【発達障害の女の子】子どもが思春期を迎える前に、親が「障害」を受け入れることがとっても大切なワケ。療育アドバイザーが教える自己受容の大切さ

発達障害の女の子の支援キャリア20年の藤原美保さんは、「放課後等デイサービスLuce」を10年近く運営し、発達障害の女の子とその保護者をサポートしてきました。2022年5月からは障害のある子が保護者と共に利用できる脱毛サロンを主宰されています。思春期を迎える前に自分の特性を認めて自己受容することの大切さを教えていただきました。

親が子どもの障害を受け入れないと、子ども自身の受容はできない

自己受容とは、障害を持っている自分を認め、それを自分の一部として受け入れること。障害のある子どもが支援を受けるためには、本人が自分の障害を受け入れることが大切です。しかし、自己受容ができていないと、必要な支援を本人が拒んでしまうことがあります。

 特に、女の子は男の子と比べて、障害に対する自己受容が難しいと感じます。親が子どもの障害を受け入れていないと、子ども自身も自分の特性を受け入れにくくなります。この傾向は男女ともに共通していますが、女の子の場合、特に複雑な心の動きがあります。知的障害がない、または知的境界域にいる女の子では、親が障害を受け入れるのを先延ばしにするほど、問題が深まることが多いです。

 親が気を付けるべき、女の子の障害受容のサポートポイントとは

女の子が自分の障害を受け入れやすくするためには、親御さんのサポートが大切です。以下のポイントを意識すると良いでしょう。

・女の子は、親の障害に対しての価値観に敏感です

親が障害に対してマイナスなイメージを持っていると子どもは敏感に察知します。女の子は男の子より共感性が高く孤立する事への不安も強い傾向があります。お子さんは、親が障害のある方に対してどのように思っているか?対応はどうか?などを普段の生活の中で聞いたり見たりしています。差別的な言動などにも十分配慮していただければと思います。親が娘の障害受容が遅れる事のデメリットとして、子ども自身が自分に特性がある事を恥ずかしい事、悪い事だと思い、隠そうとするようになってしまうということがあります。

・「みんなと同じ」であることにこだわる傾向があります

男の子は自分が楽になることに価値を見出す場合が多いのに対し、女の子は「みんなと同じ」であることを重視する傾向が強いのです。学校の宿題を例にとると、合理的配慮として、男の子であれば宿題の内容を変更したり量を減らすことで対応できることが多いのですが、女の子は、「なぜ自分だけが違うのか」と感じてしまう傾向が強いため、その子だけ宿題を減らすのではなく周囲の子と同じだと思ってもらうような工夫が必要になります。さもないと、出来ていないのに出来ているようにふるまったり、周囲に悟られないように嘘をついたりするケースも出てきます。

・思春期前に障害を受け入れるサポートを

思春期に差し掛かると、周囲との違いに気付き始める子が出てきますが、この時期から「障害特性のある自分」を受け入れることは難しく、支援を受けいれられなくなるケースが増えます。

特に小学校までは、発達障害の診断を受けるのは男の子が多いことから、女の子は孤立感から不安になります。この時期に保護者が娘の障害を受容できたとしても、本人が障害を受け入れづらく「どうして自分だけが」といった思いが強くなり、自分や家族を責め始めることがあります。

この時期は、ホルモンの影響や精神のアンバランスさから不登校や摂食障害などの問題が発生する子もいます。無理に障害を受け入れるよう促すと、問題行動が悪化することもあります。思春期以降は人格形成が進むため、親の意向だけで支援を進めることはますます難しくなります。

以上の理由からも女の子の場合、障害についての自己受容を考えた支援は思春期前の幼いうちから始める事をおすすめします。

支援を拒んで、家族への暴言や暴力行為が始まってしまった16歳

以前私が受けた相談の中で、通信制に通う16歳の女の子のケースです。相談に来た時には既に支援を受けるのを拒み、家族への暴言や暴力行動が始まっていました。

母親は自分なりにストレスを解消しながら対応していたのですが「娘に内緒にしている」という発言があったので、なぜ内緒にしているのか尋ねると、娘が「お母さんだけ楽しんで!」と怒り、暴力的になるからだと話していました。彼女は親が自分を認めていないと感じているような発言が多く、自分を賞賛するよう要求する事もあるそうです。もちろん認知の歪みもあるので、不自然な要求内容なのですが、このように、幼いうちから障害についての自己受容ができていないと、親子関係が悪化することがあります。

「私だけじゃない」と感じられるような支援を受けられる放課後等デイサービスを

更に、孤立を感じさせないような環境設定も必要になってきます。小学生のうちは、男の子に比べて発達障害の顕在化が少ないので、女の子の場合は「自分だけ」と孤立感を抱きがちです。対人関係を作っていくために放課後等デイサービスを利用するのも一つの方法です。

放課後等デイサービスとは、障がいのある就学児童(小学生・中学生・高校生)が放課後や夏休みなどの長期休暇中に通うことのできる施設で、2012年の児童福祉法改正により設置されました。需要の高まりや社会環境の変化に対応すべく、サービスの適正化を目指してこの度2024年に法改正が行われました。今後、施設の運用形態に変化がでてくることも予想されます。女の子を対象にしたソーシャルスキルを支援してくれるところを探して利用されることをおすすめします。障害特性はさまざまですが、「私だけじゃない」と感じられるような支援は、女の子には特に必要だと考えています。

こちらの記事もおすすめ

【発達障害の女の子の身だしなみ】思春期になってからでは遅い「下着の習慣」とは?療育アドバイザーがアドバイスする経験値の高め方
女の子の下着は成長と共に変化します。幼い頃からの着用習慣が大切  女の子は成長するにつれて、体つきが変わり下着が必要になります。しかし、親...

記事監修

藤原美保さん|(株)スプレンドーレ代表

健康運動指導士、介護福祉士、保育士、公認心理師。株式会社スプレンドーレ代表。

発達障害の女の子の性教育や身だしなみ教育に力を入れてきた、放課後等デイサービスLuce(ルーチェ)を2022年3月まで運営。2022年5月から、障害のあるお子さんと保護者が通う事ができ、施術中に療育相談を受けられる美容・脱毛サロンLuceを運営。発達障害のお子さんの療育アドバイザーとして相談や療育コンサル、発達障害のお子さんへのオンラインでの性教育を行う。著書に『発達障害の女の子のお母さんが、早めにしっておきたい47のルール』(エッセンシャル出版)、『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること』(PHP研究所)がある。

YouTubeで「子どもの対応おたすけチャンネルMamma mia」を配信中

編集部おすすめ

関連記事