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家族がチームとして動いているので大変だとは感じない
5人の子どもを育てているだけでなく、モデル、さらにピラティススタジオでオーナー兼インストラクターとしても活動されている鈴木サチさん。子どもは14歳の女の子、12歳、5歳、2歳、0歳と4人の男の子の5人です。忙しい毎日だと想像しますが、一体どんな風に子育てをしているのでしょうか。
――5人お子さんがいると、毎日大変なのではないかと思いますがいかがですか?
鈴木さん:家族がチームとして動いているので、大変だとは感じません。例えば寝るとき、最近は長女が「末っ子と一緒に寝たい」というので、私は一緒に寝てないんです。
お風呂もまず私が3番目と4番目と一緒に入ります。そしてタイミングを見て上の子に5番目を連れてきてもらい、洗ったらまた迎えに来てもらいます。するとお姉ちゃんが体をふいて、保湿クリームを塗って、おむつをはかせて、ミルクを飲ませてくれていることも。
3番目があがるときも上の子が体をふいてくれ、4番目が出るときは子どもたちが「ママもう少し入る?」と聞いてくれるので、入りたいときはそう伝えて、4番目の体は同じように上の子にふいてもらっています。
――とはいえ、お姉ちゃんやお兄ちゃんが「今忙しいから無理!」って断ることもあるのでは?
鈴木さん:それはうちでは「NO」というルール。みんなで暮らしているからみんなで助け合おうねという方針でやっています。
過去には「母親はこうあるべきだ」という考えでがちがちになっていた
――そんな風に子育てをするようになったきっかけはありますか?
鈴木さん:今もワンオペですが、こうやって手伝ってくれる上の子がいるのでワンオペという感覚はありません。
ただ、1人目2人目が生まれたばかりのときは、朝から晩まで文字通りワンオペだったんです。どうやってこなそうかとイライラがすごく、仕事も忙しかったのでしっかりやらなければいけない…プレッシャーを感じて体調を崩し、一度救急車で運ばれてしまいました。ストレス性胃腸炎でした。
当時は今とは違って、月曜日から金曜日までちゃんとご飯を作る、子どもたちのお菓子は土日だけOK、コンビニやお惣菜はNG、冷凍食品は絶対に買わないと決めていて、”母親はこうあるべきだ”という考えでがちがちになっていたんですね。
でもそうやって「自分を犠牲にしても子どもが一番だ」、みたいなことをしても結局倒れてしまった。そこからそれはやめようと思いました。
例えば、金曜日の夜は早めにお風呂に入って、リビングに敷いた布団の上で買ったポップコーンを食べながら『金曜ロードショー』を見ようって。今まではダメだと思い込んでいたそんなことをできるようになったのが第一段階の取っ払いで、そこからどんどん楽になっていった気がします。
もっと自分を見つめて、自分を愛してあげようとも思った
――そういった過去の経験があったんですね。
鈴木さん:自分のことをおろそかにしている人間が人のことを愛せないよね、みたいな極論にも達して。もっと自分を見つめて、自分を愛してあげようとも思いました。
ちょっとしたことですが、目の前に水が2本、お茶が1本あったら、今まではお茶を飲みたい人がいるからもしれないからと勝手に気を遣って水を選んでいた。そうじゃなくて、お茶が飲みたいならお茶を選んでもいいじゃないかって。
誰からもダメとは言われていないのに、勝手にルールを作って決めつけてたのって全部自分なんだなって。そこから「ママはお風呂にもっと入りたいから入る。みんな、下の子たちよろしくね」ということができるようになりました。
些細なことだとしても自分を大事にして愛せるようになると、みんなも穏やかになりましたね。ママがイライラすると子どもにも伝わるから。
――自分でやらなきゃいけないと思い込み、結果的に疲れてイライラすることってママにはよくありますよね。
鈴木さん:そう、でも子どもたちからしたら、追いつめられるまでやってほしいなんてお願いしてないって感じだと思う。だったらご飯はカップラーメンでいいから、ママにご機嫌でいてほしいんじゃないかな。手抜きをしていいと思う。
例えばクッキーも手作りしなきゃいけないってずっと思い込んでいましたが、3年前くらいに製菓道具を全部捨てました。美味しく出来上がったものがコンビニに売ってるから買えばいいよねって。「母親はクッキーを作らなきゃいけない」って考え自体を捨てる。子育てをするなかで、その時間と労力をほかに使おうって考えが変わっていったんです。
ご飯だって、イライラしながら作るよりも、「今日ちょっとマックでいいかな?」って外食に頼る。子どもなんてうぇーーーい!って大盛り上がりですからね(笑)。マックは最強です。
ドーラになっちゃう!? 子どもに任せることは子どものためにも、自分の息抜きにも
――なんでもかんでも自分でやろうとしていないんですね。
鈴木さん:今まではしていたんです。でも『天空の城ラピュタ』に出てくるドーラってわかりますか? 作中に出てくるドーラの子どもたちはいい大人なのに「ママ~♡」って頼りきりですよね。
ドーラはなんでもできてかっこいんですよ。でも冷静に見ると、親が全部やってあげると子どもはあんなふうになっちゃう。「ドーラになっちゃう説だな」と気づいたんです(笑)。
モンテッソーリ教育を学び、子どもが自分でできるようにやり方を教えるように
鈴木さん:うちにはウォーターサーバーがありますが、子どもからよく「ママお水入れて」と言われます。手が空いていたらやるけど、自分でできるやり方も教えるようにもしています。
2歳くらいになると「自分でやる!」って言うときがあるじゃないですか。そう言われたら、どれだけ水がこぼれようが、絶対にやらせるんです。こぼれたことに対して「なんでこぼしてるの!!」じゃなくて、「こぼれるからその手前で止めるんだよ、こぼれたらこれでふくだけだよ」って教える。子どもは教えればできるようになるんです。
これは3番目からモンテッソーリ教育を学んで、実践するようになったことです。
この間もりんごを切っておいたら、その3番目が今はリンゴを食べたくないからとラップして冷蔵庫に入れておいてくれました。そのとき「ラップが上手できなかったかも」と言うから、「全然いいよ」って。「ラップをかけられたことがいいんだよ」って成功例を積み重ねるようにしています。
――こぼされると嫌だなとつい親が手助けしがちですよね
鈴木さん:そうするとできないままなんですよね。私は特に2番目に手をかけすぎてしまった思いがあって、彼は今でも人から話しかけると自分で話さずにまず私を見ちゃう、で、私もつい答えてしまう。病院でも先生から症状を聞かれると、私が「昨日の晩から~」って答えちゃう。よくないなと思って最近は自分で話すように促しています。
子どものためにぐっとこらせてあげないと。任せるというのは子どものためになるんです。そしてそれは自分の息抜きにもつながると思います。
例えできなくても、やってくれて嬉しい気持ちを伝えたり、お姉ちゃんにはありがとうとともに、「もうちょっとこうするとさらにいいよ」ってレベルアップできるように伝えると、最近では「ママそのやり方だときれいにならないよ」って逆に教わることも増えましたね。”出来ないママ”が子どもの成長につながると思います。
――上の子が下の子を手助けすることはどう考えていますか?
鈴木さん:親が手を出し過ぎるのはよくないと思うんですけど、兄弟間での手助けはいいと思いますね。「やってあげてー!」ってよく言っています。
親がやってくれるのは当たり前だけど、お兄ちゃんお姉ちゃんがやってくれるのはちょっと特別で、それを受けて、今度はそれを下の子にもやってあげるようになります。
うちでは「担当!」って言うのんですけど、外にご飯を食べに行くときは、お姉ちゃんが4番目、お兄ちゃんが3番目の担当で手をつないでもらいます。そこだけ目を離さないようにってお願いして、家族の人数が多いからこそみんなでやるんだよって。最近改めてみんなでやろうねというのは大事にしていますね。

嫌なことを1つずつ減らし、やりたいことをやっていきたい
――家族でお出かけすることは多いですか?
鈴木さん:7人いると外食は2席必要になるなど、大変なこともありますがよく出かけています。
家族が多い分、持ち物の準備も大変ですが、私は7人家族にしては驚かれるほど超ミニマム。ただ先読みはして「あそこは水遊び場があるな」と思えば着替え一式を持って行ったり、お風呂屋さんに行くときもパパのパンツから防寒具からしっかり用意していきます。
必要なものはなんでもバッグから出てくるから「ママすごーい!ドラえもんみたい!」って子どもたちは大喜び。
この”先読み”ですが、おそらくパパにはできないんだと思います。それに対して私は「なんでできないの?」とか「一緒に用意してよ」とはまったく思わなくて、できる人がやればいいし、心のなかでは「ふっ!私ってすごいだろ!!」って自分をほめてる(笑)。パパも「わー!さすがさっちゃん」って言うから「そうだろ!」って(笑)。 みんなが喜んでくれると嬉しいし、楽しいんです。
これらはやりたいなと思ってるからやっていて、逆に嫌だなと思いながらやっていることは上手に手を抜くようになりました。
唐揚げは家で作らないことに決めた
鈴木さん:今、やらなきゃいけないことに追われている方は、嫌だなと思っていることを1つでもなくすといいと思います。正直洗濯物なんて畳まなくてよくて乾燥機から次の日の朝出せばいい。なんなら1週間同じ服だってもいいんです。
自分であれもダメ、これもダメとしてしまうと苦しい。 本当にきつかったら毎日コンビニのご飯でもいいですしね。
そのうえで自分が「毎日コンビニのご飯が続くのは体のことを思うと嫌だ」って思えば、時間があるときは作ってみる。どちらが嫌じゃないかということに従うといいのかな。
ちなみに私は唐揚げを家で作らないことに決めています。毎回2キロくらい作ることになるので、そうなるとずーーーと揚げ続けないといけないから嫌。お金はかかるけど、唐揚げは買ってくることにしたんです。その方がいいから。
幸せになるために貪欲に生きるために欲を素直に見つめたい
――ママとして1人の女性として、これから夢や目標はありますか?
鈴木さん:具体的なことは決めていませんが、ゴールを「幸せになるために貪欲に生きる」と決めました。どの道かはわからないんですが、自分がとにかく幸せに。そのためには自分で選んで選択をする。自分で選んだことなら人のせいにも子どものせいにもしないですよね。
”やらなきゃ、そうあるべき、そうならねば”という考え方も捨てて、他人になんと思われようが自分の欲も素直に見つめたいです。
子どもに任せて、嫌なことは1つずつ減らして上手に息抜きを
誰かに強制されたわけではないのに、母親はこうあるべき、自分は母親としてこうありたい、全部自分でやらねばならないなどと思い込み、結果的に疲れてイライラしてしまう姿には共感できるママたちが多いのではないでしょうか。
そんなときは鈴木さんのように子どもはできないと思い込まずにできるように教えて、任せること。嫌だなと思うことを1つずつ減らして上手に息抜きをすると、毎日笑顔で過ごせるのではないかと感じました。今は、週2で家事代行サービスも利用しているそう。
親がなんでもかんでもやってあげると、子どもはドーラの息子のようになっちゃう、というお話もユニークかつリアルで、子育てのヒントをたくさん教えていただいたインタビューとなりました。
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文・構成/長南真理恵 撮影/五十嵐美弥 ヘア&メイク/只友謙也(LINX) スタイリング/丸尾朋世