アイスクリームを食べると頭痛! これってどうやったら防げるの? 冷たいものを口に入れたときに生じる頭痛について歯科医師が解説

これからの暑い季節、アイスクリームや氷を口にする機会もあると思いますが、冷たいものを食べた時に頭がキーンと痛くなる経験をされた方は少なくないのではないでしょうか? 今回は、冷たいものを口にした時に生じる頭痛について論じます。

執筆/島谷浩幸(歯科医・歯学博士・野菜ソムリエ)

 アイスクリーム頭痛とは?

「アイスクリーム頭痛」は、アイスクリームやかき氷などの極端に冷たいものを食べた直後に数秒~数十秒の間で発症する頭の痛みのことで、正式な医学用語としても認められています。

古くから知られる頭痛で、19世紀半ばにはすでに医師による症例報告があり、国際頭痛学会では「寒冷刺激による頭痛」として分類されています。急激に鋭く出現する症状ですが、ごく短時間の一時的な痛みであるため、基本的に医療機関の受診や治療は必要ありません。

この頭痛は、冷たいものが口蓋(口の上側の奥の方)や咽頭後壁(のどの奥の壁)などを通過した直後から生じ、通常は前頭部または側頭部(頭の前から横にかけて)に痛みを感じやすいことが明らかにされています。しかし、その持続時間は短く、7割以上が30秒以内に治まるという報告もあります。

一方、この系統の頭痛は冷たい飲食物だけでなく、冷たい空気(冷気刺激)でも生じることが知られています。

このような特徴があるアイスクリーム頭痛ですが、せっかく美味しいアイスクリームを食べている時に頭が痛くなるのは、とても残念なことですから、できれば起きてほしくないものです。

ではこの頭痛について、どのような条件がその発症に関与するのかを詳しく見ていきましょう。

 アイスクリーム頭痛が起きやすい人はいるの?

2003年に台湾の研究機関で報告された研究では、8千人を超える中学生を対象として、アイスクリーム頭痛がどのような人に生じやすいのかについて解析するアンケート調査が実施されました。

その結果、アイスクリーム頭痛は約40%の生徒に認められ、女子よりも男子に多く発生する傾向があることが明らかになりました。また、片頭痛を持つ生徒に高頻度に認められたことから、体質的な要素も関係することも判明しました。

一方、2002年にカナダの大学で報告された研究では、145人の中学生を対象としてアイスクリームを提供し、食べるスピードと頭痛の発症の間に関連性があるのかどうかについて調べました。

その結果、100mlのアイスクリームをゆっくり食べた生徒の頭痛発症率が13%だったのに対して、5秒以内で素早く食べた生徒では2倍以上となる27%で頭痛が発症しました(図1)。

図1. 食べる速さとアイスクリーム頭痛の頻度の関係

これらの研究結果から、

・アイスクリーム頭痛になりやすい人がいる。
・アイスクリームを食べる速さが頭痛の発症に影響する。

といった傾向があることが示唆されました。

 アイスクリーム頭痛が起きるメカニズム

この頭痛が発生するメカニズムは、はっきりとは解明されていないのが実情ですが、いくつかの仮説が立てられています。

1)口の中や咽頭(のど)の温度が急激に低下することに対する反射として、頭蓋内の血管が拡張することで周囲組織を圧迫して内圧が上がり、それによって頭痛が生じるという説。

急に口やのどの粘膜が冷えると、血流量を増やして身体を温めようとする防衛反応が働くために血管が拡張するのです。

2)冷たいものが口の中やのどを通過することにより、その感覚を司る三叉神経が刺激されますが、アイスクリームや氷のように冷たすぎるものだと、脳が「冷たさ」ではなく「痛み」として勘違いしてしまう結果、頭痛が起きるという説。

ところで、口に関するキーンという痛みとして、「知覚過敏」が思い浮かぶ人も少なくないと思います。これは冷たい水や歯ブラシの刺激などで歯に痛みを感じる状態で、アイスクリーム頭痛と同様に三叉神経が関与します。

しかし、知覚過敏で痛みを感じるのは歯ぐきがやせるなどの問題がある歯の部分であるため(実際に感じているのは“脳”ですが)、頭が痛くなるアイスクリーム頭痛とはまったく別物であると考えていいでしょう。

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アイスクリーム頭痛だと過信しないことも大切

ここで気を付けたいのは、冷たいものを食べて生じた頭痛が、すべてアイスクリーム頭痛であるとは限らないということです。

頭痛の原因は非常に多彩であり、寝不足やストレスなどの病的でないもの(図2)が大半を占めますが、まれなケースとしてほぼ同じタイミングで他の原因による頭痛が起きることがあります。

図2. どんな時に頭痛が起きる?

急な強い頭痛が数分間治まらない場合や吐き気、嘔吐(おうと)、意識消失などの重篤な症状が出た場合は、早急に医療機関を受診するようにしてください。

原因として、脳出血やクモ膜下出血などのように緊急性が高く、時として命に関わる疾患である可能性も考えられますので、「アイスクリームを食べたばかりだから、あの頭痛だし大丈夫」と過信しないようにしましょう。

アイスクリーム頭痛を防いで美味しく食べるため提案

頭をキーンとさせずに冷たいものを食べるポイントを、いくつか挙げてみましょう。

1.ゆっくりと時間をかけて食べる

ゆっくり食べることによって、口の中やのどの温度が冷える速度を抑えることができ、血管の膨張や神経の刺激を緩やかにすることができます。

暑い日は冷たいものを急いで食べがちですが、ゆったりリラックスしながら、じっくり味わうように食べたいですね。

2.速やかに温かいものを口に入れる

食べたすぐ後に、焦らず落ち着いて温かいものを飲むなど、口とのどの温度を早く正常に戻すのが効果的です。

ただ、アイスクリームを食べて涼しさを味わおうとしているときに温かいものを口にしたいと思うかどうかは、その人の判断によるでしょう。

3.口の前の方で食べる、舌の上で溶かすように食べる

アイスクリーム頭痛を生じやすい口蓋や咽頭後壁を急激に冷やさないようにするため、口の前の方で食べる、あるいは舌の上で転がすように、ゆっくり溶かしながら食べるのもコツです。

4.舌を口蓋に押し当てる

舌の体温で口蓋を温めることで、頭痛を防ぐことが可能です。

5.おでこ(額)や頬、こめかみ周辺をアイスクリームの容器などで冷やす

これらの部位に、より強い刺激を与えて三叉神経の刺激を分散させることで、頭痛を予防することが期待できます。

 *  *  *

以上のような食べ方でアイスクリーム頭痛のある程度の予防や緩和をすることができますが、真夏の暑い日差しの下で、キンとよく冷えたアイスをがっつり頬張るのが夏の醍醐味でもあります。

夏の季節感を存分に味わいながら、アイスも美味しく味わうようにしたいですね。

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記事執筆

島谷浩幸

歯科医師(歯学博士)・野菜ソムリエ。TV出演『所さんの目がテン!』(日本テレビ)等のほか、多くの健康本や雑誌記事・連載を執筆。二児の父でもある。ブログ「由流里舎農園」は日本野菜ソムリエ協会公認。X(旧Twitter)も更新中。HugKumでの過去の執筆記事はこちら≪

参考資料:
・Fuh JL et al: Ice-cream headache –a large survey of 8359 adolescents. Cephalalgia 23; 977-981, 2003.
・Kaczorowski M et al: Ice cream evoked headaches( ICE-H) study: randomized trial of accelerated versus cautious ice cream eating regimen. BMJ 325; 1445-1446, 2002.
・第一三共ヘルスケア株式会社:20代~50代男女約800人に聞く、頭痛・生理痛に関する調査.2021.

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