「投資ってギャンブルみたいなものですよね…?」お金の置き場所の正解は、時代によって変わる!アップデートしておきたい令和の投資のリアルを、マネーのプロに聞く【連載第2回】

人には聞きにくいけれど、知っておきたいお金のあれこれを、アセットマネジメントOne 未来をはぐくむ研究所長の伊藤雅子さんがやさしく解説する連載の第2回。
初回に続き、投資を始める前に抑えておきたい最初のルール、ゴルフに例えるなら「グリップの握り方」ともいえる基本のキをお伝えします。

そもそも投資のイメージは?

投資について、みなさんはどんなイメージをお持ちですか。証券投資に関するイメージ調査のグラフをご覧ください。なお、ここでいう証券投資とは、株式や債券、投資信託などの金融商品に投資することを指します。

複数回答の調査ですが、プラスイメージを持つ人が一定数いる一方で、マイナスイメージを持つ人も多いことがわかります。

特に、マイナスイメージの上位3つ、「難しい」「ギャンブルのようなもの」「なんとなく怖い」は、投資を始めない3大理由とも言われるもの。中でも「ギャンブルのようなもの」とおっしゃる方は、投資に対するネガティブ度合いが強い傾向があります。

投資とギャンブルには明確な違いがある

ではそもそもギャンブルというと、みなさんは真っ先に何を思い浮かべるでしょうか。パチンコ・スロット・競馬・競輪…いろいろありますが、実は日本国内において最もギャンブル性が高いのは宝くじです。

「宝くじがなぜギャンブル性が高いのか」や「投資とギャンブルは何が違うのか」は、「マイナスサム」「ゼロサム」「プラスサム」という仕組みを知ると、簡単に理解できます。

マイナスサムとは

まず、サムとはエクセルなどでもよく使う関数の「SUM(合計)」のこと。したがってマイナスサムは「合計がマイナス」、つまり参加者から集めたお金より、還元されるお金のほうが少ない仕組みです。

たとえば1等3億円の宝くじが、1枚300円で1000万枚発売されたとします。30億円あれば理論的には買い占めが可能です。しかし全部買い占めて、1等や前後賞がすべて当たったとしても、手元に戻るのはなんと半分の15億円以下! これは、最初から運営側が約半分取って、公共事業に使ったり、印刷費や広報費などにあてたりするからです。

もちろん、「宝くじは夢を買うもの」とわかったうえで楽しむのは良いのですが、儲けるのはよほど運が良くなければ難しいことがわかるでしょう。これがギャンブルです。ちなみに、宝くじの還元率は約46%、競馬や競輪の還元率は一般的に7~8割程度と言われています。

ゼロサムとは

次に、ゼロサムとは「合計がプラスマイナスゼロ」、つまり参加者から集めたお金と還元されるお金がイコールになる仕組みです。

たとえばFX(外国為替証拠金取引)の場合、1ドルが150円から155円になっても、通貨自体が成長したわけではなく、交換レートが変化しただけです。一方の通貨の価値が上がれば、必ずもう一方の通貨の価値が下がり、両方が同時にあがることはありません。儲ける人がいれば、その裏で必ず誰かが損をすることになるため、短期間にうまく売買を繰り返すことで利益を得ようとします。これは、機会にお金を投じるという意味で「投機」と呼ばれます。

私は以前、銀行で為替ディーラーの仕事をしていましたが、起きている時間はほぼずっと、それこそ合コンで中すら(!)為替レートを見ていました。そんなプロの世界でも勝率3~4割が続けばすごいといわれます。野球選手の打率をイメージするとわかりやすいでしょう。

もし個人で挑戦しようと思うなら、それを理解した上で、すべての時間をつぎ込む覚悟を持ち、自分がコントロールできる金額の範囲内でやることが重要です。それが守れない人にはおすすめしません。

プラスサムとは

ところが株式投資はプラスサム、すなわち「合計がプラス」で、参加者から集めたお金より還元されるお金のほうが多い仕組みです。理論上、投資した企業の業績が伸び続け、それに応じて株価も上昇し続ければ、投資家全員が利益を得ることになるからです。

もちろん会社は数日では成長しませんから、もし値動きだけを追って株を短期で売ったり買ったりすれば、ゼロサムの世界になってしまいます。それが好きでギャンブルのような株式投資をする人はいるけれど、そもそも株式投資はギャンブルではないということを、ぜひ心に留めておいてください。

ただし注意したいのは、すべての会社がプラスの成長ができるわけではないということ。事業に失敗する会社もありますし、倒産や不祥事によって株価が暴落することもあります。

そのリスクコントロールの方法の一つが、投資信託(ファンド)です。私たちが証券会社や銀行を通じて預けたお金を、専門の運用会社がまとめて投資・運用し、その利益を投資家へ還元する仕組みです。投資信託の場合、複数の株式に分散投資をしますので、1社だけの株を買うよりリスクを軽減できます。

「株だけはやるな!」はもう古い?日本株のイメージの変化

たまに「祖父に株だけはやるなと言われて…」と株式投資に消極的な人がいます。しかし、日本株に対するイメージは時代とともに変化しています。

上記グラフ(グラフ中の▼は20歳時点を示す)をご覧ください。日経平均株価の変化の見え方は年齢によってまったく違います。

20代~30代前後の人から見ると、日本株は生まれたときから緩やかながら右肩上がりです。ドカンと下がった経験がないので、株式投資に対してそこまで悪いイメージがありません。実際、NISA口座数の推移も他の年代とは違って強い右肩上がりです。

一方、40代~50歳前半はバブル崩壊後の株価底値で就職し、長く苦しい時間を過ごしてきました。最近ようやく株価が上がった実感を持ったところでしょう。60代以上の祖父母世代は、就職後にバブルが崩壊し、その後の20年間は株式投資がまったく報われない期間でした。だからこそ短期売買が中心となり、失敗も経験し、「株だけはやるな」という考え方になった人が多いのもうなずけます。

もしかすると親世代やさらに上の世代の常識はもう時代遅れになっているかもしれません。思い込みを外して常に情報をアップデートすることが大事です。

定期預金金利の変化

定期預金金利も、その水準が時代とともに大きく変わっています。

今から30年ちょっと前、昭和の後半は日本経済が急拡大していた時代でした。インフレでモノの値段は上がりましたが、お給料も上がるので生活は維持できました。定期預金で年6~7%と金利も高く、元本保証の預貯金でもお金がしっかり増えたので、預貯金に置いておくのが正解でした。

その後バブルが崩壊し平成の時代に入ると、日本経済は低迷し、低金利が長期化。お給料は上がらず、でもモノの値段も下がっていったので、増えなくても預貯金に置いておくのがやはり正解でした。

でも令和の時代に入り、今、20年ぶりのインフレへの大転換が叫ばれています。しかもこのインフレは、昭和のような元気な経済成長のもとでお給料もどんどんあがるようなインフレではなく、モノの値段ばかりが上がっています。金利も多少は上がっているとはいえ、定期預金金利が年6~7%に戻るような状況ではありません。自分で努力しなければ生活が維持できなくなる可能性が高くなる環境だからこそ、その解決策になる「投資」を国も後押ししている。有利なお金の置き場所の正解は、時代や経済環境によって変わっていくのです。

「マーケットは常に正しい」と心得て

投資の世界で有名な格言の一つに、「マーケットは常に正しい」というものがあります。為替ディーラーをしていた時、ドルが上がると思って買ったのに下がって大損をし、あたふたしていた私に先輩が教えてくれたのがこの言葉でした。現実を真摯に受け止め、長期的な視点に立ってどう行動するのがよいか、冷静に考え直すことが大事とアドバイスされました。

それ以来、「マーケットは常に正しい」は投資における私の信条の一つになっています。自分の思い込みややり方に固執して知識をアップデートできないと、未来を切り拓いていくことは難しい。これは投資の世界だけでなく、人生にも言えるだろうと思っています。

連載初回「投資ってそもそもやったほうがいいですか?」はこちら

「投資ってそもそもやったほうがいいんですか?」投資を始めるならまず知りたい“複利”のメリットを、アセットマネジメントOne未来をはぐくむ研究所に聞く
みんな「お金の増やし方」は知りたがるけれど… いきなりですが、みなさんは自分にお金のリテラシー(知識や判断力)がどれくらいあると思いますか...

プロフィール

伊藤雅子|アセットマネジメントOne未来をはぐくむ研究所長
2003年興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現アセットマネジメントOne )入社。外為マーケット経験を生かし、専門的な話をわかりやすく伝えることを第一に投資信託の普及に努め、20年に渡り営業員向け研修や一般投資家向けセミナーなどで講演。
個人の資産形成、ファイナンシャル・ウェルビーイングや金融経済教育の分野における啓発・普及活動を目的として、2023年10月にアセットマネジメントOne内に未来をはぐくむ研究所を設置、初代所長に。
アセットマネジメントOne未来をはぐくむ研究所のHPは>>こちら
※本記事は情報提供を目的とするものであり、投資家に対する投資勧誘を目的とするものではありません。

構成/古屋江美子 撮影/五十嵐美弥

マネー特集

編集部おすすめ

関連記事