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子育ては、運転を習わずに、運転免許なしに、いきなり高速道路を走らされているようなもの
保育学・育児学の専門家である汐見稔幸さんは3人のお子さんのパパでもあります。ご自身の子育てを振り返って、今の時代のママ・パパにエールを送ってくださいました。
あらゆる営みの中で、原則練習はまったくできないのが子育て。かつ、失敗もあまり許されない。僕らの言い方だと「運転を習わずに、運転免許なしに、いきなり高速道路を走らされているようなもの」なんですよね。
僕自身も、大学の教員と子育ての両立で悩んだ。つまり、「両立できないことに悩むこと」に、ものすごいエネルギーを使ったわけです。それでずっと考えて、「3歳3か月10日目のこの子の今っていうのは、”今”しかない。そこで手抜きをしてしまったら、多分自分も納得できないだろうし、この子にとってもよくないだろう。
研究は50歳になってもできるだろうから、子育てを第一にして、できる範囲で研究を続けていく」と割り切ることで、僕の場合は自分を解放しました。
もちろん、ものすごい葛藤だったんですよ。だけども、やっぱりそこは上手に居直るしかない。家事も料理もちゃんとやりたいという中で、そこの手を抜くってことは、自分の気持ちとしても収まらないかもしれないけど、そのエネルギーで子どもに向かうことをしてあげたほうが、いいように思うんです。あとから取り返せばいいわけですから。
僕の子育てのモットーは「いい加減」
僕がモットーにしているのは「いい加減」ということばなんです。なんでも一生懸命にやるということは、かえって緊張して心にも発想にもゆとりがなくなってしまうんですね。本当に自分がやりたいところにはものすごく力を注ぐけど、そうでないものは上手に手を抜いて、最後はつじつまを合わせる。「いい加減な生き方をしてください」っていうのは語弊があるけれども(笑)、すべてに100%を求めたらつぶれちゃいますよ。
寝る前にほんの2,3行でいい「ひと言育児日記」のすすめ
子どものいいところを見つけられると子育ては本当にラクになります
小さな手帳でいいので、寝る前にたった2,3行でも、その日のことを書き留めておくといいと思います。そういう振り返り。ほんの10秒20秒でいいんです。何を書くかっていったら、その日の子どものことで「頭にきた!」ということではなくて、「今日一日で、あの子の面白かったところ、こういうところがよかったなってこと、何があったかな……」って思い出して、ちょこちょこっと書いておく。要するに、子どものいいところを見つけられると、子育てはうんとラクになるんです。
でもそれは、意識的に見ないと見えないです。例えば、さんざん叱ったのに次の日にはケロッとしていると、「効果ないのかな」って思うじゃないですか。でも、それを逆に見るわけ。あれだけ叱ったのに次の日ケロッとしているとは、「意外とたくましい」と。ほかにも、あんなに時間がかかって愚図だなあって思うんだけども、「とても丁寧だから将来は職人かな」とか、そういうふうに見ていくわけですよ。そうすると子どもがすごく見えてくる。
と同時に、「子どもをよく見ている私は、うん、まあ、ちゃんとやってるじゃない」っていう気持ちになるのね。だから毎日じゃなくてもいいので、あとで振り返ったときに、「必死な中で私、よく書いたわね」っていうような育児日記を、皆さんにおすすめしたいですね。
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汐見稔幸さんが言う子どもの必須アイテム「小さな子どもの三種の神器」とは?
(執筆者一覧・五十音順)青山誠、あまんきみこ、荒井良二、犬山紙子、内田也哉子、遠藤利彦、大日向雅美、大豆生田啓友、加瀬健太郎、角野栄子、工藤直子、小林エリカ、小林よしひさ、五味太郎、汐見稔幸、柴田愛子、春風亭一之輔、新沢としひこ、谷川俊太郎、てぃ先生、外山紀子、中川ソニア、中川李枝子、東直子、福丸由佳、水野美紀、宮﨑駿、茂木健一郎、山崎ナオコーラ、ヨシタケシンスケ
構成/Hugkum編集部 写真/繫延あづさ