【作業療法士監修】赤ちゃん、幼児、小学生別「発達障害」の子供の特徴チェックシートと対処法

発達障害の子供の特徴を作業療法士が解説

はじめてのお子さんの子育てだと、子どもが見せるようすが、成長過程にあるふつうのことなのか、気にしてケアしてあげた方がよいのか、わからないことがあります。わが子だけを見ているときにはわからなかったけれど、子育て広場や幼稚園、保育所などに行き、ほかの子のようすを見て「あれ?違う?」と気づくこともあります。

発達障害がある子には、どんな特徴があるのでしょうか?
作業療法士の木村順先生に伺いました。

 

「うちの子、ほかの子と違う?」赤ちゃんの頃に気付くポイントは

発達障害は目に見えてわかりやすい障害ではないため、周囲はもちろん親自身も気づいてあげることが難しいものです。上に何人も兄姉がいて、たくさんの子の子育てをしたお母さんや、保育士などの専門職経験者で、多くの子の育ちを見てきた人であれば、お子さんが小さい時から違和感のようなものを感じる可能性はありますが、生後まもなくからその特性を見極めるのは難しいものです。

赤ちゃんのころの「発達障害」の特徴

一口に「発達障害」と言っても、その特性や程度はひとりひとり違います。そのため、気になる特徴も違うものですが、赤ちゃんの頃によく見られる特徴には下のようなものがあります。

□抱っこをしてもしっくりこない

子どもの方からぴたっとくっついてこない。抱っこを要求してこない。慣れた人にしか抱きつかないなど。

□おんぶをしてもしがみついてこない

体がふにゃっとしていて、しがみついてこない。後ろに落ちそうになるので抱っこひもを使っておんぶしないと不安。

□歯磨き、散髪、爪切り、耳掃除などを極端に嫌がる

清潔や健康維持、身だしなみのために、当たり前に行うお世話を激しく拒否され「育てにくい」と感じやすい。

□砂、水遊びなどを嫌がるか過剰に好む

一般的に子どもが好きだといわれる砂遊び、水遊びなどを激しく怖がったり、嫌がったりする。逆に触り続けてやめられないことも。

□偏食が強くて、食べられないものが多い

限られたものしか食べられず、栄養バランスが心配に。集団生活になると給食が食べられないのでは?と心配。

□あまり泣かず、手がかからない

ひとりでいても大人しくしている。あまり泣かないので手がかからない。あやしても笑わない(反応しない)など。

3歳児健診が「発達障害」診断のひとつの目安に

幼児期になると、保育所や幼稚園などに通う子がほとんどで、お友達とのようすの違いから「あら、うちの子ほかの子と違う?」と気づくお母さんも多いようです。また、3歳児健診で「ことばの遅れ」や「コミュニケーションの心配」が指摘され、専門機関を紹介されることもあります。ただ、健診の内容は自治体や医療機関によっても差があり、必ずそこで見つかるとも限りません。「育てにくさ」や「ほかの子との違い」を感じて心配なときは、健診時に医師や保健師などに相談してみましょう。地域の専門機関を紹介してくれるはずです。

幼児のころ「発達障害」の特徴

幼児期になると、園生活などの中で、お友達とのトラブルが発生し、「うちの子大丈夫?」と思い始めるお母さんも多いようです。幼児期に心配になる特徴は下のようなものです。(ごく一例であり、他にもたくさんあります)

□帽子をかぶることや腕まくりを嫌がる

通園帽や運動帽をかぶることを嫌がる。腕まくりを嫌がり服が濡れる。そのくせ濡れるとすぐ着替えたがるなど。

□2歳を過ぎても、人をかみつく、ひっかく

自分が思い通りにならなかったときなどに、お友達にかみついたり、ひっかいたり、突き飛ばしたりする。

□友だちと遊ばず、ひとり遊びの方を好む

はじめての人、場所を嫌がる。人の輪をさけるようにして、ひとりで遊んでいる。

□ちょろちょろ動き回ってじっとしていない

部屋の中を走り回ったり、ぴょんぴょん跳び回る。ひとつの遊びに集中できず、次々と遊びが変わる。

□好きな遊びにはまると、周囲の声が聞こえない

何かに夢中になると、時間を忘れて没頭してしまう。それをやめることができず、周囲と時間を合わせられない。

□身支度がいつまでも自分でできない

自分で着替えることや、着替えた服を片付けることができない。顔を洗う、歯を磨くなどの身支度も習慣づかない。

□特定の音を怖がる、逃げる、耳をふさぐ

掃除機の音を怖がる、ピストルや風船の割れる音が苦手で耳をふさぐ、ほかの子の泣き声にパニックになるなど。

□揺れる遊びを怖がる

ブランコや滑り台などで遊べない。プールで水に浮くのを怖がる。「高い高い」や肩車も怖がって嫌がるなど。

小学生の発達障害は?入学時には「就学相談」を受けられる

幼稚園や保育所は、基本的に統合教育(保育)なので、発達障害がある子も受け入れ、一緒に保育してもらえることがほとんどです。しかし、小学校入学となると、「通常級(普通学級)」でやっていけるのかな?と心配なことがあります。いっぽうで親は「通常級」に行かせるつもりなのに、園の先生などから「このままでは心配です」と助言されるケースもあります。いずれの場合も、不安があるときは「就学相談」を受けることをおすすめします。

個別の相談で、わが子に合う就学先をアドバイス

自治体によって異なりますが、就学する生徒全員に通知がくる「就学時健診」とは別に、任意に申し込み、個別に相談できる制度です。通っている園を通じて申し込むこともできます。わからないときは各地の教育委員会の「就学相談」担当に問い合わせてみましょう。相談すると個別面談ののちに、就学支援委員(小・中学校教諭、特別支援学校の教諭、心理士など)が園に出向いて、お子さんの行動観察を実施。必要に応じて知能検査なども行い、保護者が適切な就学先を選択できるようにアドバイスしてもらえます。

小学校入学後に心配な「発達障害」の特徴チェックシート

小学校に入学すると、学習も始まるため、これまでわからなかった問題が見つかる可能性もあります。学習態度の悪さや、勉強についていけないことの背景に、発達障害の特性が潜んでいることがあります。

□授業態度が悪い

姿勢が悪い。授業に集中できず人の話を聞いていない。ノートをとることができない(ノートの字が汚い)など。

□授業中に席を離れる

じっとしていられず、席を離れて教室内をうろうろしたり教室を飛び出すことも。姿勢が崩れ椅子から落ちてしまう。

□読み書き計算が苦手

特定の教科が理解できない。読むこと、書くこと、計算など学習の基礎のところでつまずく。眼球運動が悪く板書ができないなど。

□やる気がない

姿勢を保つことができず、机につっぷしたり、椅子をゆらゆらしたりしているためやる気がないように見られる。

□人の気持ちがわかりにくい

人の表情を読むことが難しく、相手の気持ちを察することが苦手。その場、その時、その人に合わせて行動することが難しい。

□極端に不器用

体育や図工、音楽、家庭科など手先指先を使う動きが苦手。体の動きもぎこちないため、体育も苦手。チーム競技で仲間に怒られる。

□忘れ物が多い

時間割が揃っていなかったり、宿題など提出物を忘れることが多いため、だらしがないと思われる。保護者にも手紙が届かない。

子ども自身が「できなくて困っている」という視点をもって

リストはごく一部の例で、細かくわけるともっとたくさんの特徴があります。また、これらのリストは親や大人にとって「困ること」と思いがちですが、子ども自身が「できなくて困っていること」という視点が大切です。困っているわが子をサポートするために、親や周囲がどんなことができるのか見直してみてください。

 

お話を伺ったのは…

木村 順先生

作業療法士(OT)。1957年生まれ。日本福祉大学卒業後、金沢大学色湯技術短期大学部(現在、金沢大学保健学科)作業療法学科にて資格取得。東京都足立区の「うめだ・あけぼの学園」で臨床経験を積み、2002年3月に退職。2005「療育塾ドリームタイム」を立ち上げ、発達につまずきのある子どもの保護者の相談や療育アドバイスを行う。保育・教育者向けの講演会も多い。著書に『育てにくい子にはわけがある』(大月書店)『小学校で困ることを減らす親子遊び10』(小学館)など。二女一男の父でもある。

『発達障害の子を理解して上手に育てる本 幼児期編』
ためし読みはこちら

 

『6~12歳 発達が気になる子を理解して上手に育てる本 「小学校で困ること」を減らす親子遊び10』

ためし読みはこちら 

文/江頭恵子 イラスト/高野真由美

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