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日本が抱える大きな課題「東京一極集中」
東京一極集中の是非は、日本が長年抱え続けている国家レベルの課題です。現在、日本の全人口の約3割が東京圏に集中し、経済・政治・文化のすべてが一つの都市に集約されています。
この現状は効率的である反面、巨大災害時のリスク分散や地方創生の観点から首都機能の分散を求める声が絶えません。実は世界に目を向けると、政治の中心である「首都」と、経済・文化の拠点である「最大都市」を明確に分けている国は決して珍しくありません。
行政都市と経済・商業都市を分けたブラジル
代表的な事例の一つがブラジルです。かつての首都は海岸沿いの大都市リオデジャネイロでしたが、1960年に内陸部の広大な未開発地へ「ブラジリア」を建設し、首都を移転しました。

これは沿岸部への人口集中を解消し、国土の均衡ある発展を目指した大規模なプロジェクトでした。現在、ブラジリアは行政都市として機能する一方、サンパウロが国内最大の経済・商業都市としての地位を保っており、政治と経済が物理的に切り離された形となっています。
2大都市の中間地点に政治都市をつくったオーストラリア
また、オーストラリアも興味深い歴史を持っています。2大都市であるシドニーとメルボルンのどちらを首都にするかという激しい論争の末、両都市の中間地点に計画都市「キャンベラ」が建設されました。キャンベラは国会議事堂や中央省庁が集まる純然たる政治都市であり、ビジネスやエンターテインメントの主役は今もシドニーやメルボルンが担っています。この「妥協の産物」とも言える都市計画が、結果として政治の沈着さと経済の活力を共存させる仕組みとして機能しています。
全国に機能を「多極分散」しているドイツ
さらに、欧州の先進国であるドイツも高度な分散型社会を実現しています。1990年の東西再統一により首都はボンからベルリンに戻りましたが、今でもいくつかの連邦官庁はボンに残されています。
それ以上に特徴的なのは、金融の拠点がフランクフルト、司法の最高機関がカールスルーエ、メディアや芸術の拠点がハンブルクやミュンヘンというように、機能が全国に「多極分散」している点です。一つの都市に権力が集中しないこの構造は、ナチス時代の反省に基づくものでありながら、現代では災害への強靱さや地方の自立を支える理想的なモデルの一つとされています。

今後は日本も多極分散の議論が必要に
日本においても、こうした諸外国の事例は大きなヒントになります。完全に首都を移転させるのは莫大なコストと時間を要しますが、国会や一部の省庁、あるいは企業のバックアップ機能を地方へ段階的に分散させることは、デジタル化が進んだ現代なら十分に現実的です。
一つのカゴにすべての卵を盛る「東京集中」から脱却し、各地域が独自の役割を分担する「多極分散型」の国土形成は、これからの日本の生存戦略として避けて通れない議論と言えるでしょう。
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記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバルサウスの研究に取り組む。大学で教壇に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。
