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「赤ちゃんを知る授業」特別版出前授業! かえつ有明中学校で“赤ちゃん川柳”に挑戦
ピジョンが全国の中学生に届ける教育プログラム「赤ちゃんを知る授業」。その特別版出前授業が2025年10月、東京都江東区のかえつ有明中学校で実施されました。
今回の授業では、AI動画を活用したケーススタディを通して育児の現場を疑似体験し、赤ちゃんの目線で社会を見つめる「赤ちゃん川柳ワークショップ」にも挑戦。


生徒たちは五・七・五に想いを込めながら、命の重みや子育ての大変さを言葉で表現。そして11月11日、授業の締めくくりとして、かえつ有明中学校で「赤ちゃん川柳発表会」を開催しました。

発表会の幕開けには、ピジョン 経営戦略本部 ブランドデザイン部の半澤ふみ江さんが登場し、「赤ちゃんを知る授業」が生まれた背景や、そこに込めた想いを語りました。
てぃ先生も「すごい!」と絶賛! 中学生の詠む赤ちゃん川柳が深すぎる
いよいよ「赤ちゃん川柳」発表の時間。3年生・全6クラスの代表作が、オンラインで披露されます。インフルエンザによる休校の影響で、急きょ対面からオンラインでの開催に変更となりましたが、生徒たちは準備万端で、発表の瞬間を心待ちにしていました。
スペシャルゲストとして登場したのは、保育士歴17年目のてぃ先生。

保育の現場で赤ちゃんや保護者と向き合う日々の視点を活かしながら、ピジョンの半澤さんとともに、生徒たちが詠む川柳に心温まるコメントを添えました。
3年1組:『思いやり 小さき頃の 恩返し』
トップバッターを務めたのは、3年1組の代表生徒さん。オンライン越しの緊張の中でも、川柳に込めたまっすぐな想いをしっかりと言葉にしてくれました。

「多くの人は、小さい頃に誰かの思いやりに支えられた経験があるはずです。その頃の感謝の気持ちを忘れたくない、そして今度は自分たちが誰かの力になれたら。そんな想いで、この句をつくりました」
その言葉に、会場の空気がふっと温かくなるのを感じた瞬間。

てぃ先生は「本当に素晴らしい気づきです。大人になると、子どもだった頃に受けた思いやりを忘れてしまいがち。
こんな視点を中学3年生で持てるなんて、きっと素敵な大人になるだろうと、期待しかありません」とやさしいまなざしで語りかけました。
3年2組:『席どうぞ 声かけひとつで えがおの場』
この作品に込められたのは、電車やバスの中で生まれる、ささやかなやさしさの瞬間。

「赤ちゃん連れの方に『席どうぞ』と声をかけるだけで、自然と笑顔が広がる。そんな温かい空間を思い浮かべながら言葉にしました」と生徒さんは語ります。
この句に対して、ピジョンの半澤さんがコメントします。

「『席どうぞ』という言葉の選び方がとてもいいですね。席をゆずるのって、実は大人でも勇気がいること。声をかけるのは簡単そうでいて、なかなか難しい。でも、それを自分から率先してやろうとする気持ちがしっかり伝わってきます。
赤ちゃんとパパ・ママが笑顔になる場面まで想像していて、相手の気持ちを推し量っているところが本当に素晴らしい。多くの人に読んでもらいたい一句です」
3年3組の代表作『狭い道 大きい未来に 続く道』
赤ちゃんとの日常を見つめる授業の中で生まれたのは、ささやかな気づきと、未来へのまなざし。

「たとえスーパーのような、ベビーカーでは通りにくい狭い道であっても、その道が赤ちゃんの持つ大きな未来、明るい未来へとつながっていてほしい。そんな願いを込めました」と生徒さんは話してくれました。
この一句に、てぃ先生も思わず驚きの声をあげました。
「これ深すぎない? 本当に中学生が考えたの? (笑) スーパーから“未来”を想像できるなんて、発想力がすごい。心が豊かじゃないと、こういう視点は持てないと思います。
大人にとっては、“お菓子を欲しがるんじゃないかな”“商品をツンツンしちゃうかも”と心配の多いスーパーの通路が、中学生には“未来へ続く道”に見えている。その感性がとても素敵です」
3年4組:『泣いてても 笑って見守る それだけで』
赤ちゃんの泣き声に、つい焦ってしまうママやパパ。そんな戸惑いや不安にそっと寄り添い、見守るやさしさから生まれた一句です。

生徒さんはこう語ります。
「赤ちゃんが泣き出すと、お父さんやお母さんは周りの目が気になって焦ってしまいがちです。でも、そっと温かく見守るだけで、親も赤ちゃんもホッと安心できる。そんな場面を思い描きながら、願いを込めて表現しました」
ピジョンの半澤さんは「授業の中で、赤ちゃんが泣くのは、『お腹がすいた』『おむつを替えてほしい』など、ちゃんと理由があるんです」と伝えました。この一句には、そんな気づきや、やさしさが込められていることが、何よりうれしかったと語りました。
「『何かしなきゃ!』と焦るのではなく、笑顔で見守る。そんな“ドシッと構えたやさしさ”が4組のみんなの中にあるのが素晴らしい」と半澤さんは語ってくれました。
続けて、てぃ先生は
「微笑みながら『かわいいね』と声をかけるだけで、親御さんの気持ちがふっと軽くなって、場の空気もやわらかくなります。赤ちゃんも、周りの人も自然と笑顔になる。『かわいい』って魔法のことば、微笑みとあわせて、ぜひたくさん使ってほしいと思います」と語りました。
3年5組の代表作『ほほえみが 泣き顔に効く 秘密兵器』
電車の中や街角で泣いてる赤ちゃんを見かけたとき、声をかけるのは少し勇気がいるもの。でも、そっと微笑みかけることなら、誰でもできる。そんな小さなやさしさを詠んだ一句です。

「微笑みかけるって、誰でもすぐにできる行動だと思うんです。それだけで、親御さんの気持ちがふっと軽くなって、赤ちゃんも安心できる。だからこそ、みんながやさしく微笑みかけてほしいという想いを込めて、この一句をつくりました」その言葉には、周囲への思いやりがぎゅっと詰まっています。
てぃ先生も、深く心を動かされたそうです。
「中学生のみなさんが、親御さんの気持ちまで考えてくれていることに感動しました。泣いている赤ちゃんに、周りの大人がそっと微笑むだけで、安心につながり、笑顔が広がっていく。そんなやさしさの連鎖を生み出せるみなさんは、本当に素晴らしいです」
3年6組:『泣いてもね いないいないばぁ うれしいな』
大好きな“いないいないばぁ”をしてもらって、泣き止む赤ちゃんの気持ちを表現した一句です。

インフルエンザで参加できなかった生徒の想いを、吉井小鈴先生が代わって紹介しました。
「ほかのクラスと違っていたのは、赤ちゃんの言葉で表現していること。“いないいないばぁ”が大好きで、『うれしいな』と感じている赤ちゃん自身の気持ちを想像しながら、中学生がその心に寄り添って詠んだ一句です」
半澤さんは「“いないいないばぁ”は鉄板ですよね。公共の場で泣く赤ちゃんに、知らない人がしてくれると泣き止むこともあります。微笑むだけでも素晴らしいけれど、さらに一歩踏み込んだやさしさが表現されていて、いい句だと思いました」とコメントしました。
藤本美貴さんも共感の嵐! 3児の母に届いた、やさしさ全開の赤ちゃん川柳
続いて登場したのは、3児の母であり、ママタレントとしてテレビでも幅広く活躍する藤本美貴さん。

母としての視点で、中学生たちの詠んだ“赤ちゃん川柳”にじっくり耳を傾けます。
最初に紹介された『思いやり 小さき頃の 恩返し』には、「中学生がここまで深く考えられるなんて…!」と驚きの声。「授業での学びが、自分の幼い頃を振り返るきっかけになったんだなって。その気づきがちゃんと言葉になっていて、すごいなと思いました」と感心した様子でした。
続く『席どうぞ 声かけひとつで えがおの場』には、「本当に素敵な一句。読んでいて温かい気持ちになります」とやさしく語り、「子育て中って、特別なことをしてほしいわけじゃない。ベビーカーを運んでくれるだけでも、人の温かさを感じられるんです」と実感を込めて話します。
『泣いてても 笑って見守る それだけで』『ほほえみが 泣き顔に効く 秘密兵器』の2句には、「本当にその通り! ちょっとしたまなざしが、子育て中の親にはすごく響くんです」と、表情をやわらかくほころばせながら語ります。

そして、藤本さんが「はぁ…すごすぎて」と息をのんだのがこちらの一句。『狭い道 大きい未来に 続く道』です。
「え、もう一人育てましたよね? って思うくらいの貫禄(笑)。私たち親が考えたのならまだしも、中学生でこれを想像して書けるなんて…本当にすごい」と、驚きと感動を込めて語りました。
最後に紹介された『泣いてもね いないいないばぁ うれしいな』には、藤本さんがやさしい表情に。
「うちは下の子がもう5歳ですが、小さい頃によくやっていたなぁって思い出しました。“いないいないばぁ”をしないおうちはないと思うし、みんなに刺さる句だと思います。赤ちゃんの気持ちに寄り添っているのも素敵ですね」と語っていました。
中学生たちが紡いだ川柳の数々に、母としての実感とやさしさを重ねながら語る藤本さん。その言葉に包まれて、会場にはふんわりと温かな空気が流れていました。
なぜ今、育児の“早期教育”が必要なのか? クロストークセッションで迫る
藤本さんのお話のあとは、てぃ先生と半澤さんが再び登場。育児の“早期教育”について語り合う時間が始まりました。

司会 半澤さん、今育児において“早期教育”が必要とされるのはなぜでしょうか? その背景や理由を教えてください。
半澤さん 日本では少子化や核家族化が進み、赤ちゃんや子育て中の家族とふれあうことなく育つ子どもが増えています。

一人っ子は約2割に達し、多世帯での同居も減少。かつては兄弟や近所の子どもたちとの交流を通じて、自然と赤ちゃんにふれる機会がありましたが、今ではそうした日常が失われつつあります。
だからこそ、命の尊さや思いやりの心を育む授業が、今必要とされているのです。こうした学びがやさしさの土台となり、社会全体に広がっていく。それが、“赤ちゃんにやさしい社会”への第一歩だと、私たちピジョンは考えています。
藤本さん 私が子どもの頃には、こういう授業はなかったですね。はじめて妊娠したときに、父母教室で赤ちゃんの成長や出産のことを知ったんです。小学生のときに出産のビデオを少し見た記憶はあるけど、正直あまりピンとこなくて、「自分はポンと生まれてきた」くらいの感覚でした(笑)。

でも実際に出産してみて、親って本当に大変な思いをして私を育ててくれたんだなって、やっと実感できたんです。だからこそ、中学生のうちに少しでもその大変さや命の重みを知ることができたら、親への感謝も早く芽生えると思うし、将来子どもにやさしくできる大人になれると思います。
てぃ先生 ほんとにそう思います。知らないことって、そもそも学べないんですよね。育児って、まさにその最たるもの。子どもと関わることや親になることって、やってみないと分からないことばかりです。
中学生の頃から「子どもって、こういう感じなんだ」「育児ってこうかも」って想像するだけでも、知るきっかけになる。育児の早期教育って、本当に意義のある取り組みだと思います。

半澤さん 授業では育児の大変さだけでなく、命の尊さや育児の素晴らしさも伝えてきました。中学生には少し早いかもしれませんが、この時期に赤ちゃんや育児の大変さにふれることは、意義ある経験だと感じています。
この授業を通じて、社会全体で育児を支える未来を描けるよう、ピジョンとしても取り組んでいきたいと思います。
かえつ有明中学校の先生と生徒が、心に残る「特別版出前授業」を振り返って語る
最後に、かえつ有明中学校の吉井先生が特別版出前授業の振り返りを語りました。

吉井先生 10月の授業では、新生児サイズの赤ちゃん人形を抱っこする体験からスタート。実際に赤ちゃんを抱いたことのない生徒も多く「あ、重い」「首がすわっていないんだ」といった素直な声が印象的でした。

吉井先生 妊婦さんのジャケットを身につけると、「しゃがむだけでも大変」「腰が痛くなる…」と、身体への負担をリアルに体感。さらに、ベビーカーを押して改札幅を通るシミュレーションでは、日常の中に潜む“ちょっとした不便”にも気づくことができました。


吉井先生 ピジョンさんが紹介してくれた「赤ちゃんにやさしい社会」、そして、てぃ先生や藤本さんが語ってくれた「共感する力」の大切さ。生徒たちが今回の授業を通して心に刻んだ気づきが、やがて社会へとやさしさを還元していくきっかけになれば─そんな願いが、静かに、力強く込められた時間でした。
吉井先生のご挨拶に続いて、オンライン越しに生徒代表さんも感想を伝えてくれました。

生徒さん これまでの授業では、自分たちなりに赤ちゃんのことを考えてきたけれど、今日のお話で藤本さんたちが“親の目線”からたくさんのことを語ってくれて、あ、自分もお母さんにこんな気持ちで育ててもらっていたんだ…と、はじめて気づくことができました。
気づけたことで、自然と“ありがとう”の気持ちが大きくなっていって…。感謝を感じられる時間になったことが、本当に良かったなと思います。
小さな気づきが、やさしさとなってつながる社会へ
一人ひとりの気づきが、やさしさとなって広がっていく。そんな未来への小さな希望が、今日の時間にはそっと込められていました。
今回の学びが、生徒たちの心のどこかに残って、いつか誰かを思いやる力として育っていってくれたら…。そう思えるような、温かくて、余韻の残る時間でした。
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取材・文/あゆーや
