E10系ってどんな新幹線?
「新幹線 E10系」とは、JR東日本が2030年に営業運転を開始する予定の新型新幹線のことです。どのような特徴があるのか、名前の由来などもあわせて紹介します。
JR東日本が2030年に導入予定の新型新幹線
JR東日本の発表によれば、新型E10系新幹線の最高速度は320km/hで、上部は明るい緑、側面は濃い緑で構成された車体になる予定です。
地震対策に力を入れており、地震による脱線や事故を防ぐ新しいシステムが導入されます。仕事や勉強向けの指定席を充実させたり、大きい荷物用の専用ドアを設置したりと、便利さもアップします。

名前に「E○系」と付くのは、JR東日本で使用されている新幹線なので「東(East)」を意味する頭文字「E」を取っているためです。
現在使用中の最新型はE8系なので、なぜ次は9系でないのか疑問を持つかもしれません。9系は、すでに検測車両や試験車両で使用している事情があるため10系になりました。
歴代E系新幹線の移り変わりを見てみよう
E系新幹線には、それぞれ作られた背景があります。当時のニーズや路線の特質と車体デザインの関係を知るとより面白いかもしれません。歴代E系新幹線の移り変わりを紹介します。
【E2系】

E2系新幹線で最初に作られた0番は、北陸新幹線の「あさま」や秋田新幹線の「こまち」と併結(へいけつ)運転する東北新幹線用の車両として開発されました。
併結とは、終着点が別々の電車が走る区間の一部を共有したり、種類の違う車両をつなげて一本の列車にしたりすることです。以下、E2系新幹線の主な特色です。
●現在走っている路線:東北新幹線
●愛称:やまびこ、なすの
●デビュー:1997年3月
●最高速度:275km/h
車体のカラーは上が白、下が青、間の帯は赤系です。北陸新幹線の高崎~軽井沢間にある急な坂に対応したパワーや、複数の電源周波数が使われた路線に対応しています。
出典:E2系|JR東日本
【E3系】

E3系新幹線は、秋田新幹線の開業に合わせて「新在(しんざい)直通運転」の第2号として開発されました。新在直通運転とは、新幹線の区間と通常の電車区間(在来線:ざいらいせん)を乗り換えなしで走ることです。
車体のカラーは、ベースが白で屋根は青、間の帯は赤系になっています。E3系の特色は次の通りです。
●現在走っている路線:東北新幹線 山形新幹線
●愛称:つばさ、なすの
●デビュー:1997年3月
●最高速度:275km/h
通常の電車区間も走れるように他の新幹線より小さめで、収納式のステップが見分けるポイントです。秋田新幹線での走行は、2014年3月に終了しました。
出典:E3系|JR東日本
【E4系】

E4系は1997年12月20日、E1系の後継として東北新幹線に登場しました。両方とも通勤通学輸送を効率化するための2階建てが特徴です。
●現在走っている路線:現在は引退
●愛称:Max
●デビュー:1997年12月20日
●最高速度:240km/h
車体のカラーは上が飛雲 (ひうん:白)、下が紫苑 (しおん:青)、間の帯は山吹 (やまぶき:黄)で後から朱鷺 (とき:ピンク)に変わりました。
後に、山形新幹線や上越新幹線、北陸新幹線(当時は長野新幹線)でも運用されましたが、2021年10月1日に全線で定期運航が終了しています。
2階建て車両が使用されなくなった理由は、車体の高さから騒音や振動が発生しやすく、最高速度が240km/h以上出せないためだといわれます。
現在は、自由席を増やした平屋タイプの車両で、多くの通勤通学客を運べるようになりました。
【E5系】

E5系は、鮮やかな上半分のときわグリーンが目印で、下半分が飛雲ホワイト、間の帯はつつじピンクの車体カラーです。特色は以下の通りです。
●現在走っている路線:東北新幹線 北海道新幹線
●愛称:はやぶさ、はやて、やまびこ、なすの
●デビュー:2011年3月5日
●最高速度:320km/h
2011年3月5日当時の国内線の中で、最高速度300km/hを誇る新モデル「はやぶさ」として登場しました。2013年3月16日からは320km/hにアップしています。
高速運転で起きる騒音防止用に、先頭車両が今までよりも平たく細長い「ロングノーズ」です。振動を抑える技術も盛り込まれ、乗り心地の快適さにもこだわっています。
出典:E5系 はやぶさ/はやて/やまびこ/なすの|JR東日本
【E6系】

E6系の先頭車両全面と屋根は、秋田の祭りやなまはげの面をイメージした茜(あかね)色です。車体はE5系と同じ飛雲ホワイト、間の帯は雪などをイメージしたアローシルバーになります。
●現在走っている路線:東北新幹線 秋田新幹線
●愛称:こまち、はやぶさ、やまびこ、なすの
●デビュー:2013年3月16日
●最高速度:320km/h
E3系と同じように、秋田新幹線の「新在直通運転」用に開発されました。安全に320km/h運転を実現するため、E5系と同じように線路を曲がるときのきしみ音や側面からの圧力を軽減する工夫が施されています。
出典:E6系 こまち/はやぶさ/やまびこ/なすの|JR東日本
【E7系】

E7系は、北陸新幹線の金沢開業用に開発され、2014年3月15日には東京~長野間に「あさま」として先に投入されました。
●現在走っている路線:上越新幹線北陸新幹線
●愛称:かがやき、はくたか、あさま、とき、たにがわ
●デビュー:2014年3月
●最高速度:275km/h
車体のカラーは、先頭車両全面と屋根が空色、車体はアイボリーホワイト、間の帯は銅(どう)色または空色に塗られています。
北陸新幹線の急な傾斜対策にブレーキが性能アップされ、複数の電源周波数に対応したシステムです。トイレのバリアフリー化や普通車の全座席にコンセントを設置するなど、車内サービスの向上にも力を入れています。
出典:E7系 かがやき/はくたか/あさま/とき/たにがわ|JR東日本
【E8系】

E8系はE3系の後継として開発され、2024年3月16日に山形新幹線「つばさ」として登場しました。
先頭車両全面と屋根はおしどりパープル、車体はアイボリーホワイトで、帯の紅花イエローは「山形の風土と離れた土地にいる人々の心の結びつき」を表現しているそうです。
●現在走っている路線:東北新幹線・山形新幹線
●愛称:つばさ、なすの
●デビュー:2024年3月
●最高速度:300km/h
最高速度300km/hを実現するため、先頭車両には9mの流線型アローラインが採用されています。E6系をベースにしつつ、座席数を増やすためE6系よりも車両長が4m短く設計されています。
バリアフリー対応の強化や、外国人旅行客を意識した大型荷物スペースの設置も特徴です。
出典:E8系|JR東日本
2030年に登場予定のE10系新幹線に期待
歴代E系新幹線のスペックや特徴を並べると、スピードアップにだけこだわっているわけではなく、路線に合わせた設計になっていることが分かります。車体のカラーにも、それぞれ意味やこだわりがあります。
2030年に登場予定のE10系新幹線や他のE系新幹線の特徴を知って、それぞれを比べたりお気に入りを見つけたりするのも楽しい時間でしょう。東日本に旅行する機会があれば、実際に乗車して、スピードや乗り心地を体感してみるのもおすすめです。
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構成・文/HugKum編集部