子どもの体重はやはり気がかり。みんなの問題意識を617人のママパパに調査
まずは、お子さんの体重に関するアンケートへのママパパたちの回答をご紹介していきます。
【調査概要】回答者:HugKumメルマガ会員617人 調査時期:2024年11月 調査方法:インターネットアンケート
お子さんの体重は気になる?
みなさんからの回答を集計してみると、「ある」が383票、「ない」が234票との結果に。お子さんの体重を気にするママパパのほうがより多いことがわかります。
子どもの体重で気になることが「ある」人は、何が気になる?
また、「ある」と答えた方が、子どもの体重について気にした内容も訊ねてみました。
すると、もっとも多かったのは「平均的な成長曲線に対して体重が少ない(194票)」。次点で「平均的な成長曲線に対して体重が多い(148票)」に票が集まりました。
少数派ではありますが「短期間で急に太った(55票)」「太ったり痩せたりを繰り返す(11票)」「短期間で急に痩せた(8票)」にも票が寄せられています。
「その他」としては、さまざまな回答がありましたが、中でも目立ったのは「夏休みや冬休みに太ってしまう」といったものでした。
お子さんの「体重の少なさ」「体重の多さ」はどんな心配につながっている?
こちらの質問では、「体重の少なさ」に関しては、「健康(191票)」と「体力(180票)」への票が圧倒的に多い結果に。
一方、「体重の多さ」に関しては、「健康(141票)」のほか、「体力(運動能力)(109票)」や「容姿(101票)」にも多くの票が集まりました。「将来の成人病など(80票)」「いじめ(59票)」「コンプレックス(59票)」への投票数はいずれも50票を超えて、健康面・容姿面にかかわらず票がばらついた印象です。
子どもが肥満の家は、家族も肥満?
こちらの質問では、「両親ともに肥満の傾向がある(49票)」「父親に肥満の傾向がある(47票)」「母親に肥満の傾向がある(43票)」等、両親もしくは片方の親に肥満の傾向があるとの回答に同程度の票が集まりました。
一方で、「家族で肥満傾向があるのは子ども本人だけ(39票)」へも僅差で票が寄せられています。
子どもの肥満についての問題意識のあり方
お子さんの肥満についての問題意識のあり方についても聞いてみると、もっとも多数の票が集まったのは「子どもの減量は程度の問題(少しくらいならいいと思う、太りすぎたら考えるべきだ)(248票)」。
その後は、「子どもの体重は親の責任(211票)」、「子どもでも肥満であれば減量すべき(209票)」、「子どものうちから体重を気にしすぎるのはよくない(181票)」が続く結果に。
「子どもの体重は遺伝が大きいと思う(135票)」「赤ちゃんの頃から成長曲線を意識したほうがいい(124票)」といったものも目立ちます。
「その他」としては、以下のようなコメントも見受けられました。
将来太りやすくなるかは3歳までに決まると聞いたので未就学児の時は意識した(女性)
環境要因が大きいと思う。親が太っていると、子どもも同じ食習慣・生活習慣になりやすく、体重も増えやすい(女性)
本当に太っている?「肥満かどうか」の判断方法を小林正子先生に聞く
みなさんからのアンケート結果を俯瞰してみると、子どもの体重に関する不安を抱える親御さんが少なくないこと、また、体重が多いことによる気掛かりは健康面・容姿面等、多岐にわたることが伝わってきましたね。
今回、このアンケート結果を受けて、子どもの発育の研究に長年携わってきた女子栄養大学客員教授の小林正子先生にインタビューを実施しました。この稿では【分析編】として、「肥満かどうか」の判断方法や遺伝との関連についてを教えていただきます。
体重だけで判断するのはNG
(以下、小林先生談:)アンケート結果を見て、多くの方が体重そのものを問題視する傾向にあるように思いました。体重とは、からだを構成するすべてのものの総合量です。ですので、単に「重い」「軽い」だけを問題にするのではなく、体重の中身について考えることが大切です。専門的にはそれを「身体組成」といい、体重は「脂肪量」と「除脂肪量」を合わせたものと言えます。
「除脂肪量」は脂肪以外のものの量で、「骨・筋肉・血液」を含む「脂肪以外のすべて」を指します。これらはからだになくてはならないもの、特に成長する子どもにとっては増やさなくてはならないものです。
アンケートでは、「低年齢の子どもでも体重によってはダイエットを検討する」といった回答もありましたが、単に食事量を減らして体重を落とそうとすると、結果的に脂肪だけでなく骨や筋肉などの除脂肪も減ってしまい、痩せて弱々しいからだになってしまいます。肌は荒れてハリがなくなり、免疫力も低下するでしょう。さらに、栄養が不足して身長も伸びなくなります。
子どもの適正体重を知るには? 成長曲線・肥満度の見方
(小林先生:)体重に限らず発育全般を見守るためには、まずは成長曲線を描いて、子どもの発育状態と健康状態を把握することをおすすめします。
成長曲線とは、ある年に測定した同年齢の子どもの身長および体重が、その集団の中でどの程度であるか(何パーセントであるか)を示し、各年齢を結んでパーセンタイル曲線として表すものです。
母子健康手帳に、「身体発育曲線」という名称で6歳まで書き込める表が載っているので、活用してみましょう。


(小林先生:)成長曲線で、身長と体重のバランスを見てみましょう。身長と体重のパーセンタイル曲線が、大体同じくらいのレベルであれば、太っているとか痩せているという問題はありません。身長のレベルが高くて体重が低いレベルなら痩せ気味、その逆で身長が低いレベルで体重が高いレベルであれば肥り気味ということになります。
また成長曲線を確認していて、ある時急に身長や体重が止まったり、体重の変動が大きかったりした場合、原因について思い当たることがないのであれば病院を受診してください。その成長曲線を持参すれば、医師はどのような検査をすべきか判断しやすくなるはずです。
▼成長曲線の詳細はこちらの記事を参照

(小林先生:)また、体重の管理を考える場合には、肥満度を把握する必要があります。以下が「肥満度判定曲線」です。
肥満度とは、子どもの体重が標準体重に対してどの程度隔たりがあるかを%で表すものです。そこで、もし測定した体重が標準体重と一致していたら肥満度は0%ということになり、多ければ+になり、少なければ-の値が示されます。
(小林先生:)身長(x軸)と体重(y軸)の交わる位置を確認してください。すでに引かれている曲線を標準とし、幼児期は±15%、学童になると±20%が肥満・痩せの目安となります。
ただし、もともと身体が大きい子どもは、肥満ではなくても20%を超えてしまう可能性があります。しかし、明るく元気であればその数値にこだわることはありません。逆に、肥満度が高く、肌にハリがない、怠そうにしている場合は一度かかりつけの小児科医に相談されるとよいでしょう。
さらに、年齢が上がると体脂肪率を見ることも必要になります。体脂肪率がわかれば、先ほど述べた徐脂肪率(「骨・筋肉・血液」を含む「脂肪以外すべて」の量)も知ることができるのです。
市販の体脂肪計付きの体重計では小さな子どもの体脂肪率の出力は難しく、朝と夜では数値が大きく異なる場合もあります。もし学童期に肥満や小児生活習慣病を心配するのであれば、病院などで体脂肪率を測定してもらいましょう。
BMIを子どもに用いるのはおすすめできない
(小林先生:)身長と体重から肥満度を示す指標として、BMIを連想する方もいるでしょう。大人のBMIの標準値を22と記憶している方も多く、子どもにも適応されると思い込んでいる方もいるかもしれませんね。しかしながら、この標準値はあくまでも大人を対象としたもの。小学1年生の標準値は15〜16、それが徐々に上がっていって、高校3年生でようやく21程度になります。
なので、例えば身長と体重から“18”という数字が出れば、「痩せている」と判断しそうになりますが、年齢によって異なり、12歳くらいでは標準です。値だけで判断しにくいことから、お子さんに関してはBMIを用いることはおすすめできません(ただし幼児期は変動が少ないため、カウプ指数として使われています)。
子どもの体重は親からの遺伝?遺伝との関係について
(小林先生:)アンケートの回答には、「子どもの体重は遺伝が大きいと思う」といった声も見受けられました。しかしながら、日本肥満学会では「肥満は3割が遺伝、7割が生活習慣によるもの」とされているように、肥満の原因のほとんどは生活習慣にあると考えられます。
「肥満遺伝子」という遺伝子が存在し、それを持つ人は持っていない人よりも基礎代謝が低くなることが報告されているのも事実です。一方、「肥満遺伝子」を持つ人の割合が世界的に高い日本人の肥満人口は、欧米人に比べて少ないのです。これは野菜を取り入れた脂質の少ない和食によって、基礎代謝が低くなるリスクを補っていることが要因になっていると考えられます。
すなわち、たとえ遺伝子的には太りやすくても、食事をはじめ、良い生活習慣を身につけていれば肥満にはなりにくい、ということを示しています。
子どもの肥満の【対策】については後編にてお伝えします!
今回は、お子さんの体重についての懸念点や不安要素、問題意識についてのママパパ617人へのアンケート結果をご紹介した上で、小林先生に「肥満かどうか」の判断方法を中心にお聞きしてきました。
先生からのお話にもあったように、お子さんの体重を気掛かりに感じている方は、ぜひ一度「成長曲線」や「肥満度判定曲線」を確認してみてくださいね。子どもの肥満の対策については、引き続き、後編記事にてお伝えしていきます。
小林正子先生の著書『子どもの異変は「成長曲線」でわかる』

教えてくれたのは

東京大学教育学部助手、国立公衆衛生院(現 国立保健医療科学院)室長を経て、2007年から2020年まで女子栄養大学教授。
発育の基礎研究のほか「発育グラフソフト」を開発し、全国の保育園、幼稚園、学校等に無償提供し、成長曲線の活用を促進。発育から子どもの健康を守る重要性を啓発している。著書に『子どもの足はもっと伸びる! 健康でスタイルのよい子が育つ「成長曲線」による新子育てメソッド』(女子栄養大学出版部)、最新刊に『子どもの異変は「成長曲線」でわかる!』(小学館新書)
こちらの記事もおすすめ

取材・文/羽吹理美