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未成年にも納税義務はあるのか?
法律上、未成年はさまざまな保護を受けています。税金については、何か特別な決まりがあるのか、不安に思う人も少なくないでしょう。未成年が払う可能性のある税金を見ていきます。
未成年が払う可能性が高い税金は主に所得税
未成年とは、「18歳未満」の人を指します(民法第4条)。ただし、18歳未満でも既婚者の場合は成人とみなされるので注意が必要です。未成年が払う可能性のある税金は、主に以下の通りです。
●所得税
●住民税
●個人事業税
●消費税
●贈与税(ぞうよぜい)
●相続税
高校生がアルバイトをするケースもあり、最近ではメルカリやYouTubeなどのオンラインサービスを通じて、未成年でも手軽に収入を得られるようになっています。未成年が最も支払う可能性が高い税金は、所得税です。
他の税金は、未成年であることに配慮した非課税枠が大きく設定されています。特に贈与税や相続税は、非課税の範囲に調整することが比較的簡単にできます。
未成年の所得税はどうなるのか?

未成年の所得税が発生するのは、所得がいくらになったときなのでしょうか? また、確定申告の必要があるのはどのような状況になったときなのかなど、未成年の所得税に関わる情報について説明します。
1年の所得が48万円より上だと所得税が発生する
所得税(しょとくぜい)とは、1年間(1月1日~12月31日)に生じた年収から必要経費を除いた「所得(もうけ)」に対して、さらにさまざまな控除を引いた「課税所得」にかかる税金です。
所得控除(しょとくこうじょ)は、その人の扶養人数(ふようにんずう)などの事情に合わせて行う税調整です。年間合計所得が2,400万円以下であれば基礎控除は48万円で、所得額が上がると段階的に減っていきます。
未成年でも、所得税は成人と同じ条件でかかるため、基本的に所得が48万円より多ければ所得税を支払うことになります。
出典:所得税のしくみ|国税庁
未成年の確定申告の必要性は働き方で変わる
確定申告とは、「もうけを得た本人が所得税の計算をして税務署に申し出ること」をいいます。
アルバイトなどにより、1カ所で賃金をもらっているだけなら確定申告はしなくても大丈夫です。雇っている会社が代わりに確定申告してくれるためで、これを年末調整と呼びます。
ただし、「複数の会社で働いていて、20万円以上の所得が複数ある場合」や、「個人事業主としての所得や雑所得がある場合」などは所得税の確定申告が必要です。
このように、未成年の確定申告の必要性も、大人と同様に働き方や所得額によって決まります。
未成年なら勤労学生控除が受けられる可能性が高い
勤労学生控除(きんろうがくせいこうじょ)とは、「特定の学校に通いながら賃金をもらって働いている人」が受けられる控除です。
条件を満たす特定の学校には、小中学校・高等学校・大学・高等専門学校などが当てはまります。従って、未成年なら勤労学生控除が受けられる可能性が高いといえます。
年間の合計所得が75万円以下で、そのうち賃金以外の所得が10万円以下の場合、勤労学生控除は27万円です。学生でアルバイトなどの年間所得が75万円以下なら、ぜひ活用しましょう。
未成年の個人事業主が知っておきたい注意点

個人事業主とは、法人格を持たない個人が、継続して独立した形で仕事を行う場合の呼称です。個人事業主は開業して1カ月以内に、税務署に開業届を出す必要があります。個人事業税や事業主控除など、未成年の個人事業主が知っておきたい注意点を紹介します。
個人事業税と事業主控除
メルカリやYouTubeなどを使って定期的な収入を得ている場合、雇われて稼いだわけではないので、法人でなければ個人事業主といえます。
個人事業主にかかる独特の税として「個人事業税」が挙げられます。地方税の1種で、「法定業種を営む個人事業主が仕事で利用した自治体サービス」にかかる税金のことです。法定業種は70種あり、ほとんどの事業に当てはまります。
事業主控除とは、事業主の年間所得から290万円を差し引く制度です。営業期間が1年未満の人は、月で割った金額になります。
個人事業税と事業主控除は、所得税や住民税の申告のとき一緒に処理されるため別の手続きは必要ありませんが、特に事業主控除は覚えておくと役立ちます。
消費税について
「消費税」とは、商品などの生産・流通・販売の各段階で価格に反映されるものです。実質的にお金を払うのは消費者ですが、消費者が払った価格から事業者が申告・納税します。
「インボイス発行事業者に登録されている人」「2年前の課税売上高が1,000万円より多かった人」などは、消費税の申告手続きが必要です。インボイスとは、売り手である事業者が、取引相手に対し税率や消費税額を明記した請求書を交付する制度です。
消費税の申告手続きが自分に必要か分からないなら、国税庁のホームページで条件を確かめてみましょう。消費税の申告手続きは、同じ国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」から行うと便利です。
出典:
消費税のしくみ|国税庁
確定申告書作成コーナー|国税庁
個人事業主は青色申告すると所得税が減る
未成年で個人事業主の人は、青色申告すると払うべき所得税が減ります。「青色申告」とは、不動産所得・事業所得・山林所得において、収入金額や必要経費などを正しく記録・計算して税金を納めると、特別な控除が受けられる申告制度です。
通常の確定申告なら基礎控除は48万円ですが、青色申告をするとさらに「青色申告特別控除」が最大65万円差し引かれるため、最大113万円の控除が受けられます。
収支が赤字だった場合には、損失の繰越控除(くりこしこうじょ)となり、3年間にわたって所得と相殺することもできます。青色申告は通常の確定申告よりも事務手続きが複雑ですが、そのぶんお得な制度です。
未成年の住民税・贈与税・相続税

未成年が払う可能性が高いのは所得税ですが、条件に合えば他の税金を払う必要が出てきます。住民税・贈与税・相続税について、発生する条件などを確認しましょう。
未成年が住民税を払うのは所得が135万円以上のとき
まずは住民税から見ていきます。未成年でも、もうけ(所得)があれば「住民税」が発生するかもしれません。
住民税には市町村税と都道府県税があり、教育・福祉などの自治体が提供するサービスの財源になっています。
個人が負担する住民税は「未成年でかつ前年の所得が135万円以下」なら課税されません。また、未成年でかつ収入が給与だけの場合なら、「年収が204万4,000円以下なら課税されない」という条件を押さえておきましょう。
贈与税には年間で110万円の控除がある
次に、贈与税です。個人が財産をあげることを「贈与」といい、もらった金額には贈与税がかかります。ただし、法人からもらった場合は所得税として扱われます。
2024年1月1日以降の贈与に対しては、1年間に贈与された合計額から基礎控除の110万円が控除されることになりました。1年間にもらった贈与の金額が110万円より高ければ申告が必要です(暦年課税)。
一方、60歳以上の両親や祖父母などが、18歳以上の子どもや孫に財産を贈与するときは暦年課税ではなく「相続時精算課税」を選択できます。
この場合は、基礎控除を差し引いた金額が最大2500万円まで非課税になる「特別控除」が受けられます。親から子への贈与であれば、子どもが18歳以上になってからのほうが税制上の優遇措置を受けやすい点に留意しましょう。
出典:
No.4402 贈与税がかかる場合|国税庁
No.4103 相続時精算課税の選択|国税庁
相続税には未成年者控除が適用される
相続税とは、「親などが亡くなったときに受け継いだ財産から、借金や葬式費用・控除などを引いたものにかかる税金」のことです。
相続人が未成年だった場合は「未成年者控除」が適用されます。ただし、相続人や被相続人が日本国籍かどうか、日本国内に住んでいたことがあるかどうかで税金の計算方法が変わるため、詳しくは国税庁のホームページをチェックしましょう。
未成年者控除は、「相続人の未成年者が満18歳になるまでの年数×10万円」で計算し、1年未満は切り上げます。
未成年の確定申告についてよくある疑問

未成年の確定申告について、多くの人が疑問を感じやすいポイントがあります。親の扶養から子どもが外れる上限はいくらか、未成年の子どもの代わりに親は確定申告できるのか、といったよくある疑問とその答えを紹介します。
中見出し:親の扶養から外れる上限はいくらか
未成年の子どもが親の「税法上の扶養」から外れるのは、「子どもの1年間の所得が48万円より上の場合」です。親は扶養控除(子ども1人当たり38万円)を受けられなくなるので、所得税・住民税が5~12万円程度増えるでしょう。
また、「健康保険の扶養」から外れるのは、主に「子どもの1年間の所得が130万円以上の場合」です。扶養から外れた子どもは自分で国民健康保険料を払うことになるので、子どもの負担も増えることになります。
未成年で収入を得るときは、この「税法上の扶養」と「健康保険の扶養」の上限を超えないように稼ぐ人が珍しくありません。
出典:
被扶養者とは?|こんな時に健保|全国健康保険協会
No.1180 扶養控除|国税庁
未成年の子どもの代わりに親は確定申告できるのか
未成年の子どもに収入がある場合、親が代わりに確定申告できるのか疑問に思うかもしれません。
民法824条には「親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。」と定められています。
確定申告は原則的に本人が行うものですが、未成年の親は子どもに代わって子どもの財産を適切に管理する義務と権利があるため、確定申告も可能です。
ただし、代理で行えるのは確定申告の手続きに限られ、納税自体は子どもの財産から行う必要があります。もし、親が代わりに納税すると子どもへの贈与とみなされます。
適切な確定申告をしなければどうなるか
適切な確定申告をしなければどうなるのでしょうか? 未成年でも、必要な確定申告をしなければ「無申告加算税」「延滞税」のペナルティが生じます。
無申告加算税とは、申告の期限後に申告・決定または修正などがあった場合にかかる税金のことです。正当な理由があるときや、遅れが1カ月以内のときなら無課税になります。
延滞税は、期限までに税金を払わなかったときにかかる税金です。期限の次の日から税金を納めた日までの日数に比例して増えていきます。
未成年であっても、一定以上の収入があれば確定申告を行う必要があります。
出典:
加算税の概要|財務省
No.9205 延滞税について|国税
未成年でも必要ならしっかり納税しよう
未成年でも払う可能性がある税金は、所得税・住民税・贈与税・相続税などです。もし、個人事業主なら、個人事業税や消費税も納める必要があるかもしれません。
これらの税金のうち、所得税は未成年でも成人と同様の基準で課税されます。1年の所得が48万円より上だと所得税を払わなければなりません。
未成年でも収入がある人は、納税や確定申告しなければならない金額と条件に当てはまるか確認しましょう。個人事業主なら、メリットの多い青色申告がおすすめです。
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構成・文/HugKum編集部