「こども発達LABO.」を運営している西村ご夫妻は、子ども・保護者・支援者を幅広くサポートしています。YouTubeではいつもかぶりものをして出演、楽しく愛ある発信が人気! 今回は、発達障害・発達凸凹のお子さんが抱えがちな困り事の対処法や、学校の先生との関係性や放課後デイの選び方についてアドバイスをいただきました。
行き渋り、他害、授業中のおしゃべり…具体的な困り事にはどう対処?
Q:学校の行き渋りに悩んでいます。親はどのように子どもに対応するのが適切なのでしょうか。
A:「学校に行きたくない」は子どものヘルプサイン! 焦らずに原因を探って。
「学校に行けてるから良い、行けてないからダメ」という視点を持ってしまうと、子どもの細かい気持ちを見逃す恐れがあります。学校に行けない理由、行きたくない理由を探してあげることに目を向けてあげるといいと思います。お子さんによっては、これらの理由を言葉にできないこともありますから、親御さんが子どもの様子を観察する中で、お子さんの中にある複雑な思いを言葉にしてあげることに着目してみてください。
また、原因を探る場合は、子ども自身に課題があるのか、それ以外の環境にあるのかを見極める必要があります。
■新しいことに対する不安、聴覚過敏・視覚過敏など
→原因がお子さん自身の特性に関する課題がある場合です。スキンシップや声かけ、担任の先生との共有、イヤーマフの利用など、それらを取り除いたり、慣れていけるようなフォローをしてあげることで解決していきます。
■学校のルールや新しいお友達になじめないなどの理由
→他者との関わり・環境による課題です。これらは、先生やお友達からの理解が必要です。この場合は、お子さんの特性を理解していただけるよう周りに働きかけることで解決へと向かっていくことができると思います。
いずれにしても、新学期からすぐに学校に行かせなきゃ行けないと親が焦ってしまうと、それがお子さんに伝わってしまいます。原因は一つだけではない場合もありますので、焦らずに原因を探ってあげましょう。
Q:空気を読めない発言や、言葉がなかなか出ないことからの他害など…お友達とのトラブルにはどう対応したらよいでしょうか。
A:振り返りで考える時間を! 周りからも特性を理解してもらえるとGood。
言葉で言うよりも行動する方が早いので、気持ちを言葉にするのが苦手なお子さんはイライラや怒りを行動で表してしまいがちです。そういうお子さんでも、落ち着いて時間をかければ気持ちを話せることもあるので、振り返りの時間はとても大切です。
特に自閉症スペクトラムのお子さんは複数人での会話が苦手なことが多く、お友達との会話でポンポン話題が変化していくような場面では理解が追いつかないことも。テーマを変えずに話をしてみようとか、ルールを変えずに遊んでみよう(例:鬼ごっこのルールを途中で「やっぱりバリアあり!」など変更しない)など、周りのお友達にも協力してもらうことも大切です。担任の先生を通じて、特性の違いを理解してもらえるように相談してみてもいいかもしれません。
Q:授業中ずっとおしゃべりしていて先生から注意を受けることが多く…「先生がお話している時は聞く」ということを理解してもらう方法はありますか?
A:おしゃべり=多動の一種の場合も。お子さんの行動パターンを観察。
定形発達ではないお子さんの場合、暗黙のルールは言葉で説明してあげないと理解できないことが多くあります。まずは、ルールを理解しているかの確認をしてください。それも「授業中は、当てられた人だけおが話ができるんだよ」「先生がお話してもいいというまでは、お話はしないよ」などと、具体的に教えてあげるといいですね。
それでもおしゃべりが止まらない場合は、運動的な面からもお子さんを見てあげてください。
ずっとおしゃべりをしているお子さんの場合、立ち歩きとの関係性があることも。おしゃべりは、絶えず口周りの筋肉を動かしている状態なんです。筋肉を動かすという点で、立ち歩いているのと同じ状態でもあります。体を動かしたい欲求が、おしゃべりという行動に出ている場合もあります。
定形発達の方にはなかなか理解できないかもしれませんが、動いている方が落ち着くという感覚もあります。ずっと座っていると、座っている感覚がだんだん分からなくなってくるので、定期的に立ち上がる行動をとったり。衝動的に立ち上がって走りだす子も中にはいますが、ほとんどの場合は、立ち上がって教室の中を歩く程度です。校庭まで走って出ていってしまうと言う場合はありませんよね。こういう様子からわかることは、動くことで落ち着こうとしているのです。
午前中に体育がある日の午後は比較的落ち着いていたりする、休み時間にたくさん体を動かすことができた次の授業は落ち着いているなど、傾向が見えてくる場合があるので、お子さんの様子を観察してみましょう。
Q:普段の会話の声が大きすぎる点が心配です。ボリューム調整を理解してもらう方法はありますか?
A:ボリュームは数で理解を。1本線の上を忍者歩きで微調整ができるかも確認!
まずは声の出し方を分けられるかを確認してみてください。ボリューム1の声、2の声、3の声…。数字でボリュームが再現できれば、「いつもの声はボリューム2くらいだよ」と、具体的に数字で示してあげることで理解できるようになります。
こういう兆候が見られるお子さんの中には、微調整を苦手としている場合が多くあります。1本の線の上やブロックなどの上を、ゆっくり忍者歩きができるかどうかも確認してみてください。体の筋肉を微調整することと、声のボリュームを微調整することは関係があるため、忍者歩きをしてもらうことで、筋肉を微調整する力がどの程度あるのかを確認することができます。
Q:高学年になっても食べこぼしがひどく、食事どきの悩みです。
A:動画撮影や写真でチェック! 客観的に振り返りを。
微調整が難しい子には食べこぼしも多くみられます。その場合は、目からのフィードバックが効果的です。鏡で食べる姿を見せたり、スマホやタブレットで動画を撮影してみせてあげるのも良いと思います。
姿勢が悪いお子さんにも、座っている姿を写真に撮ってみせてあげる、ということがおすすめ。自分を客観的に見てみるという機会はとても大事なことです。
こちらの記事では放課後デイや療育についてお話を伺っています
お話を伺ったのは
むぎちょこ(西村千織)/言語聴覚士
ことばの発達と発達障害が専門の言語聴覚士。病院勤務の後、公的療育機関に17年勤務し、ことばの遅れがある幼児や発達障害のあるお子さんに対して、のべ数万回の言語聴覚療法を実践。2020年より理学療法士西村猛の運営する株式会社ILLUMINATE取締役兼発達障害のあるお子さんのための支援事業所「発達支援ゆず」所属。子どものことばの発達にお悩みを持つ保護者の方向けのオンライン相談事業も実践。
YouTubeチャンネル「こども発達LABO.」では、理学療法士の西村猛と2人で、ことばとからだの発達や発達障害に関する情報を発信中。著書に「「ことばが遅い子・心配な子」から「ことば」を引き出す親子あそび」(PHP研究所)がある。
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お話を伺ったのは
にしむらたけし(西村猛)/理学療法士
子どもの運動発達と発達障害が専門の理学療法士。株式会社ILLUMINATE代表取締役。公的療育機関等に20数年勤務した後、2017年に独立起業。現在は、会社代表として「発達支援ゆず」の3事業所を運営するかたわら、全国の保育園・幼稚園・こども園などで、子どもの運動発達や発達障害に関する研修会講師として活動中。
運動発達の専門家として、NHKあさイチ、テレビ朝日グッドモーニングを始めメディア出演等多数。著書に「寝る前10秒 子どもの姿勢 ピンポーズ!」(主婦の友社)がある。
文・構成/鬼石有紀