。偏見で人を見下すという行為が、どれだけ愚かなことなのかを痛感させられます。それは多様性を真っ向から描いた『ミッドナイトスワン』にもつながる内田監督作の共通テーマかもしれません。

共にかけがえのない存在となった蒼と美夏ですが、過酷な運命に翻弄される中、どんな未来を迎えるのでしょうか? そこは観てのお楽しみということで。

静かなラブストーリーでありながら、音楽も決め手となる本作。音楽を担当したのは、内田監督が「いつかご一緒したい」と熱望した久石譲ですが、リリカルなメロディが多くのものを物語っていきます。また、本作では静と動のメリハリがあり、山田さんによるキレキレのアクションの見せ場も用意されている点がニクい! 隅々まで、観る者の感情を揺さぶる非常に見応えのある映画となっていますので、ぜひ映画館でお楽しみください。

『サイレントラブ』は1月26日(金)より公開中
原案・脚本・監督:内田英治 共同脚本:まなべゆきこ 音楽:久石譲
出演:山田涼介、浜辺美波、野村周平/吉村界人、SWAY、中島歩、円井わん、辰巳琢郎/古田新太…ほか
公式HP:gaga.ne.jp/silentlove

© 2024「サイレントラブ」製作委員会

文/山崎伸子

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