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小鉢で学ぶ! 視覚で感じるバランスごはん
――毎日の食卓を通して、子どもが自然に「食育」を学べるようにするために、大切にしていることはありますか?
長藤 由理花さん(以下、長藤さん):子どもには、まずバランスのよさを意識して食べてもらいたいと思い、メインのおかずや副菜、ごはん、汁物などをそれぞれ器や小鉢に分けて出すようにしています。
すべてをワンプレートにまとめるより、器や小鉢に分けて出すほうが、子どもは「今日はこんな種類の食材があるんだ」と目で確認でき、栄養や色のバランスも自然に理解しやすくなります。
さらに、それぞれを少しずつ箸でとって食べることや、持ってもよい器・そうでない器の区別など、食事のマナーも身につきます。和食の基本かもしれませんが、子どもが小さいころからこのスタイルに慣れておくことも、食育の一環になると感じています。

0歳からできる「野菜を洗う経験」
――お子さんが小さいうちは、どのように食育を始めましたか?
長藤さん:0歳のころから、まずは一緒に食材に触れることを心がけていました。たとえば、ボウルに水を張って野菜を洗うだけでも、子どもは楽しそうに手を動かします。
野菜の感触を楽しむうちに、自然と食材への興味が芽生え、「これは食べるものなんだ」と覚えるきっかけにもなります。この小さな体験の積みかさねが、のちに料理や食育への関心へとつながっていくのかもしれません。
また、農薬を落とせる洗剤を使って、娘と一緒に野菜を洗ったこともありました。落ちた農薬で水の色が変わって驚くと同時に、野菜がツヤツヤになり、とてもおいしくなるんです。子どもが小さいうちは、できることだけでも少しずつ一緒に取り組むことが、親子で楽しむ食育の近道ですね。

いつの間に自立⁉ チョコバナナやホットケーキをほぼひとりで作れるようになっていた娘
――娘さんとは、一緒に料理をすることもあるのでしょうか?
長藤さん:はい。私がフードコーディネーターとして仕事をしていることもあり、4歳の娘も自然と料理に興味を持っていて、休日にお菓子作りをすることもあります。
先日、自宅で夏祭りをしたときに娘が「チョコバナナを作りたい」と言い出して…。私はレシピを知らなかったので「どうやって作るの?」と聞いてみると、娘はなんとYouTubeで見て理解していたようで驚きました。買い出しに一緒に行くと、「板チョコは3枚、あとは油も…」と自分で説明しながら材料をそろえてくれていました。
準備した材料を使って、湯せんでチョコを溶かし、見事にチョコバナナを完成させたんです。もうびっくりしましたね。

――すごいですね。料理自体を楽しんでいる様子が伝わってきます。
長藤さん:きっと、本人の「好きなこと」と「料理」が重なったのも大きいと思います。チョコバナナのほかにホットケーキなども娘が作ることがあるのですが、仕上げにバナナやフルーツをトッピングするなど、自分で作る楽しさと食材を扱う経験を学べる機会になっています。
平日はなかなか余裕がないことも多いかもしれませんが、もしお子さんが興味を示したら、ぜひ休日などに一緒に楽しんでみてください。計量の感覚や、食材のことも自然と身につけられるので、親子で楽しみながら学べるきっかけになるかもしれません。

休日の過ごし方に迷ったら! 一緒に楽しむ休日の新習慣「手づくりパーティー」
ピザづくりでニガテな野菜も克服
――休日に、家族や大人数で楽しめる食育アイデアはありますか?
長藤さん:ピザづくりもおすすめです。わが家では週末に甥っ子たちが集まることもあり、ちょっとしたイベント感覚でホームベーカリーを使ってピザ生地を作ります。
子どもたちには小さくちぎった生地を渡してのばしてもらい、それぞれが好きなトッピングをのせてもらうんです。マヨネーズやチーズ、そしてトマトやピーマンなどの野菜も並べますが、自分で作ると普段食べられない野菜でも意外と意欲的に食べてくれることがあります。
ピザ作りはトータルで2~3時間かかることもありますが、「週末なにしよう?」「みんなが来てくれたときにどう過ごそう?」と迷ったときにもぴったりです。一緒に作る過程そのものが、親子で楽しめるイベントになります。
また、無理にピザ生地を作らなくても、トーストアレンジもおすすめです。子どもたちにトーストを配って、好きな具材を自分でトッピングするだけでも、子どもたちのキラキラした笑顔が広がりますね。

食育がてら、翌週のママパパを救うことも⁉ 休日のトースト作りを、来週の朝ごはんストックに!
――休日に作るだけで、食育にもなるし平日のごはんも助かる…そんな工夫はありますか?
長藤さん:休日に子どもと遊び感覚で作ったアレンジトーストは、ラップで包んでそのまま冷凍しておくと、冷凍庫から出してすぐトースターで焼くだけで彩りも栄養もバッチリの朝食になります。
子どもも自分でトッピングをのせたり、並べたりできるので、「食べる」だけでなく「作る」楽しさも体験できます。ついたくさん作ってしまうこともありますが、いつも娘に「朝食どれにする?」と聞くとうれしそうに選んでくれます。
こんなちょっとした工夫が、いそがしい平日を助けてくれる食育アイデアにもなるんです。
完璧じゃなくて大丈夫!親子で楽しむことが食育のコツ

――バタバタな日々でも、親として無理なく食育を続けるコツはありますか?
長藤さん:毎日いそがしく、育児や仕事で手いっぱいになってしまう親御さんも多いと思います。私も同じで、つい余裕がなくなる日もあります。だからこそ、無理せず、できることを少しずつ取り入れることが大切だと感じています。
ちょっとした工夫や、親子での一緒に過ごすひとときが、日々の食を楽しく、そしてゆたかに変えてくれます。完璧を目指さなくても、まずは「一緒に楽しむこと」を大切にすれば大丈夫。子どもも自然と笑顔になって、あたたかい食卓の時間が少しずつ増えていくはずです。
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お話をうかがったのは
1992年生まれ。神奈川県横浜市出身。人材派遣会社で営業職をしていた2020年1月、27歳の時に卵巣がんに罹患。右側の卵巣の摘出と抗がん剤による治療を4か月続け、がんを克服。2021年に結婚・出産を経て一児の母に。現在はフードコーディネーターの資格を活かし、食に関わるプロモーションのプランニングディレクターをしている。
Instagram @yurika_nagafuji
構成・文/牧野 未衣菜