【サイエンス博士が教える身近な自由研究】シャボン球が割れない条件は?服の素材は何でできている?アイデアを頼りに自分だけの作品を

「自由研究」のテーマ選びに頭を抱えているお子さん・パパママに朗報。大げさな実験道具や特別な体験を用意しなくても、家の中や身近なスペースに研究のヒントがたくさんあります。「おもしろサイエンス」を指南する科学ジャーナリスト・ゆーまん博士に、困ったらこれ!の自由研究のヒントを紹介してもらいました。

その1:服の素材を調べよう

リネンや綿、ポリエステルなど、服にはさまざまな素材が使われています。服のラベルを調べ、生地の特徴と素材の関係を調べましょう。

まずは洗濯表示マークの解読からスタート。それぞれのマークにはどんな意味があるでしょうか

服のラベルには乾燥機を使えなかったり、手洗いしないといけないなど服の扱い方も書かれています。素材と表示の関係を調べ、たとえば手洗いの指定をされているのはウールと一部のコットンといったように分類します。

生地と洗い方の関係がわかれば、それで自由研究は完成です。そこからさらに、素材ごとの洗剤での汚れの落ち方などに踏み込めば、先生もビックリです。

捨てる予定の服や生地があれば、素材の違いによる汚れの落ち方を調べましょう。同じサイズに切った生地にしょうゆやケチャップなどをつけ、30分放置した後、水洗いします。どこまで汚れは落ちましたか?  他にも吸水力や保温力の違いを調べてもいいですね。

汚れやしみの種類によって、その落とし方はさまざま。布や洗剤によっても変わってくるので、実験・まとめ方もバリエーションに富んできます

その2:種を育てよう

いろいろな種を探しましょう。トマトやスイカ、キウイ、ブドウ、普段は見逃しがちな種が台所にはたくさんあります。種から植物のことを調べます。

ふだん食べている食材には「種」がいっぱい。身近な食材からどんな種類の種が手に入るでしょうか

余裕があれば、種を植えてみましょう。イチゴの種は発芽するでしょうか? ピーマンやカボチャはどうでしょう。

種は腐りやすいので、しっかり果肉を洗い流しておきます。コップの水に入れ、沈んだものだけを選びます。濡らしたキッチンペーパーや脱脂綿の上に種をまき、乾燥を防ぐためにラップをかけたら発芽するまでを観察します。

すぐに発芽するとは限らず、イチゴのように発芽まで2~3週間かかったり、ピーマンやカボチャのように発芽には土の温度が35度前後必要な場合もあります。

比較的発芽しやすいのがブドウやスイカの種です。発芽のさせ方をネットや図書館で調べながらチャレンジしましょう。

あ、発芽した!(画像はイチゴ)

その3:本のことを調べよう

小学生になると本をよく読むようになると思います。でも本って何なのでしょう?

子どもの読む本と大人の読む本の違いから調べてみましょう。すぐにわかるのは文字の大きさの違いですね。大人の本の文字は小さく、子どもの本の文字は大きい。他には何が違うでしょうか?  余白の大きさや表紙のデザインも違いますね。そうやって違いを並べていくと、モノとしての本が見えてくると思います。

ではなぜ大人の本と子どもの本は違うのでしょうか?  そこからどう広げていくかは子ども次第です。たとえば同じように子ども向けがあるお菓子も、子ども向けはカラフルなパッケージなのに大人向けのパッケージが地味なのはなぜか。文字のサイズや色が違うのはなぜか。

正解を探す必要はありません。どう考えたか、その理由をまとめられることが重要です。

製本にも注目。表紙が硬いハードカバーと、柔らかく手になじむソフトカバーは、それぞれどんな本に採用されているでしょうか。背が角ばっているもの、丸いもの、背がなく折り目しかないものなど、いろいろな特徴に着目してみましょう

その4:跳ねるシャボン玉

シャボン玉はすぐに割れてしまいますが、軍手のようなケバ立った布の上には壊れずにのせられます。不思議ですね。1~2回ならポンポンとボールのように跳ねさせることもできます。

シャボン玉が手にのった!

さまざまな素材を使って、シャボン球が割れない条件を探しましょう。まな板やお皿、プラスチック、服、タオル、いろいろ試しましょう。

なぜ軍手の上でシャボン玉が割れないのかといえば、軍手の表面がケバ立っているから。シャボン玉に触っているケバの本数だけ圧力が分散し、1本あたりの圧力がシャボン玉を割るほど大きくならないからです。剣山のような針がたくさんついたものに手を押し当てても痛くない、という例を見せてあげるとわかりやすいと思います。

となると、ケバ立ったものの上なら割れないのでしょうか?  セーターは? スポンジは?  ケバ立ったものを探しましょう。

割れにくいシャボン玉にするには、シャボン液に砂糖や洗濯のりを混ぜるとよいのだとか。いろいろ実験してみて「自分史上最強のシャボン液」を追求してみても

他にも自由研究のヒントがいっぱい!

【ゆーまん博士の自由研究・虎の巻】
↓↓ほかのテーマは下記リンクから ↓↓

虎の巻2:リビングで、お庭で… 家の中のものでできちゃう研究テーマ編

虎の巻3:町中へ、外へ… 親子でアウトドア派におすすめ!の研究テーマ編

【ゆーまん博士のアドバイス】「比べる・やってみる⇒なぜかを考える」が科学論文の基本

自由研究は何をやってもOKなんですが、書き方がわからないというお子さんも多いでしょう。自由研究をまとめると、それは論文になります。論文の書き方にはルールがあります。

科学論文は次の項目で成り立っています。

・要約……どんな実験を行ったのかの概要です。
・序文……なぜこの実験を行ったのかを理由を説明します。
・実験方法……実験方法の解説です。
・実験結果……実験した結果をまとめます。
・考察……実験結果から何がわかるのかをまとめます。

自由研究も基本は同じです。テーマを決める・調べる・考える、この3項目の流れを押さえれば大丈夫です。

科学と聞くとつい身構えてしまいますが、自由研究のテーマは科学に限りません。建物の階段の段数の違いでも電信柱の位置でもなんでもいい。調べてまとめて考えることが重要です。

正解を探す必要もありません。コップを真上から見たら円形に見えるように、見る位置で物事はさまざまに形を変えます。その変化を見つけ、楽しむことが自由研究の本質です。正解探しではないし、正解なんてないんです。あるのは、「わかっていること」だけです。今年の夏は自由研究で自分の力で「わかる楽しさ」を体験してください。

ゆーまん博士とは…

川口友万 | サイエンスジャーナリスト
富山大学理学部物理学科卒業後、企業での出版・広告・編集の仕事を経てフリーライターとして独立。「サイエンスにもっと笑いを!」をモットーに、「科学の常識」と「社会が持っている知識」との乖離を埋める科学エンターテイメントを目指す。多数の著書がある他、科学実験イベント、講演、科学監修など広く活動。HugKumでは、「ゆーまん博士の最新科学Catch UP」が好評。

構成・文/川口友万 イラスト/まめこ

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