ゲップとは
ゲップは、胃や食道に溜まった空気が口の方へ逆流する現象です。一般的には、食事と一緒に飲み込んだ空気が溜まったときや、炭酸飲料を飲んだ後などに出やすくなります。
日本だけではなく世界の国々でも、食事中のゲップはマナーとして良くないという考えが浸透しています。
2016年に報告されたWebアンケートの調査では、働く男性(有効回答数207件、22歳~39歳)を対象に「女性がしたら、どちらの方がより下品だと感じますか?」という質問で、おならとゲップの印象を尋ねました。
その結果、おならの約34%に対し、ゲップが約66%となり、3人に2人がゲップの方が気になるという結果になりました。
一方、中国ではゲップは食事に満足したことの表れだとも言われ、必ずしも良くないものだとは考えられていないようです。ゲップとマナーの関係は、世界の国々の文化や価値観の違いによる影響を受けることが分かります。
ゲップは病気に関係する?

ゲップは誰にでも生じる生理的現象ですが、多く出る場合には病気の可能性も考えられます。代表的なものは、機能性ディスペプシアと逆流性食道炎です。
機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシアは、検査をしても炎症や潰瘍などの異常がないにも関わらず、胃の働きが低下することによって胃痛や胃もたれ、腹部膨満感などの症状を引き起こす病気です。
ゲップも症状の一つとしてよく見られ、ゲップが多い人ほど、この病気の頻度も高くなるという相関関係があることが明らかにされています。
逆流性食道炎
逆流性食道炎は文字通り、胃の内容物が逆流することで食道に炎症が起こる病気です。胃液も一緒に逆流するため、刺激性の強い胃酸によって食道の炎症が起きやすくなり、上腹部のムカムカ感や腹痛、胸焼けなどの症状が出ることがあります。
ゲップは生理現象のため、どのくらい出るようになったら医療機関を受診するべきかという判断は難しいです。
しかし、会話中にもゲップが出る、頻繁にゲップが出て食事に支障が出るなど、日常生活に影響があり、煩わしいと感じたら消化器内科などを受診しましょう。
機能性ディスペプシアと逆流性食道炎と診断された場合は、胃酸の分泌を抑える薬や胃の動きを促進する薬、漢方薬などの症状に合わせた薬物治療を行うのが一般的です。
ゲップの発生要因に関する研究報告
2024年に大阪公立大学のグループが報告した研究では、日本でのゲップ障害(週に3日以上の煩わしいゲップが3か月以上続く)の割合と疾患や生活習慣との関連などを検証するため、一般成人1万人を対象にWeb調査を実施しました。
その結果、151人(約1.5%)がゲップ障害であることが明らかになりました。国際的基準であるローマⅣ分類において、「ゲップ障害」は機能性消化管障害の一つの疾患として掲げられています。
また、ゲップ障害が消化器疾患などの有無(胃食道逆流症、機能性ディスペプシア、甲状腺疾患)と関係することが明らかになりました。(下の図1)

また、満腹まで食べる、咀嚼回数が極端に少ない、または多いといった食事の習慣がゲップ障害の発症に大きく関連することも判明しました(下の図2)。

ゲップと精神状態は関係する? 呑気症の可能性も

最近の疫学調査ではゲップの多い人は不安やうつ、睡眠障害の割合も多いことが明らかになっています。
通常、熟睡中はゲップは起こらないため、中途覚醒するような睡眠の浅い人がゲップをすることで眠れなくなってしまうという悪循環に陥っている可能性があります。
なお、無意識のうちに大量の空気を飲み込み、それがゲップや腹部膨満感などの不快感として表れる吞気症(どんきしょう)という病気もあります。胃や食道の病気ではなく、緊張や不安などの精神的ストレスが影響して空気を飲み込んでいる場合が多いようです。
また、この吞気症は噛みしめや食いしばりなど、歯や噛み合わせにも関わりが深いことが分かっているため、詳細を解説します。
呑気症になりやすい人とは?
呑気症は、空気を飲み込む癖によって胃腸に空気が多く溜まりやすくなり、ゲップやおならが増えてしまう症状のことで、空気嚥下症とも呼ばれています。飲食物をとるときは誰でも少しずつ空気を飲み込んでいますが、それ以外のときにも空気を飲み込むようになると胃腸に空気が溜まりやすくなります。ストレスや緊張が代表的な原因ですが、暴飲暴食、早食いなどが習慣化している人にも発症しやすいと言われています。
また、歯並びや噛み合わせなどの影響で口呼吸をしている人も発症しやすい傾向にあり、歯の噛みしめや食いしばりも関係すると言われています(噛みしめ呑気症候群)。
さらに、姿勢の影響も指摘されており、長時間のデスクワークや猫背などが原因になることがあります。
呑気症で頻繁にゲップしていると、逆流性食道炎を起こしやすくなる可能性も指摘されているので要注意です。
授乳後に必要な赤ちゃんのゲップ

これまでの内容からゲップは出さない方がいいイメージが湧くかもしれませんが、積極的に出した方がいいゲップがあるのをご存じでしょうか。
それが“赤ちゃんのゲップ”です。
生まれて間もない赤ちゃんは母乳やミルクを飲むときに空気も一緒に飲み込みやすいと言われており、その理由として吸う力の調節がうまくコントロールできないことや、唇の密着度が不安定なことなどが挙げられます。
赤ちゃんの胃は未成熟な構造をしているため、空気が溜まったままにしておくと、ちょっとした刺激や体勢の変化でも母乳やミルクを吐きやすくなります。
赤ちゃんのゲップは、この空気を体の外へ出す大切な働きがあり、吐き戻しやそれによる誤嚥(胃の内容物が気管の方へ入り込むケースなど)のリスクを減らすことができます。
ゲップを出すためには、赤ちゃんの背中をトントンと叩きますが、赤ちゃんが驚いたりしないように優しく一定のリズムで叩くようにしましょう。
また、背中をさすったり体勢を少し変えたりすると効率的にゲップが出ることがありますので、首が安定するように支えながら、色々な方法を試してみるのもいいですね。
日常生活で実践できるゲップ対策

ゲップは生理現象ですから過度に気にしたり我慢したりせず、状況に応じて「出せるときは出す」と考える方が精神的ストレスも少なく、体も楽に過ごせるでしょう。ゲップの対処法として、日常生活で実践できる内容をいくつか挙げてみます。
・よく噛んでゆっくり食べる。
・ストレスをためない。
・噛みしめる癖を意識的に治す、あるいは少し口を開けるように心掛ける。難しければ、歯科で作成するマウスピースを活用する。
・長時間のデスクワークを避け、気分転換も兼ねて定期的に席を離れて体を動かす。
・空気が溜まっているときに前屈みの姿勢で腹圧がかかると、空気が逆流しやすくなりやすいので、よい姿勢を保つことを意識する。
・腹式呼吸の訓練を行う。
以上より、食事マナーとしてのゲップは控えながら、日常生活では無理のない範囲でゲップ対策をしてくださいね。
【参考資料】
・マイナビウーマン:「ゲップ」と「おなら」下品なのはどっち?.Webアンケート,2016.
・Fujiwara Y et al: Prevalence of Belching Disorders and Their Characteristics in the General Alult Population. The AmericanJournal of Gastroenterology. (オンライン版,2024年7月16日掲載)
