「それでもやっぱり投資のリスクが怖いんです…!」リスクがあっても投資する意味とは?【連載第3回】

人には聞きにくいけれど、知っておきたいお金のあれこれを、アセットマネジメントOne 未来をはぐくむ研究所長の伊藤雅子さんがやさしく解説する連載の第3回。「それでもやっぱり投資のリスクが怖い」という人に向けて、リスクとリターンをどう捉えればよいのかを説明します。

リスク?危険?デンジャー?

確かに、投資はプラスになることもあれば、マイナスになることもあります。どれだけ「投資はギャンブルではない」と説明しても、少しでもお金が減るリスクがあるなら、やっぱりやめておく」という人は一定数います。

リスクは日本語に訳すと「危険」です。リスクというと極端に怖がる人もいますが、英語では、自ら避けられない想定外の危険は「Danger」です。たとえば、海外で遊泳禁止の海にある立て看板の表記には「Danger」が使われます。投資のリスクが「Danger」であれば、やるべきではありません。

しかし投資のリスクは「Risk」です。こちらは何かを行う場合に伴う危険性、つまり好ましくないことが起きて損害を招く可能性があるというニュアンスです。日本語ではどちらも「危険」と訳されてしまうので、「投資にはRiskがある」ことが「投資はDangerである」と誤解されることがありますが、「Risk」は「Danger」とは違って、知識や行動によって備えたり、減らしたりすることができます。

未来にリスクがあるのは当たり前

株式投資に限らず、投資にリスクはつきものです。私は自己投資で英会話学校に通いましたが……理想どおりとはいきませんでした。ほかにも「家を買ったけれど地震が起きるかもしれない」「憧れの自転車を手に入れたけれど転ぶかもしれない」といったこともすべてリスク。リスクのない人生はないし、リスクのない投資もない。重要なのはいかにリスクをコントロールして最小限に抑えるかです。

リターンとリスクは表裏一体、でもリスクは小さくできる

リスクを避けようとするのは人間の生存本能であり、決して悪いことではありません。でもリスクを完全に避ければリターンは得られません。まず、リスクとリターンは表裏一体、コインの裏表だと覚えてください。基本的に「ローリスク・ハイリターン」の金融商品はありません。

では、ここで質問です。実は「元本保証で年利10%」という金融商品が世の中には存在するのですが、みなさん、投資したいと思いませんか。

そんな夢のような商品が……?? 実際にあります。あるのですが、それは詐欺商品です。この低金利時代に、元本保証で年利10%の商品があるはずはないのです。よく考えればわかることも、信頼している人の話やふわっとした会話の中では、つい信じてしまうことがあります。「リスクなしでリターンだけがある」話はまず詐欺だと疑う──この点はお子さんにもしっかりと教えてあげてください。

ローリスク・ハイリターンが良いけれど──

上図は代表的な金融商品におけるリスクとリターンの関係を示したイメージ図です。何に投資するかによってリスクやリターンの大きさは変わってきますが、大きなリターンを得るには、大きな値動きが必要です。しかし値動きは上だけでなく、必ず下にもあり得ます。その値動きのブレ幅がリスクです。

預貯金や債券はローリスクなかわりにローリターン。株式はハイリスクだけれど、ハイリターンを得られる可能性が高まります。投資信託は商品によってリスクとリターンはさまざまです。

リターンとリスクがコインの裏表とはいっても、できるだけ下ブレを小さくする、すなわちリスクを抑える方法はあります。人生でいえば「地震は避けられないけれど、被害が最小限で済むように耐震補強をしておく」とか「自転車で転ばないようによく練習しておく」のと同じ。投資におけるリスクのコントロールの仕方は、この連載で次回以降、具体的にお伝えしていきます。

投資の目的は自分の利益だけではない

投資のリスクをゼロにすることはできません。本当にリスクが怖くて、日常生活にも支障をきたすというなら、もちろん「投資しない」選択肢もあります。

ただ、「お金がないから投資を始められない」というなら、むしろいち早く投資を始めていただきたいと思います。現状、預貯金ではほぼお金は増えませんから、時間を味方につけて「投資しながら貯める」と発想転換していただきたいのです。

一方、「お金が使いきれないほどあって増やす必要がない」という人は投資をしなくてよいかというと、むしろそういう人ほど投資をしています。それは「投資が社会をつくること」だと理解しているから。

投資先の企業の活動は、自分が今生きている社会、さらにはもっと先の子どもや孫の時代の社会をすばらしいものにする一翼を担っています。もし気候変動への取り組みをしなければ地球が危機的状況だと感じているなら、環境への配慮に力を入れている企業に投資をするという選択もできますし、この先半導体が世界を明るく変えると思えば、半導体関連企業に投資をすればよいのです。

特定の一社の株を買うこともできますが、リスクコントロールの観点からいうと、いくつかの会社の株を組み合わせたパッケージ商品である投資信託(ファンド)を選ぶのも一手です。投資信託には環境問題に力を入れている企業の株を集めた商品や半導体関連企業の株を集めた商品もあります。運用はプロである運用会社が行います。運用会社はときに株主として企業に、環境や社会課題解決に向けた施策の推進などを求め、変革を促すこともあります。つまり、投資をすることは、間接的にそうした活動を応援し、豊かな世の中づくりに参加することでもあるのです。

まさに投資は、自分たちがつくる未来、叶えたい未来への一票であることを改めて強調しておきたいと思います。

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プロフィール

伊藤雅子|アセットマネジメントOne未来をはぐくむ研究所長
2003年興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現アセットマネジメントOne )入社。外為マーケット経験を生かし、専門的な話をわかりやすく伝えることを第一に投資信託の普及に努め、20年に渡り営業員向け研修や一般投資家向けセミナーなどで講演。
個人の資産形成、ファイナンシャル・ウェルビーイングや金融経済教育の分野における啓発・普及活動を目的として、2023年10月にアセットマネジメントOne内に未来をはぐくむ研究所を設置、初代所長に。
アセットマネジメントOne未来をはぐくむ研究所のHPは>>こちら
※本記事は情報提供を目的とするものであり、投資家に対する投資勧誘を目的とするものではありません。

構成/古屋江美子 撮影/五十嵐美弥

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