落ち着きのない5歳の男児。病院やファミレスで迷惑をかけて親は謝ってばかり…【愛子先生の子育てお悩み相談室】

子育ては日々悩みの連続ですね。保育者歴半世紀あまり。常に子どもに寄り添い、ママたちからの信頼も厚い自主幼稚園「りんごの木」の柴田愛子さんが、豊富な経験を元に、悩めるお母さんにアドバイス。

落ち着きのない5歳の男児。周囲に迷惑をかけて謝ってばかりいます

5歳の男の子です。病院につれて行くと、待ち時間が長くじっと待っていられなくて靴を飛ばしたり、立ち歩いて人にぶつかってしまったり。ファミレスに食事に行くと、自分がサッサと食べ終わるとウロウロ歩き回ったり、他の人をのぞいたり……事あるごとに謝っている始末です。もう、困ってしまいます。こういうとき、大きな声で叱っていいものかどうか迷います。落ち着きのない子をどうすればいいですか?

あるがままの健康な5歳の姿です。おとなの思いを察して静かにできるのは3年生くらいかな。それまで工夫で乗り切って

落ち着きがないのは家でもですか? 園生活もですか?

他ではそんなに気になっていないようでしたら、その場所や時間が落ち着かないんじゃないですか?

だいたい長い時間待っていられないのは、子どもにとっては当たり前かもしれません。子どもが長時間座って、なにもせずに黙って待つ。食事が終わっても他の人が終わるまで静かに落ち着いて待つという姿はあり得ない姿です。静かでおっとりしたタイプ、もしくは家や園ですっかり仕込まれているならできるでしょうけれどね。

例えばトラがじっとしているのは安全で心地よい場所だからですし、獲物を食べ終わってからもその場を立ち去らないなんてことはありません。動物たちは命を繋ぐために食するので、食べ終わったら去って行きます。人間は食欲を満たすだけでなく、おしゃべりなどをしながら楽しく過ごそうとします。これが人間の文化なのですが、幼い子どもたちはそこまで育っていないということなのです。まだ動物的本能が強い乳幼児期は、人間としての文化やコントロール力が身についていないのです。

でも、それでは困るんですよね。そこで、何らかの工夫が必要なのです。待合室でスマホやゲームをやらせたり、絵本を見せたりという親が四苦八苦している姿をよく見かけます。ご質問いただいたお子さんは自由になるのが靴と体だから、もてあましている自分をなんとか遊ばせているのでしょう。

病院は、小児科にかかっているのでしょうか?それとも親の診察の付き添いでしょうか?私、思うんですけど、だいたい、病院って病気の人が行く所ですよね。なのに待ち時間長すぎますよね。小児科ならなおさらです。あまり待たなくて診察してもらえるところをチェックしてみませんか?これも工夫のひとつです。待合室で待たせるのと、家で穏やかに過ごすのとどちらがいいのかを判断するのもいいですね。

ファミレスでもそうですが、子どもは食べている間だけ静か。終わるとすぐ動きだします。おとなは食後はホッと一息つきたく、おしゃべりに興じたい。子どもは食べ終わってその場に居続けることは滅多にありません。ということで、この子は子どもとしてはあるがままの姿です。

おとなと違うから困るのです。子どもに協力してもらおうという気持ちで

おとなと違うから困っている、つまりおとなだけが困っている。しかし周囲のおとなの視線は厳しいものがありますから、子どもの協力を要請するしかありません。あなたが大きな声で叱るとしばらくは静かになるかもしれません。あなたが周囲の視線が気にならないならどうぞ。

他人からは見えないけど、子どもが迫力を感じるのは、ぎゅっと手を握る。許さないという思いを込めて。これもしばらくは静かになります。

5歳ですから病院やお店に入る前に強く言い聞かすのもありです。静かだったら帰りに飴あげるとか食べ物で釣るのも致し方ないでしょう。ゲームの時間を10分増やしてあげるからと交渉もありだと思います。

ファミレスの場合は、一番の方法はさっさと出るということかしらね?外に出て、公園のベンチでもおしゃべりしたらいかがですか?夜の公園もなかなかいいものです。身体を動かしていれば、自由を与えれば、子どもは自動的に静かになります。

おとなの思いも察して、静かに待てるようになるのはいつでしょうか? 自らその場のことを想定して、本を持って行ったりノートを持って行ったりできるのは3年生くらいからでしょうかね? 当分、親の思いと子どもの思い(成長)のギャップでハラハラ・イライラさせられることでしょう。でも、小学生になると落ち着く子は多いです。それまでは、おとなが折り合いをつける気持ちでしのいでください

記事監修

柴田愛子|保育者・自主幼稚園りんごの木代表

保育者。自主幼稚園「りんごの木」代表。子供の気持ち、保護者の気持ちによりそう保育をつづけて半世紀。小学生ママ向けの講演も人気を博している。ロングセラー絵本『けんかのきもち』(ポプラ社)、『こどものみかた』(福音館書店)、『あなたが自分らしく生きれば、子どもは幸せに育ちます』(小学館)など、多数。親向けの最新刊に『保育歴50年!愛子さんの子育てお悩み相談室』(小学館)がある。

構成/Hugkum編集部 イラスト/海谷泰水

 

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