「なぜ学校に行けないの?」はNG。不登校の原因が子どもや家庭にあるとは限らない理由【不登校の苦しみから抜け出す処方箋】

「不登校という概念をこの世からなくしたい」との想いから、企業や保育園・幼稚園にて不登校を理解するための講演などを行っている蓑田雅之さん。これまでの多くの保護者の方と接してきた経験をもとに、不登校の苦しみから親子で脱するための処方箋をお届けします。今回は、子どもが学校に行きたがらないときの原因について考えます。

不登校の原因は子どもと親どちらが原因? いいえ、どちらでもありません

ある日、子どもが「学校に行きたくない」と言い出した。親としては焦りますよね。学校で何かあったのか。いじめられているのではないか。まずは原因を探りたくなります。それは、原因を取り除けば、また学校に通えるようになると思うからでしょう。

どうして行けないんだ? 子どもにいろいろ聞いてみるものの、子どもは話したがらない。きつく問い詰めると、泣き出してしまうことも。親としてはもう、どうしていいかわからなくなります。そこから不登校の悩みが始まるわけです。

そして、この原因究明はときとして自分自身に向くことも。親の育て方が悪かったのか、甘やかしすぎたのがいけないのかと、あれこれ悩みは尽きなくなります。

不登校についての原因探し、犯人捜しは、誰もがしたくなるところですが、それをしたからといって問題は解決しません。というか、むしろ逆で不登校の原因を当事者に押しつけている限り、この問題は解決しないと思います。

不登校になりやすい子は一定数いる。まずはこの事実を受け止めることが大切

不登校は学校に行けない子どもの問題と思われがちですが、実は違います。多くの場合、不登校は学校と子どもとの相性の悪さによって起きるからです。一糸乱れぬ座席の並び、整然とした授業、みんなと一緒に何かをやらなければならない時間、このような日本の学校ならではの教育システムに合わない子どもが一定数いるのです。

発達障がいや学習障がいの特性によってなじめない場合も

たとえば発達障がいの子、もしくはグレーゾーンと呼ばれる子たちは、なかなか学校のやり方になじめないことがあります。授業でじっとしていられなかったり、空気を読むのが苦手だったりして、まわりの子とうまくやれないことがあるからです。

読み書きが苦手な子や、数字の概念を理解しにくい子など、学習障がいを持つ子も不登校になりやすいといわれています。あるお子さんは、国語の時間にうまく文章が読めなかったことから、みんなの前で恥をかいてしまい、学校に行けなくなりました。

でも、親がそれを知ったのはずいぶん後のこと。なぜなら、子どもにもプライドがあるからです。学校で恥をかいて、その結果いじめられたなんて、口が裂けてもいえません。何年も経った後、心が落ち着いて冷静に過去を振りかえられるようになってから、ようやく自己開示をするのです。

他の子が叱られていることに反応してしまう…敏感なHSCの子も

また、人一倍敏感な感覚を持つHSCと呼ばれる子どもも、不登校になりやすいといわれています。先生が他の子を叱っているのが恐くて、それだけで学校に行けなくなった、そんな話もよく聞きます。

子どもの特性は生まれながらのものなので、本人の努力ではいかんともしがたく、また親の教育によって矯正できるものでもありません。日本の学校のやり方に向かない子どもが一定数いる、まずはこの事実を受け止めない限り、不登校の問題は解決しないと思います。

環境が変われば、見違えるほどイキイキしてくる子どもがいる

そもそも発達障がいは、自分自身が身を置く環境によって困りごとが生じる場合もあり、場所が変われば見違えるほど個性が輝きだすことがあります。

たとえばフリースクールには決められた席がなく、一斉授業がないところもあります。これまでの学校ではじっとしていられず、いつも叱られていた子が、自由な環境では水を得た魚のようにのびのび動き始めることがあるのです。

学習障がいも同じで、iPadなどの端末を使えば問題なく読み書きできる子もいます。要するに学校のやり方が合わないだけで、学校の外に出れば、そもそも問題にすらならないこともあるのです。

文部科学省の発表では、昨年の不登校児童生徒の数は34万人を超えました。これだけでも相当インパクトのある数字ですが、私はもっと増え続けると思います。このまま日本の学校システムが変わらずに、不登校を個人の問題に帰している限り、今後も不登校の数は増え続けるでしょう。

日本の小学校は99%が公立で、同じような教育が行われている

日本にはおよそ2万校の小学校があります。その99%が公立小学校で、私立はわずか1%。子どもの個性が多様であるにもかかわらず、それを教える学校は基本的には同じやり方、同じ雰囲気です。これでは不登校が増えても仕方ありません。 

オランダでは10~20%がオルタナティブスクール

たとえばオランダなどは、子どもの多様な個性に合わせて、学校が選べるようになっています。伝統的な学校の他に、シュタイナー学校、イエナプラン学校、モンテッソーリ学校など、オルタナティブスクールと呼ばれる特色ある教育を行う学校が全体の10%~20%ほどを占め、子どもは通う学校を自由に選べます。

つまり、人口の10~20%ぐらいは普通の学校教育に合わない子がいる、そのことを前提に教育制度が組まれているのです。とても合理的な考え方ですね。こうしたオルタナティブスクールは義務教育の一環として位置づけられ、子どもは無料で通えるようになっています。

自分の子をよく見て、学校が合わないと思ったら別の選択肢も

筆者の息子は、幼稚園の頃から敏感な性格が見え隠れし、同年代の子となかなかなじめませんでした。それでも小学校は公立でいいかなと思い、一度は地元の学校に通いましたが、ここでも仲のいい友だちはできませんでした。たぶん感覚が他の子より敏感なHSCの特性を持っていたのでしょう。

息子は不登校にはなりませんでしたが、学校がつまらなそうだったので、わが家は別の選択肢を用意しました。探究学習をやるオルタナティブスクールを見つけ、そこに体験入学してみたのです。そこは文科省に認可されていない無認可の学校でしたが、わが家は子どもの特性に合うのなら、公立校にこだわる必要はないと考えました。

結果、子どもがその学校を気に入ったので、小学校3年生の春から転校という形で、オルタナティブスクールに通うことになりました。在籍する小学校の校長先生にも何とか理解してもらい、公立小学校に籍を置いたまま新しい学校に通うことができたのです。

教育改革を待っていたら、目の前にいる子は大人になってしまう

文部科学省は教育振興基本計画の中で「個性を尊重しつつ能力を伸ばし」と掲げていますが、残念ながら多くの学校現場で行われている教育はそのようにはなっていません。先生が忙しすぎる、個々の子を見ている余裕がないなど、いろいろ理由はあるのでしょうが、個性豊かな子どもが学校のやり方に合わずに、思いがけず不登校になっていることは事実です。

オランダのように多様な学びを自由に選択できる時代が来ればいいのですが、日本の教育制度がそこまで変わるには、たぶん何年も、何十年もかかるでしょう。その間に子どもは大人になってしまいます。

私たちがいまできるのは、不登校を子どものせいにせず、子どもの個性に合った学びの場を探すことだと思います。いまは都市部を中心に、いろいろな教育方針を掲げる新しい学校やフリースクールが増えてきました。その多くは文部科学省に認可されていない無認可の学校ですが、子どもの個性がつぶされずに伸びるなら、認可、無認可は関係ないと考えます。子どもが不登校になってもぜひ悲観せずに、新しい教育の選択肢を探してほしいと思います。

では、実際にどのような学びの場が学校以外にあるのか、そこにどうやって通えばいいのかなど、教育のオルタナティブな選択について、次回またこの場をお借りして書いてみたいと思います。

息子さんの通ったサドベリースクールについての記事はこちら

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この記事を書いたのは…

蓑田雅之

一般社団法人 楽習楽歴 代表理事長。子どもをサドベリースクールに通わせた経験から学校教育のあり方に疑問を持ち、教育分野の研究に着手。「不登校という概念をこの世からなくしたい」という思いから、「おはなしワクチン」の活動を開始。企業や保育園・幼稚園にて、講演を行っている。著書に『もう不登校で悩まない! おはなしワクチン』『「とりあえずビール。」で、不登校を解決する』(びーんずネット)がある 。

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