暑くなると「台所に立つのがつらい」「子どもが野菜を食べてくれない」そんな声をよく耳にします。そんな悩みに応えるのが、ナスやトマト、豚バラ肉を重ねて作る“陰陽煮”です。
野菜と肉の性質を活かし、順番に重ねて煮るだけで、素材のうま味と栄養を引き出せる調理法ですよ。一度にまとめて加熱できるので、暑い季節でも無理なく続けられます。
今回は、基本の陰陽煮に加え、冷やして楽しむジュレがけや、子どもが喜ぶチーズ焼きへのアレンジレシピ、さらにお弁当の隙間に入れられる蒸し野菜も作るので、ご覧ください。
「陰陽煮」を、夏こそ取り入れたい理由
野菜と肉を順番に重ねて煮る「陰陽煮」は、「重ね煮」とも呼ばれ、食材の陰陽バランスを考慮した調理法として知られています。
鍋に、陰性の野菜(トマトやナスなど)から入れて、順番に陽性の食材(根菜類)を重ねて煮ることで、野菜の旨味を引き出す特徴があります。

基本レシピ|ナス・トマト・豚バラの“彩り陰陽煮”
子どもが食べやすい、ナスとトマトの一品です。火にかけてほったらかしでもおいしく仕上がるので、料理が苦手な人でも簡単に作れます。
鍋の空いたスペースに、さつまいもを入れて、蒸し野菜も一緒に作りましょう。

・材料
(4~6人分)
しめじ 1株
なす 4本
トマト 3~4個
玉ねぎ 1個
豚バラ肉(薄切り) 400g
塩 小さじ1/4、1/2
さつまいなどの根菜類 1~2本
・作り方
【1】無水調理ができる鍋を用意します。最初に、鍋底に小さじ1/4の塩をまきます。

【2】しめじの石づきをはずし、ほぐします。トマトは厚めの輪切りにします。玉ねぎは縦向けに、薄くスライスします。豚バラ肉も食べやすい長さに切っておきます。
ナスは、半分の長さに切ってから、縦向けの薄切りにします。
ナスが苦手な子どもは多いので、その場合は、あらかじめ皮をむいてもかまいません。栄養面ではマイナスですが、まずは、野菜のおいしさを味わうことから始めてみると、いいかもしれませんね。

【3】下から、しめじ→ナス→トマト→玉ねぎ→豚肉の順で食材を重ねます。

最後に上から、塩(小さじ1/2)を振りかけます。

【4】フタをして弱火で15~20分煮込みます。火が通ったら火を消し、フタをしたまま味をなじませます。

【5】次の日の分を、保存容器に取り分けます。(ナスの皮を残した場合は、色が悪くなるので、個別に保存します。)
【6】鍋に残った食材に、調味料を加えます。陰陽煮100gに対して、薄口しょうゆ(大さじ1)が、目安です。
弱火で加熱し、味がなじんだら、1品目が完成です。
陰陽煮ならこれができる! お弁当用プチ野菜
鍋のスペースに余裕があるときは、さつまいもやじゃがいも、トウモロコシなどを一緒に入れておくと、蒸し野菜が、“ついで”に仕上がります。
火が通りにくい野菜を入れた場合は、加熱時間が長くなります。様子を見ながら、野菜全体が柔らかくなるまで煮てください。

陰陽煮は、野菜の種類を多く入れるほど、素材同士の味が引き立ち、自然なうま味が増す調理法です。お弁当や朝ごはん、サラダのトッピングにも使えてとても便利ですよ。
アレンジレシピ2選|冷製ジュレがけ/ウインナーチーズ焼き
暑い日はキッチンに長く立つのが大変。そんなときこそ、前日の陰陽煮を使った冷製アレンジがおすすめです。電子レンジだけで作れる和風ジュレは、夏バテ気味でも食べやすく、冷やしておけるので、忙しい朝にもすぐに使えますよ。
ウインナーを追加して、トースターで仕上げるチーズ焼きの作り方も、見ていきます。
陰陽煮の冷製ジュレがけ
残った陰陽煮を、翌日にさっぱり楽しめる冷製アレンジです。特に暑くて食欲が落ちやすい日には、和風ジュレで口当たりを変えると食が進みますよ。火を使わず、電子レンジで作れるので簡単です。

・材料
(2人分)
前日に作った陰陽煮 100g
陰陽煮の煮汁 100ml(煮汁が少ないときは、水を足して100mlにしてください)
青しそ 2枚
粉ゼラチン 5g
水 50ml(ゼラチンふやかし用)
ポン酢 大さじ1
・作り方
【1】耐熱ボウルに水(50ml)を入れ、粉ゼラチンをふり入れて5分ほどふやかします。

【2】ふやけたら、そのまま電子レンジ(600W)で約20〜30秒加熱し、ゼラチンを完全に溶かします。
【3】重ね煮の煮汁(温めなくてOK)に、ポン酢を加えてよく混ぜます。
【4】そこに溶かしたゼラチン液を加えてさらに混ぜ、平らな耐熱容器(バットや保存容器など)に流し入れます。

【5】粗熱がとれたら冷蔵庫に入れ、1〜2時間冷やします。ジュレ状に固まったら、フォークなどでほぐします。

【6】器に盛った冷たい重ね煮に、砕いたジュレと、刻んだ青しそをのせます。透明なジュレが彩りを引き立てて、夏野菜の鮮やかさが映える一皿になります。
ウインナーをプラス|チーズ焼き
チーズがこんがりと焼けて、トマトの酸味と、とろりとしたナスが絡み、見た目も味も大満足の一皿になります。忙しい日の朝や、野菜が足りないなと感じたときの一品に。
火を使わずにトースターだけでできる、簡単アレンジです。冷めてもおいしいので、小分けカップに詰めれば、お弁当のおかずにも利用できますよ。

・材料
(2人分)
前日に作った陰陽煮 100g程度
ピザ用チーズ 50~70g
ウインナー 6本程度
黒こしょう 少々(子ども向けにする場合はこしょうは省いてもOK)
・作り方
【1】耐熱皿に陰陽煮を入れます。煮汁が多すぎるとベチャっとしやすいため、汁気は切ってもかまいません。
【2】カットしたウインナーを加え、ピザ用チーズをたっぷりのせます。
【3】トースター(1000W)で約5〜7分、チーズがとろけて表面にうっすら焼き色がつくまで加熱します。
【4】焼き上がったら、お好みで黒こしょうをふって完成です。
具材にすでにしっかり味がついているので、追加の調味料はほぼ不要です。チーズの塩気だけでちょうどよいバランスになります。
「作ってみたい」が自然と湧いてくる、陰陽煮のすすめ
最後に、陰陽煮を作る際のポイントをまとめます。

基本の陰陽煮
陰陽煮は、食材を順番に重ねて火にかけるだけのシンプルな料理ですが、いくつかのポイントを押さえると、よりおいしく仕上がります。
まず、食材の重ね方には意味があります。陰性の野菜(トマトやナスなど)は下に、陽性の食材(根菜類)は上に重ねると、加熱時にうま味と香りが全体に広まります。
また、塩は鍋底と、一番上にふることで、全体に味がまんべんなくなじみます。
鍋は厚手でフタ付きのものが最適です。無水調理ができる鍋であれば、野菜の水分を活かして栄養を逃さず調理できますよ。土鍋は、蒸気穴を塞げば使用することができます。
作り置きや保存で、毎日をもっとラクに
陰陽煮は保存にも向いていて、野菜だけで作れば、冷蔵庫に入れて4~5日は保存ができます。今回は豚肉を入れたので、2〜3日以内に食べきりましょう。
煮汁ごと保存すると、味のなじみもよくなります。
子どもと一緒に楽しめるポイント
陰陽煮は、包丁を使わない工程も多く、子どもでもお手伝いしやすいのが魅力です。切った野菜を順に重ねたり、食材を容器に移したりするだけでも、立派な調理体験になりますよ。
小さなお子さんほど、野菜を並べる作業に夢中になることも多く、自分で作った料理なら食べてみたい意欲もわきます。苦手だった野菜に、自ら手を伸ばすこともあるとうれしいですね。
夏の食卓に陰陽レシピを
体力を消耗しがちな夏こそ、栄養豊富で、作る側の負担も少ない料理がうれしいもの。陰陽煮は、素材の味わいと栄養をしっかり閉じ込めながら、手間も省ける調理法です。家族の健康を守りながら、親子で調理する時間も楽しんでくださいね。
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構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)
