楽しい中でも忘れてはならない「帰省先や旅行先」での事故予防【Safe Kids Japan】

イラスト 久保田 修康(Safe Kids Japan「子どもの傷害予防カレンダー 2019」より)

 

帰省先や旅行先でも安全な環境を

この夏、帰省や旅行を楽しみにしている方も多いと思います。帰省や旅行は子供たちにとっても心踊る体験ですが、日常とは異なる環境により、思わぬけがをすることがあります。

今回は、「帰省先や旅行先で起こりやすい事故」についてお話しします。

 

ボタン電池は絵本などにも使われていることがあります。(イラスト 久保田 修康)

 

子供がボタン電池や医薬品、洗剤などを飲み込むと重大な傷害につながることは、皆さんもよくご存じだと思います。ご自宅ではそのような「お口に入れたら危ないもの」は子供の手の届かないところ、見えないところ、簡単には開けられない容器などに保管されていることでしょう。

しかし日頃小さな子供がいないご実家などはどうでしょうか?常備薬や洗剤をわざわざ高いところや見えないところに保管している、という方は少数派ではないでしょうか。

ご実家に着いてから「危ないものチェック」をするのは少し気が引けますよね。できれば帰省する少し前に連絡し、

・ボタン電池(ボタン電池が中に入っているリモコンなども含む)

・医薬品やサプリメント(特にご高齢の方がいる場合は医薬品がたくさんあることが多い)

・アルコール飲料

・洗剤

など「お口に入れたら危ないもの」は、

・子どもの手の届かないところ(下のイラスト参照)

・子どもから見えないところ

・簡単には開けられない容器

に移しておいてもらいましょう。

また、「テーブルクロス」や「テーブルランナー」も取り外しておいてもらいます。上のイラストのように、テーブルクロスを引っ張って、その上にのせてあった熱いお茶がひっくり返って子供にかかりやけどを負う、ということがあるためです。

「手の届く範囲」は「高さ」+「奥行き」で考えます。 (イラスト 久保田 修康)

 

Safe Kids Worldwideの資料から。アメリカでも子どもが医薬品を飲み込んでしまうことによる重大な傷害が多発しています。

 

「あっという間」は何秒くらい?

とは言え、ただでさえ忙しい帰省前、「危ないもの」をあらかじめ遠ざけておいてもらうなんてお互いに面倒だし、大人が大勢いるんだから皆で目を離さないようにしていれば大丈夫、と思われるかもしれませんね。

確かに帰省前や旅行前は常にも増して忙しいですし、帰省先のご実家やご親戚ではいつもよりおとなの数が多いのも事実です。

「あっという間は0.5秒」 産業技術総合研究所 提供

 

こちらのイラストをご覧ください。大人はそれぞれ子供のことを見ていますが、あっという間に起こる転落ややけど、飲み込みなどを防ぐのはなかなか難しいようです。

産業技術総合研究所では、子供が転び始めてから手や足、頭やお尻が床につくまで何秒かかるか、を調べる実験をしました。その結果、もっとも多いのは「0.5秒」だったということです。子供が転んで頭をぶつけて裂傷になる、口にくわえていた歯ブラシが喉に刺さる、そういったことはだいたい0.5秒ぐらいで起きることがわかりました。この「0.5秒」というのは、実は「見守って防ぐ」ことが難しい時間です。

たとえば、すべり台などの遊具で子供達が遊んでいる時に、保護者の方たちが子供の様子を見ながらすべり台のすぐそばでおしゃべりをしている。よくある状況ですが、子供が高さ3メートルのところから落ち出したとすると、約0.78秒で落ちてしまいますので、すぐ近くで「見守っていた」としても、実は救うことはできないのですね。

大人が大勢いて「目を離さない」ようにしていても、子供は「あっという間」に落ちたり転んだりしますので、やはり事前の予防が大切なのです。

重大な傷害を予防するため、ご実家の方に事前にお願いしておくこと(まとめ)

①お口に入れたら危ないものは、

・子供から見えないところ

・簡単には開けられない容器

・子供の手の届かないところに移しておいてもらう

②テーブルクロスやテーブルランナーは事前に外しておいてもらう

③ブラインドのコードは高い位置で留めておいてもらう

④ウォーターサーバーの熱湯が出る蛇口にはカバーをかけて子供が触れないようにしておいてもらう

⑤洗面所や浴室、トイレなど「水」関係の場所の入り口にはチャイルドロックを取り付けてもらう

⑥日常生活にはない環境、たとえば用水路、溝、ため池、柵のない線路、遮断機のない踏切、歩道のない道路などに近寄らないよう、玄関ドアや掃き出し窓に内側からチャイルドロックを取り付けてもらう

⑦窓の近くにベッドや机が置いてある場合は、その窓が開かないようチャイルドロックを取り付けてもらう

⑧自宅の駐車場で保護者や親族が運転する自動車にひかれることがあるので、子供はエンジンをかける前にチャイルドシートに座らせ、エンジンを切ってから降ろすことを、全員に確認してもらう

⑨チャイルドシートが付いていない自動車には乗せないことを伝えておく

⑩ペットにとって見知らぬ子供は攻撃対象になることがあるので、基本的には近づけないようお願いする

 

 

Safe Kids Japanとは

 私たちSafe Kids Japanは、事故による子どもの傷害を予防することを目的として活動しているNPO法人です。2018年6月からこのHugKumで、子どもの傷害予防に関する記事を配信しています。基本的に毎月1回、季節や年中行事などに関連した内容の記事をお送りしたいと考えています。

さて、「事故による傷害」、「傷害予防」という言葉、あまり聞き慣れないかもしれません。私たちがなぜ「事故」ではなく「傷害」という言葉にこだわっているのか、について、はじめに少し説明させてください。

 

事故?傷害?その違いは?

 「事故」という言葉を辞書で調べてみると、「思いがけなく起こった良くないできごと」とあります。英語で言うとaccidentですね。accidentは「意図しない不幸なできごと」という意味で、「避けることができない運命的なもの」という意味も含まれています。海外でもかつてはaccidentを使っていましたが、最近ではinjuryという言葉が使用されるようになりました。injuryは「ケガ」「負傷」という意味です。「事故」は科学的に分析し、きちんと対策すれば「予防することが可能」という考え方が一般的になり、「運命的な」という意味を含むaccidentではなく、injuryという言葉を使用することが勧められるようになったのです。今ではaccidentという言葉の使用を禁止している医学誌もあるくらいです。

 そのinjuryに対応する日本語として、Safe Kids Japanでは「傷害」という言葉を使っています。よく「事故予防」と言われますね。もちろん事故そのものが起きないことがいちばんなのですが、たとえ事故が起きたとしても、(重大な)ケガはしないように備えよう、そんな思いも込めて、「傷害予防」と言っています。

 

NPO法人Safe Kids Japan

 

 

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