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SNSで兄ーズの演奏する「いのちの歌」を聴いたバンドメンバーが出演をオファー

兄ーズは山下順一朗、宗一郎による連弾ピアノユニット。双子ならではの息の合った音が魅力です。この夏は日本中の各所でのソロコンサートも予定されています。その皮切りとして、7月12日(土)に東京のセシオン杉並ホールにて「Village Seven Normalization LIVE2025夏~こどものみらいのために~」にゲスト出演しました。医学部受験のために2024年7月から活動休止をしていた兄ーズにとって、約1年ぶりの演奏です。
医療的ケアが必要な人を迎えたコンサート

Village Seven(ヴィレッジ・セブン)は、2000年に結成されたベテラン・バンド。杉並区内の障害者支援施設(区立・民間)で勤務する職員が集まって結成され、施設のおまつりや地域のイベントなどで、来場者も一体となって楽しめるライブ活動を続けています。アマチュアといえどもキャリアが長く、7人のメンバーにホーンセクション3人も加えて、すばらしい音楽を聴かせてくれます。
「障がいのある人もない人も、心から音楽を楽しんでほしい」兄ーズとVillage Sevenの思いは同じ
兄ーズがVillage Sevenのメンバーと知り合い、一緒にコンサートをするようになったのは2023年から。きっかけは、バンドのリーダーであり、NPOみかんぐみ(医療的ケアが必要な人たちが安心して生活できるようサポートする組織)代表理事でもある村 一浩さんが、ふとSNSで兄ーズの動画を目に止めたこと。

「ふたりが演奏する『いのちの歌』を聴き、心に沁み入りました。当時はまだ高校2年生で初々しかったのですが、見事な演奏に感動し『突然ではありますが、ぜひコンサートにジョイントをしてもらえませんか?』とメッセージを送ったのです。すると、すぐに快諾のお返事がありました。
そこから、弟さん(現在10歳)が医療的ケアを必要とすること、お母様がみかんぐみが出版しているケアラーのための冊子を購入してくださっていることを知りました。そして、小学校の頃から兄ーズが病院や児童発達支援センター、療育センター、保育園などでボランティア演奏活動を実施していることもわかりました。障がいのある人もない人も、心から音楽を楽しみ、音楽で心を癒やしてほしいという思いは同じだと、うれしくなりました」(VillageSevenメンバー・NPOみかんぐみ代表理事 村 一浩さん)
以後、兄ーズもVillage Sevenとのジョイントを大事にしていて、2023年11月に杉並区のインクルーシブコンサート、2024年3月のVillage Sevenとのジョイントコンサートへ出演してきました。
「ノーマライゼーションライブ2025夏〜こどものみらいのために〜」スタート!
最前スペースは、医療的ケアが必要な人たちや家族のために

今回はVillage Sevenのコンサートに兄ーズがゲスト出演する形。一般の方ももちろん聴けるのですが、最前のスペースは障がいのある方々が車椅子のまま、あるいはシートを敷いた上にすわったり寝たりしままで音楽を聴けるようになっています。呼吸器や胃瘻をつけた人たちが気兼ねなく会場に来て楽しめるように、という配慮です。
兄ーズが病院や療育センターなどで自分たちのコンサートを開催するときも、同じような配慮で演奏をしています。
スタートはVillage Sevenの演奏と歌。25年も杉並を中心に演奏しているのでファンもたくさんいて、会場はノリノリです。そして、中盤に兄ーズが登場!
息のあった見事なハーモニーで観客を魅了

1曲目はドヴォルザーク作曲の『スラブ舞曲 Op.46-1』。ふたりの華麗な連弾は「晴れて大学合格を果たしてみなさんの前でピアノを弾ける喜びを表現した」と兄ーズ。
そして、次は『スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス』という長い曲名の曲を演奏。ディズニー映画『メリー・ポピンズ』の劇中曲です。
兄ーズが鍵盤ハーモニカやおもちゃのピアノを演奏し始めた!

コンサートの中で宗一郎さんがいきなり鍵盤ハーモニカを吹き始めて、みんな注目! 順一朗さんは子ども用の小さなピアノを弾きました。MCでは「この鍵盤ハーモニカとピアノは僕らの妹(5歳)のものです。ここで演奏したくて『貸して』と10回ぐらい頼んで、やっと貸してもらいました」と言って会場を笑わせてくれます。
親しみのある曲のピアノ演奏で、大人も子どもも笑顔に
『星に願いを』『アンパンマンマーチ』『アラジン組曲』など、親しみのある楽曲を選んで「一緒に歌ったり、踊ったりしよう!」と促してくれます。

そしてラストの『ジャンボリーミッキー』では、小さな子たちのダンサーズと競演して大盛り上がり♪

その後、Village Sevenの演奏になると、兄ーズは会場を回り、最前列の車椅子の観客の方々とも交流。
ハイタッチをしたり話しかけたり、みんなを楽しい気分にさせてくれます。

アンコール曲では、Village Sevenと『にじ』という曲をセッションして、会場をますます沸かせました。

「生演奏の楽しさを届けたい」忙しくてもがんばるピアノと医学の二刀流
ピアノの練習と医学部の勉強でカツカツ、でも部活動も楽しんでいる!

コンサートの合間、忙しい兄ーズのふたりにお話も聞けました! まずは近況を語ってもらいました。
宗一郎さん この夏は、今日のコンサートから始まり、7月、8月とさまざまなコンサートがあって、ピアノの練習のウエイトが高まっています。とはいえ、医学部はしょっちゅうテストがあるので、テストの勉強も欠かせず、カツカツです。時間の使い方を工夫しないと。
順一朗さん 僕たちは別々の大学に通っているので、授業時間も部活動の時間も違います。帰ったら夕食前に勉強を1~2時間、夕食後にふたりでピアノを2~3時間練習するのが日課のようになっています。隙間時間も活用しないと回らないので、僕は大学生になってはじめて手帳を買いました。スケジュールをしっかり書いて時間管理をしています。
――そんなに忙しいのに部活動もやっているんですか!?
宗一郎さん 僕は高校のときにやっていたバドミントンを続けたくてバドミントン部に。週3回、1回4時間くらい練習があります。
順一朗さん 僕はゴルフ部に入りました。医師のみなさんはゴルフをする人が多いし、先輩との交流のためにもやっておいたほうがいいと言われたので。まだコースには一度も出ていなくて打ちっぱなしで練習しているだけですが、そのうちコースに出て、スコア100を切るのが目標です。
ピアノで心の癒やしを、医学で体を治して二刀流を極めたい

――お2人が今回のようなコンサートに積極的にジョイントする理由は?
順一朗さん 今回のコンサートは医療介護を必要とするお子さんのお客様が多いですよね。こういうコンサートってなかなかないんです。とくに日本では、医療的ケアが必要な方が生演奏を聴ける機会が少ない。だからこそ、生演奏の楽しさを届けたいという思いがあります。
宗一郎さん 今日は会場に車椅子を必要とする方が、介助の方を含めて20組います。この規模のコンサートは日本ではなかなかありません。僕らもこういう活動は続けていきたいですし、どんな人にも手を差し伸べたい。

順一朗さん 医療的ケアが必要な弟の存在もあり、僕らは自然と医師を目指すようになりました。弟のような難病を持つ人たちを治せたら、という願いがあります。そして心を癒やす演奏ができるピアニストも兼ね備えた医師になりたい。
宗一郎さん 心と体を治せる医師、そして心のケアもできるピアニストの二刀流を掲げて、僕らはがんばっていきます!
――弟さんが生まれてから、医療が必要な人への思いを深くし、心を癒やすピアノと心身ともに治す医師の仕事に強く使命感を持ち続けてきた兄ーズ。今後もピアニストとして、また医学生としてまっすぐに前に向かっていく姿から目が離せません!
夏休みは兄ーズのコンサートが各地で開催中!
投票による選曲や受験とピアノの付き合い方も! 8月5日「兄ーズ感謝祭」@神奈川県立音楽堂

日頃から応援してくださるみなさんへの思いを音に変えて、兄ーズからのありがとうコンサートが開催されます。SNSで弾いた曲のなかで好きな曲をリクエストしてもらい、当日のプログラムを決定するというお楽しみも♪ サイン会&写真撮影も予定。医学生のふたりは授業があるため演奏が聴ける夏休み公演は貴重! 兄ーズならではの、中学受験から大学受験とピアノとの付き合い方についても役立つヒントが聞けるかも。
8月5日(火)開場17:30 開演18:00
神奈川県立音楽堂(神奈川県横浜市西区紅葉ヶ丘9-2)
全席指定(大人6,000円/こども(5歳以上18歳以下)2500円)※兄ーズからのありがとうお菓子付き※4歳以下は入場不可
ローソンチケット
https://l-tike.com/annies-kansyasai
※PC/スマートフォン共通(Lコード:33677)※ローソン・ミニストップ店内端末「Loppi」にて一般発売日以降直接購入可能
チケットぴあ
https://w.pia.jp/t/annies-kansyasai
※PC/スマートフォン共通(Pコード:303-719) ※セブン-イレブン店内マルチコピー機にて一般発売日以降直接購入可能
MITT TICKET
03-6265-3201(平日12:00~17:00)※座席選択可能 ※一般発売より取り扱い
「ANNIES PIANO MAGICAL LAND 2025」を全国4ヶ所で開催!

夏休みに各地での公演を開催している兄ーズ。東京と奈良県・大和田高田の公演は完売御礼! 北海道・札幌と大阪の公演もチケットは残りわずかに。親しみのある曲も多く、親子で夏休みに兄ーズの奏でる音色を楽しんでみませんか。
大阪公演
8月3日(日)18:00開演
住友生命いずみホール
全席指定(大人6,000円/こども(5歳以上18歳以下)2,000円)※4歳以下は入場不可
札幌公演
8月7日(木)18:30開演
札幌コンサートホールKitara小ホール(北海道)
全席指定(一般4,000円)※4歳以下は入場不可
札幌公演(未就学児も入場できる昼公演「PIANO LAND 2025」)
8月7日(木)13:30開演
札幌コンサートホールKitara小ホール(北海道)
全席指定(大人2,500円/こども(4歳から高校生まで)1,000円)※3歳以下は膝上鑑賞無料。※3歳以下でもお座席が必要な場合はチケットが必須となります。ご了承ください。※小学生以下のお客様は保護者同伴の上ご来場ください。
お話を聞いたのは

山下順一朗・山下宗一郎 の連弾ピアノユニット。難病で重症心身障がい児の弟の影響から医師を目指し、2025年3 月に2人そろって医学部現役合格。現在医大生ピアニストとして活動している。 2歳から絶対音感トレーニングを経て4歳よりクラシックピアノを本格的に開始。大阪国際音楽コンクール連弾部門優勝、ピティナ・ピアノコンペティション10部門で全国決勝大会に出場し、銀賞・銅賞など 多数受賞。ショパンコンクール・インアジアにてアジア大会ファイナリスト、全日本学生音楽コンクールピアノ中学生部門東京大会入選などの成績を残す。小学生の頃より病院や児童発達支援センター、療育センター、保育園などでのボランティア演奏活動を実施しており、コンクール成績と合わせ東京都教育 委員会児童・生徒等表彰に2年連続選出された他、一般財団法人東京私立中学高等学校協会、東京都高等学 校文化連盟より表彰される。2023年度ソニー音楽財団子ども音楽基金の採択団体に選出され、医療的ケアのある重症心身障がいをもつ子どもたちとそのご家族、約1,700人にピアノの生演奏を届けた。2023年ドイツハンブルク近郊のレリンゲンMay Festivalにて、2024年にはアメリカのカーネギーホールにて招聘演奏を行い、スタンディングオベーションを受け大盛況となった。 2024年MBSお天気部夏のテーマ曲「空」を担当。 7月1日に初の著書『夢を奏でる ピアニストと医師の二刀流を目指す双子の物語』が発売。YouTubeフォロワー1.3万人、インスタフォロワー11万人(プロフィール写真撮影:田頭真理子)
Village Seven(ヴィレッジセブン)
2000年に杉並区内にある公立と民間の障害者施設に勤める職員8人で結成。活動は、年に2回の単独ライブを軸に、区内外のさまざまな場所で出張コンサートを行う。障害の有無や年齢を問わず、みんなが参加して楽しめるような内容で幅広い年齢からの支持を得ている。公式サイトはこちら
取材・文/三輪 泉 撮影/五十嵐 美弥(小学館)