2種類あるローマ字のつづり方
最近、ローマ字のつづり方を見直すというニュースが報じられました。文化庁の文化審議会国語分科会国語課題小委員会が今年の2月15日に、そのような内容の報告案をとりまとめ発表したのです。
ローマ字を用いて日本語を書き表すことを、ローマ字つづりと呼んでいます。このローマ字つづりには、訓令式・ヘボン式などがあり、それぞれ少しずつつづりが異なります。
1954年から基準となった「訓令式」
従来広く使われてきたのは「訓令式」です。これは1937年(昭和12年)に内閣訓令として示達(じたつ)されたため、そのように呼ばれるようになったのです。この「訓令式」は1954年に廃止され、新たに内閣告示された「ローマ字のつづり方」によって訓令式新表が定められました。ただその後も、この新表に掲載されたものも「訓令式」と呼びならわされてきたのです。
「ローマ字のつづり方」では、実際に日本語の五十音に対応させた訓令式によるつづり方を第1表に、訓令式と異なるヘボン式などのつづりを第2表に掲げています。そして、「一般に国語を書き表わす場合は、第1表に掲げたつづり方によるものとする」とし、さらに「国際的関係その他従来の慣例をにわかに改めがたい事情にある場合に限り、第2表に掲げたつづり方によってもさしつかえない」としています。
「訓令式」と「ヘボン式」は例えばこんな違いがあります
「ち」は 訓令式はtiですが、ヘボン式ではchiです。また、「つ」は訓令式は tu 、ヘボン式は tsu です。
内閣告示「ローマ字のつづり方」は「訓令式」以外のつづり方も許容していますが、一般のローマ字使用の実態は、現行の内閣告示が示すものとは大きく異なってきていることは確かです。そこで今回の文化審議会国語分科会の報告案は、実態を踏まえて、内閣告示の改定を視野に入れるよう求めたのです。
パスポートの記名のローマ字は「ヘボン式」
たとえばパスポートのローマ字表記は、「訓令式」ではなく、原則として「ヘボン式」を使うようにとされていて、すでに差異が生じているのです。
実際にローマ字のつづり方が改定されるのはもう少し先になります。ただ、それは現状を踏まえた判断がなされるものと思われます。
小学生のお子さんがいる保護者の方は、その改定内容が学校教育にどのような影響を及ぼすか気になるかもしれませんね。現行の小学校の学習指導要領では第3学年の国語で「ローマ字のつづり方」によるローマ字表記を教えるよう求めていますが、これから改定されるローマ字のつづり方も、教育現場にじゅうぶんに配慮した内容になるでしょう。
ところで、こちらのウンチクは知ってますか?気になる方はぜひ読んでみてください。